数学III / 微分法の計算

合成関数の微分(3乗)

★ 基礎合成関数の微分三角関数の微分

問題

関数 を微分せよ。

ヒントを見る

は『 乗』— 外側が 乗、内側が の合成。外→内の順に微分して掛ける。

解答・解説

方針

とみる。外側 の微分 、内側 の微分 。かけ合わせる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 という書き方に、まず慣れよう。

乗したもの、という意味だ。 ではない。

この読み替えが、すべてを決める。

と書けば、構造が見える。

  • 外側: — かたまりを
  • 内側: — かたまりの中身

合成関数だ。連鎖律を当てはめる。

外側の微分: を微分して 、つまり

内側の微分:

掛ける。

「かたまりを見抜けば、あとはいつもの連鎖律」 でも でも、まったく同じ手順で微分できる。

公式合成関数 ()

とみる。

① 外側を微分する。

② 内側の微分をかける。

まとめ: は「 乗」= 合成関数。外側( 乗)を微分し、内側()の微分 をかける。 の微分では が必ず出てくる。

発展 — 一歩先へ。 ここまでで、数学IIIの微分の道具が出そろった。全体を、 枚の地図にまとめておこう。

覚えるべき基本の導関数。

つだけ。

組み立ての規則(これも つだけ)。

基本 つ、規則 つ。合わせて 個。

これだけで、高校で出会うどんな関数も微分できる。

商の微分は? 合成から出る。 の微分は? 商から出る。 逆関数の微分は? 合成から出る。 対数微分法は? 合成 対数の性質。

個の道具で、無限の関数を微分する」

この経済性が、微分の美しさだ。

そして、微分は必ず終わる。

どんなに複雑な式でも、分解していけば、必ず基本の つに行き着く。 迷子になることはない。

手順は、いつも同じ。

① 式の"いちばん外側"の構造を見る(和? 積? 商? 合成?)

② 対応する規則を当てはめる

③ 出てきた部品を、また ① から

この再帰的な手続きが、必ず有限回で終わる。

だから、微分はコンピュータにもできる。 数式処理システム(Mathematica、SymPy)は、まさにこの手順を実装している。

一方、積分にはこんな保証がない。

— どれも微分は一瞬だが、積分は初等関数で書けない。

微分は「分解」、積分は「発見」。

次の単元(積分法の計算)では、この非対称性と向き合うことになる。

そこで武器になるのは — 皮肉なことに — 微分の公式である。

「積分とは、微分の逆をたどること」 だからだ。

個の道具を、しっかり手に馴染ませておこう。 次の戦いでも、同じ道具を使う。

別解

倍角の公式で"波の重ね合わせ"に分解してから微分する。

まったく違う道を通って、同じ答えに着くことを確かめよう。

倍角の公式を思い出す。

これを について解く。

確かめよう。 なら、左辺

右辺

この形なら、合成関数の 乗はどこにもない。 ただの の足し算だ。

微分する。

( の微分は 。内側の微分 を忘れずに。)

さて、これが本解の と一致するだろうか。

倍角( 版)を使う。

で割ると

本解と一致した ✓

遠回りだったが、収穫がある。

が、 つの単純な波の重ね合わせだと分かった。

乗する」という非線形な操作の正体は、「基本の波()と、 倍の速さの波()の混合」だったのだ。

この分解は、音の世界そのものである。

ギターの弦を弾くと、基本の振動()だけでなく、 倍・ 倍の速さの振動(倍音)も同時に鳴る。

その混ざり具合が、音色を決める。 同じ「ド」でも、ピアノとバイオリンで音色が違うのは、倍音の配合が違うからだ。

「どんな波も、単純な 波の重ね合わせで書ける」

これをフーリエ級数という。 音声・画像の圧縮(MP3・JPEG)は、この原理で動いている。

の微分という素朴な計算の中に、音楽と信号処理の入り口が隠れていた。

そして、この分解形は積分でも役に立つ。

をそのまま積分するより、はるかに楽だ。

「難しい形を、単純な形の和に分解する」 — 微分でも積分でも、この発想が効く。

ポイント

  • は合成関数。
  • 外側 × 内側

よくある間違い

  • と読み違える。 で、 乗されるのは 全体
  • 内側の微分()を掛け忘れて で終える。合成関数は必ず中身の微分を掛ける
  • 外側を微分したあと、 をさらに に減らそうとする。 には をそのまま戻す