数学III / 微分法の計算
三角関数の微分(sin)
問題
関数 を微分せよ。
ヒントを見る
の微分に、中身()の微分を掛ける — 合成関数の規則そのまま。中身の微分の掛け忘れが定番ミス。
解答・解説
方針
が基本。 は合成関数なので、 に内側 の微分 をかける。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 は、 の中に が入った合成関数だ。
- 外側:
- 内側:
手順は、いつもの連鎖律である。
外側の微分: だから 。
内側の微分: 。
掛ける。
ここでも、 を忘れないことが命だ。
間違いに気づく方法がある。
は、 より 倍の速さで振動している。 波が急なぶん、傾きも大きくなるはずだ。
だから、微分して振幅が 倍()になるのは、むしろ自然なのである。
「速く振動する波は、傾きも大きい」 — この感覚をもっておくと、 を落としたときに違和感が働く。
とみる。、内側 。
まとめ: の微分は 。中身が のように 以外なら合成関数で、内側の微分 を忘れずにかける。 の中身が複雑なほど連鎖律が効く。
発展 — 一歩先へ。 の微分に現れる係数 は、物理では角速度と呼ばれる。
波の式を見てみよう。
- : 振幅(波の高さ)
- : 角速度(振動の速さ)
- : 時間
この波の"速度"は、時間で微分して
速度の振幅は — 角速度 が掛かる。
もう 回微分すると、加速度が出る。
驚くべき関係が現れた。
「加速度は、位置に比例し、向きは逆」
これは単振動の運動方程式そのものだ。
バネにつないだおもりを思い浮かべよう。
フックの法則: バネの力は伸びに比例し、向きは逆()。
ニュートンの運動方程式: 。
合わせると
これは、上で微分から出てきた と同じ形だ!
振動の速さ(角速度)が、バネの硬さと重さから決まる。
周期は
「重いおもりはゆっくり、硬いバネは速く振動する」 — 直感と合う。
なぜ なのか。
という方程式(「 回微分すると、自分自身の 倍」)を満たす関数は、 と しかない。
振動する現象が、必ず 波になる理由が、ここにある。
- 音波・光波・電波
- 交流電流
- 振り子・バネ・原子の熱振動
すべて に従い、すべて で書ける。
という計算の中の は、世界が振動する速さそのものなのだ。
別解
倍角の公式で書き直し、積の微分で解く。
まったく違う道から、同じ答えにたどり着けるかを確かめる別解である。
倍角の公式を思い出す。
この形なら、合成関数ではなく積の形だ。
積の微分公式を使う。 、 とする。
ここで、また 倍角の公式が使える。
本解と、完全に一致した ✓
この一致は、偶然ではない。
同じ関数を微分しているのだから、どんな道を通っても答えは同じになる。 数学の整合性そのものだ。
そして、この計算には副産物がある。
途中で出てきた式
と、公式から得た
を比べると
倍角の公式が、微分から"再発見"できた。
微分は、恒等式を検証する道具にもなる。
「 つの関数が等しいなら、その導関数も等しい」 — この当たり前の事実を使うと、公式の検算ができる。
逆に言えば、導関数が違えば、もとの関数は違う。
たとえば「」という間違った式を疑うには、微分してみればいい。
で、左辺は 、右辺は — 一致しない。
微分が違うのだから、もとの式も間違い。
公式に自信がないときは、微分してみる。 意外に強力な検算法である。
ポイント
- 。
- 中身が なら (連鎖律)。
よくある間違い
- 内側の微分()を忘れて とする。合成関数では必ず中身の微分を掛ける
- の を、 の中に入れて としてしまう。 は係数として前に出す
- を と書き換えてしまう。 は 次関数ではないので、係数は外に出せない