物理 / 電磁誘導と交流
コイルの電流を切ると高電圧が出る
問題
自己インダクタンス のコイルに の電流を流しておき、スイッチを開いて電流を切る。
(1) 電流が かけて になったとすると、コイルに生じる起電力はいくらか。 で切れた場合はどうか。
(2) コイルに蓄えられていた磁気エネルギーを求めよ。
(3) スイッチと並列に容量 のコンデンサーをつなぐと、電流はこのコンデンサーに流れこみ、電圧は無限には上がらない。コンデンサーの電圧の最大値を求めよ。
(4) (3) の答えを で表し、 を大きくすると電圧がどうなるか述べよ。
ヒントを見る
起電力は何に比例するか。コンデンサーがあるとき、コイルのエネルギーはどこへ行くか。
解答・解説
方針
自己誘導の起電力は電流の変化率に比例するので、切る時間が短いほど大きくなる。コンデンサーがあると、コイルの磁気エネルギーがそのままコンデンサーの電気エネルギーに移る。エネルギーの等式から電圧が決まる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 コイルは電流を保とうとする。無理に切ろうとすると、電流を流し続けようとして大きな起電力を出す。
その大きさは だから、切る時間が短いほど大きい。理屈のうえでは、瞬間的に切れば無限大になる。
しかし現実には無限大にはならない。どこかに逃げ道(火花、あるいはコンデンサー)があって、そこで電圧が決まる。「何が電圧を決めているのか」を追うのがこの問題である。
① 起電力。
の場合。
の場合。
万ボルトである。実際にはこれほど高くなる前に、スイッチの接点のあいだで放電(火花)が起き、そこを通って電流が流れる。
② 磁気エネルギー。
このエネルギーが行き場を失うことが、高電圧の原因である。
③ コンデンサーがあるとき。 コイルの電流は急には止まれないので、コンデンサーへ流れこむ。コイルの磁気エネルギーがすべてコンデンサーの電気エネルギーに変わったとき、電流が になり電圧が最大になる。
である。① の 万ボルトより 桁小さく抑えられている。
④ 一般式と の効き方。
だから、 を大きくすると電圧は下がる。 を 倍にすれば電圧は 倍、つまり約 倍になる。
なら である。
大きなコンデンサーは「電荷を受け止める器が大きい」ので、同じ電荷が入っても電圧が上がりにくい、と考えると納得しやすい。
まとめ コイルの電流を切ると高電圧が生じるのは、行き場を失った磁気エネルギーのせいである。コンデンサーを付けると、その受け皿の大きさが電圧を決める。
発展 — 一歩先へ。 ガソリンエンジンの点火装置は、この現象をそのまま利用している。コイルに電流を流しておき、それを切ることで数万ボルトを発生させ、点火プラグで火花を飛ばす。
その回路には必ずコンデンサーが入っている(古い機構ではコンデンサーとよばれた)。これは電圧を下げるためではなく、接点で火花が飛んで接点が傷むのを防ぐためである。エネルギーをいったんコンデンサーに預け、接点が十分に離れてから放電させる。
同じ理由で、リレーやモーターのコイルには保護用のダイオード(還流ダイオード)が付けられる。切ったときの電流をダイオードに逃がし、高電圧が半導体を壊すのを防ぐ。
なお は抵抗と同じ単位をもち、特性インピーダンスとよばれる。同軸ケーブルの「」「」という表示は、まさにこの量である。
と 、、、 で を大きくすると電圧は下がる( に比例)
別解
電気振動として見るルート。 ③ は「 回路の振動の振幅」として求めることもできる。
スイッチを開いたあとの回路は、コイルとコンデンサーだけの 回路である。ここでは電流と電圧が正弦的に振動する。
電流の振幅は、切った瞬間の値 である(コイルの電流は連続だから)。
コンデンサーの電荷の振幅は、電流の振幅を で割ったものになる(単振動で だったのと同じ関係)。
③ と一致する。
このルートの利点は、いつ最大になるかまで分かることである。電流が最大の状態から始まるので、電圧が最大になるのは 周期後である。
単振動との対応(電流 ↔ 速度、電荷 ↔ 位置)を覚えていれば、エネルギー保存を書かずに答えが出せる。
ポイント
- 起電力は LΔI/Δt。切る時間が短いほど大きい
- 原因は行き場を失った磁気エネルギー ½LI²
- コンデンサーがあると ½LI²=½CV² で電圧が決まる
- V=I√(L/C)。C を大きくすると電圧は下がる
よくある間違い
- コイルの電流が瞬間的に 0 になれると考える
- エネルギーではなく電圧の式だけで考えて C の効き方を誤る
- √(L/C) の L と C を逆にする