数学III / 微分法の計算
対称2階差分は f'' に収束するか
問題
関数 と実数 に対して
とおく。
(1) が で2回微分可能ならば であることを示せ。
(2) 逆は成り立たない。すなわち が存在しても が存在するとは限らない。 と の場合について、そのことを確かめよ。
ヒントを見る
(1) と を足すと、奇数次の項は消える。残る誤差の大きさをどう押さえるか。手持ちの道具は平均値の定理だけだ。
(2) は左右を同時に見ている。左右の食い違いが「打ち消し合う」形の関数を探せ。
解答・解説
方針
(1)は を「 誤差」と書き、誤差が より速く に行くことを平均値の定理で示す。足し合わせると1次の項が消える。(2)は で を直接計算し、 が原点で折れることを見る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 は「差の差」を で割ったものだ。1階の差の商が に近づくのだから、2階の差は に近づくはずだ、という直感がある。
これを厳密に言うには、 を「 誤差」と書き、誤差が より速く に行くことを示せばよい。使える道具は平均値の定理だけである。
(2)は逆向きだ。 は右と左を同時に見て、平均をとっている。もし左右の折れ方が対称に食い違えば、 の中で打ち消し合ってしまう。 の がまさにそれだ。関数自身はなめらかなのに、導関数が原点で折れている — その折れを は見逃す。
① 誤差を定義する。 は で2回微分可能とする。
とおくと であり、 で微分して
② 誤差は より速く消える。 平均値の定理を に使うと、 となる があって 。両辺を で割ると
ここで のとき
である。これは の定義そのものだ。 だから 。よって
を に置き換えた式も同様で、 である。
③ 足し合わせる。 定義から
辺々足して を引くと、1次の項 が消える。
で割れば
④ (2) 反例を調べる。 、 とする。、、 だから
ならつねに である。したがって で、極限は確かに存在する。
一方、導関数を調べる。 では で 、 では で 、 では 。まとめると
この は で微分できない。右から近づけると 、左から近づけると で食い違うからだ。よって は存在しない。
まとめ: 対称2階差分は の「近似」としては正しい。しかし「存在の証拠」にはならない。左右の食い違いを、平均をとる過程で打ち消してしまうからだ。
発展 — 一歩先へ。 数値計算では をそのまま使う(2階中心差分)。 が4回微分できる場合、誤差が に比例することまで示せて、片側の差分よりずっと精度が高い。実用上はきわめて有能な近似式である。それでも本問(2)が示すとおり、 が収束することから の存在は導けない。「近似式が使えること」と「極限が存在すること」は別問題なのだ。数値の世界と論理の世界の温度差を知る、よい教材である。
(1) 誤差 が を満たす(平均値の定理)ことから従う (2) は で極限 をもつが、 が で微分できず は存在しない
別解
を「2つの傾きの差」と読む(意味から見る)。 式を次のように分解する。
中カッコの中身は「右側の傾き」と「左側の傾き」だ。その差を、さらに で割っている。つまり は「傾きの傾き」を測っている。これが に近づく、というのが(1)の意味である。
この読み方は、(2)の反例の正体もあらわにする。、 で計算してみよう。
右側の傾きは 。左側の傾きは 。
両者は完全に一致する。だから差は 、 である。 は原点で と に折れているのに、 が見ているのは「右の傾きと左の傾きの差」であり、その2つが同じ値 で に近づくために、折れが完全に隠れてしまうのだ。
打ち消しの構造がはっきり見えれば、(2)のような反例は自分で作れるようになる。
ポイント
- 誤差 を定義し、平均値の定理で を出す。
- で1次の項が消え、 が残る。
- は 。 の折れを は見逃す。
よくある間違い
- (1)で を「テイラー展開」と称して の先まで書き、誤差の扱いをあいまいにする。必要なのは「誤差が より速く に行く」という一点で、それを平均値の定理で押さえるのが筋である。
- (2)で を「原点でなめらかでない関数」と早合点する。 自身は原点で微分可能()で、折れているのは導関数 のほうだ。どの段で壊れているかを取り違えない。
- の存在を「 の存在」と同一視する。この問題は、その2つが同値でないことを示すためにある。