数学C / 平面上の曲線
楕円の焦点
問題
楕円 の焦点と、長軸・短軸の長さを求めよ。
ヒントを見る
分母の と がそれぞれ何の 乗かを、まず書き出そう。長軸・短軸はそこからすぐ分かる。焦点は、 つの分母を結びつける関係を思い出せれば出せる。
解答・解説
方針
()は横長の楕円。長軸 、短軸 、焦点 で 。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 楕円の標準形。
与式と見比べる。
なので、 方向に長い(横長)。
長軸は 方向で、長さ 。 短軸は 方向で、長さ 。
焦点は、長軸の上にある。 位置は
— 引き算だ。
(双曲線では足し算になる。混同しないこと。)
–– の直角三角形が、ここにも現れている。
① を読む。 、 より 、。
② 長軸・短軸。 長軸 、短軸 。
③ 焦点。 。焦点 。
まとめ:楕円は「 焦点からの距離の和が一定()」の曲線。( 側が大)なら横長で焦点は 軸上。( から を引く)がポイント。
発展 — 一歩先へ。 楕円の面積は、いくらだろうか。
円()の面積は 。
楕円は、円を「横に 倍、縦に 倍」引き伸ばしたものだ。
単位円 を、 方向に 倍、 方向に 倍する。
すると
楕円の方程式になった。
面積は、どうなるか。
横に 倍すれば、面積は 倍。縦に 倍すれば、さらに 倍。
この問題の楕円なら
円の面積()で、 とすれば — つじつまが合う ✓
では、楕円の周の長さは?
円周は 。楕円の周は、 とか、 になりそうな気がする。
ならない。
楕円の周の長さは、初等関数では書けない。
この積分は、楕円積分と呼ばれ、初等関数では計算できないことが証明されている。
面積は という美しい式なのに、周の長さは書けない。
この非対称性は、驚くべきことだ。
そして、この「計算できない積分」が、 世紀の数学を大きく前進させた。
楕円積分の研究から、楕円関数という新しい関数が生まれた。
その理論は、やがて「楕円曲線」という代数幾何の対象へと発展する。
そして、 年 — ワイルズが、フェルマーの最終定理を証明した。
その証明の中心にあったのが、楕円曲線の理論だった。
( 世紀半、誰も解けなかった問題が、楕円曲線とモジュラー形式の対応を使って解かれた。)
さらに、楕円曲線は現代の暗号技術にも使われている。
楕円曲線暗号(ECC)。
ビットコインの署名も、スマホの通信の暗号化も、この技術で守られている。
「楕円の周の長さが計算できない」という、 つの不都合。
そこから、新しい関数が生まれ、新しい幾何が生まれ、 年の難問が解かれ、いまあなたの通信を守っている。
数学は、行き詰まりから新しい世界を作る。
という、ただの楕円。
その周の長さを求めようとした人類が、思いがけない場所にたどり着いた。
焦点 、長軸 、短軸
別解
楕円の定義 — 「糸と 本の画鋲」で確かめる。
楕円は、こうやって描ける。
紙に画鋲を 本刺す。 その 点に、糸の両端を結ぶ( 点間の距離より長い糸)。
鉛筆で糸をぴんと張りながら、 周させる。
描かれる曲線が、楕円だ。
このとき、鉛筆から 本の画鋲までの距離の和は、常に糸の長さ(一定)である。
その「一定の和」が、長軸の長さ になる。
確かめよう。
焦点は 、。
楕円上の点で、実際に距離の和を計算する。
点 (右端の頂点)。
点 (上端の頂点)。
別の点でも試そう。点 。
距離の和を計算すると、やはり になる。
すべての点で、和は で一定 ✓
「距離の和 ( 長軸の長さ)」という定義が、確認できた。
ここで、点 での計算に注目してほしい。
、、 の直角三角形だ!
焦点の公式 が、この三角形から出てくる。
丸暗記していた公式が、幾何的な意味をもった。
短軸の端点()から つの焦点までの距離は、どちらも 。
「、、 が直角三角形をなす」
この図を頭に描いておけば、焦点の公式で迷うことはない。
そして、この定義から、楕円の応用も見えてくる。
惑星の軌道は楕円で、太陽は つの焦点にある(ケプラーの第 法則)。
地球から太陽までの距離は、一定ではない。 近日点と遠日点がある。
だが、「 つの焦点までの距離の和」は、常に一定なのだ。
ポイント
- 楕円 焦点 、。
- 長軸 、短軸 ()。
よくある間違い
- (足し算)としてしまう。楕円は引き算()、双曲線が足し算
- 長軸の長さを としてしまう。長軸は (端から端まで)
- から としてしまう。