物理 / 円運動と万有引力
引力による最接近距離(衝突径数)
問題
質量 の恒星の近くを、小天体(質量 、 で恒星は動かないとする)が通り過ぎる。小天体は無限遠では速さ を持ち、もし恒星の引力がなければ、恒星の中心から距離 (衝突径数)だけ離れた直線上を等速で通り過ぎるはずであった。引力を受けた実際の軌道での、恒星への最接近距離 を求めたい。万有引力による位置エネルギーは無限遠を基準に とする。
(1) 無限遠での角運動量を を使って、最接近点での角運動量を を使って表し、両者が等しいことから最接近点の速さ を表せ。
(2) エネルギー保存と (1) を連立して、 を求めよ。
(3) とくに のとき、 を で表せ。
ヒントを見る
最接近点では、速度が動径に垂直になる(これ以上近づけない=動径方向の速度が0の瞬間)。だから角運動量が「速さ×距離」の形に書ける。無限遠(速さ v∞、垂線距離 b)と最接近点(速さ v_min、距離 r_min)で角運動量とエネルギーを保存させ、v_min を消せば r_min の2次方程式になる。
解答・解説
方針
最接近点では速度が動径に垂直になる。無限遠と最接近点で角運動量保存とエネルギー保存を立て、v_min を消去して r_min の2次方程式にする。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 引力で曲げられた軌道の「一番近づく点」を求める問題。無限遠と最接近点という 2つの特別な瞬間 を、2つの保存則で結ぶ。
最接近点では、これ以上近づけない=動径方向の速度が 0 の瞬間なので、速度は動径に 垂直。すると角運動量が「速さ×距離」と簡単に書ける。無限遠でも、垂線の足までの距離が だから同じく「」。
角運動量保存で を で表し、エネルギー保存に代入して の2次方程式にすればよい。
① 角運動量保存。 無限遠での角運動量は、速度に下ろした垂線の足までの距離(=衝突径数) を使って 。最接近点では速度が動径に垂直なので 。等しいから
② エネルギー保存。 無限遠では なので
を代入し、両辺を で割って を掛ける。
について整理すると2次方程式
正の解をとって
③ 特別な場合。 を代入する。 なので、根号の中は
したがって
引力のおかげで、直進なら しか近づけないところを、 まで引き寄せられる。
まとめ 「最接近点で速度は動径に垂直」を見抜けば、角運動量保存とエネルギー保存の2式で が出る。衝突径数 は無限遠での角運動量を長さで表したもの——ラザフォードの散乱や探査機の軌道設計と同じ骨格の問題である。
、、特別な場合
別解
実効ポテンシャルで見るルート(高い視点)。 動径方向の運動だけを取り出すと、角運動量 が一定なので、遠心力の効果が位置エネルギーに加わった「実効ポテンシャル」
の中を、全エネルギー で動く1次元運動とみなせる。最接近点は動径速度が 0、すなわち の点。この式を整理すると本解と同じ2次方程式に帰着する。散乱を「1次元のポテンシャル問題」に落とす見方で、大学の力学へまっすぐつながる。
ポイント
- 最接近点では速度が動径に垂直→角運動量=v_min・r_min
- 無限遠の角運動量は v∞・b(b=衝突径数)
- 角運動量とエネルギーの連立→r_min の2次方程式
よくある間違い
- 無限遠の角運動量に r を使う(正しくは垂線距離=衝突径数 b)
- 最接近点で速度が動径に垂直であることを見落とし、角運動量を書けない
- 2次方程式の負の解を採用してしまう(距離なので正の解)