数学III / 微分法の計算
合成関数の微分
問題
関数 を微分せよ。
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乗の外側と、 の内側 — 段構えの合成関数。外側を微分したあと、内側の微分を掛け忘れないこと。
解答・解説
方針
合成関数の微分(連鎖律)。「外側の微分 × 内側の微分」。外側は を微分して 、内側 の微分は 。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 は、入れ子構造をしている。
外側と内側に分けて見る。
- 外側: — かたまりを 乗する操作
- 内側: — かたまりの中身
この 段構えの関数を、合成関数という。
微分の仕方は、こうだ。
外側: を で微分して 。 を戻して 。
内側: を で微分して 。
掛ける。
忘れがちなのが、この最後の「」だ。 内側の微分を掛け忘れると、答えが 分の になってしまう。
「外を微分して、中を微分して、掛ける。」 この連鎖律が、数学IIIの微分の中核である。
外側は 、内側は 。
① 外側を微分する。 を微分して 。中身はそのまま。
② 内側の微分をかける。 。
まとめ:合成関数は「外側を微分(中身そのまま)× 内側を微分」。かっこの中身を つのかたまりとみて外を微分し、最後に中身の微分をかける。連鎖律は数III微分の最重要ツールだ。
発展 — 一歩先へ。 連鎖律は、単なる計算規則ではない。「変化が伝わる」ことの数学的な表現だ。
具体例で考えよう。
風船を膨らませている。 半径 が、 秒に cm ずつ増えているとする。
体積 は、 秒に何 cm³ 増えるか。
体積の式は 。
知りたいのは (時間あたりの体積の変化)だ。
連鎖律を使う。
半径が cm のとき
面白いことに気づく。
「体積の、半径についての変化率」は、「表面積」に等しい。
当たり前だ。 半径を少し増やすと、球の表面に薄い皮が 枚追加される。 その体積は「表面積 厚み」だからだ。
同じことが、円でも起こる。
面積を微分すると、円周になる。
「 を増やすと、外周に沿って細い輪が つ追加される」 — その面積が「円周 幅」だからだ。
連鎖律の応用例は、理科の全域に広がっている。
- 物理: 位置 → 速度 → 加速度(時間で 回微分)
- 化学: 反応速度が濃度の関数、濃度が時間の関数
- 経済: 利益が価格の関数、価格が需要の関数
- 機械学習: 誤差が重みの関数 — 誤差逆伝播法は、連鎖律を何万層も繰り返す計算だ
AI が学習できるのは、連鎖律のおかげである。
深層学習の「バックプロパゲーション」は、 を、何千万回も適用しているにすぎない。
「変化は、鎖のように伝わる」 — この 行の原理が、現代のAIを動かしている。
別解
展開してから微分し、公式の正しさを自分の目で確かめる。
「内側の微分を掛ける」が本当に必要か、検算しよう。
まず展開する。
項ずつ微分する。
これが、公式の答えと一致するか。
公式の答えは 。展開してみる。
ぴったり一致 ✓
もし「」を忘れて としていたら?
正しい答えのちょうど半分。 展開ルートと合わない。
「内側の微分」が本当に必要だったことが、これで確かめられた。
なぜ「掛ける」のか。連鎖律の意味を考えよう。
歯車を思い浮かべてほしい。
が 回転すると、 は 回転する(内側の変化率 )。
が 回転すると、 は 回転する(外側の変化率)。
では、 が 回転したら、 は何回転するか。
段の歯車をつなぐと、変化率は掛け算になる。
ライプニッツの記法で書くと、驚くほど明快だ。
が約分されて消える — 分数のように見える。
これは偶然ではない。 ライプニッツは、微分をこう書けば連鎖律が「約分」に見えることを、意図して設計した。
記号のうまさが、理解を助ける。 「」という書き方は、 年経っても生き残っている名作なのだ。
ちなみに、この問題では展開できたが、 ならどうか。
展開は不可能。 だが連鎖律なら 行だ。
公式の真価は、展開できない場面で発揮される。
ポイント
- 連鎖律:外側の微分 × 内側の微分。
- 外側を微分するとき中身はそのまま。
よくある間違い
- 内側の微分()を掛け忘れて とする。合成関数は必ず「外の微分 中の微分」
- の を に置き換えて としてしまう。外側を微分したあとも、中身はそのまま残る
- 展開ルートで検算するとき、 の展開の係数()を間違える。 のように、 ごと 乗する