数学III / 微分法の計算
f(x+y)=f(x)f(y) を満たす微分可能な関数
問題
実数全体で微分可能な関数 が、すべての実数 に対して
を満たし、さらに ( は定数)であるとする。以下、 は恒等的に ではないとする。
(1) であり、すべての で であることを示せ。
(2) すべての で が成り立つことを、微分の定義から示せ。
(3) を求めよ。
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の正体は分からない。それでも微分の定義には が現れる。関係式が使える場所はどこか。
が出たあと、答えを予想して代入するだけでは「ほかにない」と言えない。 を微分してみるとどうなるか。
解答・解説
方針
与えられているのは値の関係式だけで、 の正体は不明。だが微分の定義には が現れる。そこに関係式を差し込むと、 の部分がくくり出され、残りは になる。得られた から を決めるには、 を微分して定数だと示す。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 与えられているのは「値の関係式」だけだ。 が何者なのかは書かれていない。
それでも微分の定義 には が現れる。ここに関係式を差し込める、と気づけるかどうかがすべてである。
を使うと、差の商は と分離する。 の部分がくくり出され、 の部分は そのものになる。こうして という「自分自身に比例して増える」関係が出る。
最後の詰めが大事だ。 を思いついて代入し「確かに満たす」で終えてはいけない。それは十分性の確認にすぎない。ほかに解がないことを言うには、 を微分して定数だと示すのが筋である。
① (1) まず を入れる。 より または 。
もし なら、任意の について となり、 は恒等的に になってしまう。これは仮定に反する。よって 。
次に を入れると 。積が なのだから、 が になることはない。
② (2) 微分の定義に関係式を差し込む。 より
だから、右の分数は にほかならない。 とすればこれは に収束する。 は に無関係だから、そのまま外に出る。
③ (3) 比例関係から を決める。 とおく。積の微分より
②より中カッコは常に だからだ。導関数が恒等的に なので は定数である。 だから 、すなわち
逆にこれは と を満たす。よって求める関数は ただ1つである。
まとめ: 手順は2手だ。関係式を微分の定義に差し込んで を出す。そして を掛けて定数化し、ほかに解がないことまで言い切る。関数方程式の問題で「予想して代入」だけで終えるのは、答案として半分しか書いていない。
発展 — 一歩先へ。 実は「 を満たす連続関数」は、微分可能性を仮定しなくても 型に限ることが証明できる。ところが連続性まで外すと、グラフが平面じゅうに稠密に散らばるような、とんでもなく病的な解が存在してしまう(選択公理を使う構成)。「たった1つの等式 わずかな滑らかさ」が関数を完全に決める、というのがこの手の問題の醍醐味である。兄弟もいる。 なら 、()なら だ。掛け算と足し算をつなぐ関数が対数、というわけである。
(1) と、 から従う (2) 差の商が と分離する (3)
別解
対数をとって、掛け算を足し算に翻訳する(高い視点)。 関係式は「和を積に変える」形をしている。ならば対数をとれば、和が和のまま残るはずだ。
まず を確かめる。 であり、(1)より だから である。そこで とおける。 は微分可能で 、。
関係式は
に化ける。掛け算の世界が足し算の世界に移った。ここで微分の定義を書くと、 だから
驚くべきことに、 は に依存しない定数である。傾きが一定なら直線だ。、 より 。したがって
本解が「比例関係 を解く」道なら、こちらは「舞台を移して一次関数に落とす」道である。 が掛け算を足し算に変える装置だ、という一点で全体が動いている。
ポイント
- から ( は恒等的に の場合)。
- 差の商は に分離する。
- を微分して定数化 — これで一意性まで言える。
よくある間違い
- と予想して代入し、「確かに満たす」で終える。それは十分性の確認にすぎない。ほかに解がないこと(必要性)を示さなければ解答にならない。
- (1)で の場合を切り捨てずに進む。この場合 は恒等的に になり、問題の除外条件に当たる。場合分けを明示してから捨てる。
- (2)で を「 の の極限」と混同する。これは における微分係数 そのものである( を使って差の商の形にする)。