数学C / 空間ベクトル

空間ベクトルの大きさ(負の成分)

★ 基礎ベクトルの大きさ

問題

の大きさ を求めよ。

ヒントを見る

負の成分も 乗すれば正 — 手順は同じ。

解答・解説

方針

成分の 乗の和の平方根。 乗すると負の符号は消える。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 負の成分が つある。それでも、何も変わらない。

乗すれば、符号は消える。

答えは

のときと、同じ大きさだ。

当然である。大きさとは、矢印の長さだから。

向きがどちらを向いていようと、長さは変わらない。

大きさは、絶対に負にならない。

計算する前から、答えが正であることは決まっている。

乗が、すべての符号を洗い流す」 — これが、大きさの公式の性質だ。

公式( 乗で符号は消える)

a(−1,2,−2)O
|a|=√((−1)²+2²+(−2)²)=3。1×2×2 の直方体の対角線(向きが違うだけ)

まとめ:大きさは成分を 乗して足すので、負の符号は消える。 も大きさは同じ (向きが違うだけ)。 に注意。

発展 — 一歩先へ。 空間ベクトルの基本が、これで出そろった。平面との違いを、整理しておこう。

変わらないもの(平面と同じ)。

「平面でできたことは、すべて空間でもできる。」

新しく現れたもの(空間だけ)。

① 外積 ベクトルに垂直なベクトル。 次元にしか存在しない。

② 平面という図形 — 空間には、直線だけでなく「平面」がある。法線ベクトルで記述する。

③ 体積 — スカラー三重積で計算できる。

④ ねじれの位置 — 平面では、 直線は「交わる」か「平行」の 択だった。空間では、交わらないが平行でもないという第 の関係がある。

この ④ が、空間の豊かさを象徴している。

平面に閉じ込められていたときには、想像もできなかった関係だ。

そして、次元を上げると、こういう"新しい現象"が必ず現れる。

次元では?

枚の平面が、 点だけで交わることがある。

(我々の 次元では、 平面は必ず直線で交わるか、平行になる。)

想像もできない。だが、計算はできる。

そこに、数学の力がある。

「見えなくても、計算できる」

空間ベクトルを学ぶ本当の意味は、 次元を扱えるようになることではない。

「図に描けない世界を、計算で扱う」という方法論を、身につけることだ。

そして、その方法論は、 次元でも、 次元でも、無限次元でも通用する。

現代の科学は、そういう空間の中で行われている。

  • 統計学: データの次元 変数の数(数百、数千)
  • 機械学習: パラメータ空間の次元 数十億
  • 物理学: 状態空間、位相空間、ヒルベルト空間
  • 経済学: 商品の種類だけの次元をもつ空間

誰も図に描けない。だが、内積は計算できる。距離は測れる。角度も定義できる。

この計算を、 個の成分でやれば、それが現代のデータ解析なのだ。

次は複素数平面へ進む。 そこでは、 次元の平面が、まったく新しい顔を見せる — 数として、掛け算ができる平面である。

別解

符号の 通りを、すべて確かめる。

成分 の符号を、自由に変えてみよう。

成分それぞれに があるので、 通りある。

すべての大きさを計算する。

どれも、 乗すると になる。

通り、すべて大きさ !

この問題の も、その つにすぎない。

つのベクトルの終点は、空間のどこにあるか。

すべて、原点を中心とする半径 の球面の上だ。

つの象限(空間は つの領域に分かれる)に、 つずつ、対称に散らばっている。

「符号を変えても、長さは変わらない」

これは、鏡映対称性という。

座標の符号を変えるのは、 平面で鏡に映すこと。

鏡に映しても、長さは変わらない。 当たり前だ。

そして、この性質から、 つの重要な公式が出る。

公式 :

すべての成分の符号を変えても、大きさは同じ。

(向きは正反対になるが、長さは変わらない。)

公式 :

倍すると、長さは ( の絶対値!)。

確かめよう。

倍になっている。 ( ではなく、 倍。)

長さは負にならないから、絶対値がつく。

さて、この「向きによらない」という性質を、もう一段深く考えよう。

大きさは、座標軸の取り方にもよらない。

座標軸を、原点のまわりにぐるぐる回転させても、ベクトルの成分は変わるが、大きさは変わらない。

これを回転不変性という。

なぜ、これが重要か。

物理法則は、座標軸の取り方によらないはずだ。

「東を 軸にするか、北を 軸にするか」で、物理法則が変わってしまったら、おかしい。

だから、物理量は「回転で不変な量」で書かれなければならない。

  • 大きさ — 不変 ✓
  • 内積 — 不変 ✓
  • 成分 不変ではない(座標軸を変えると変わる)

エネルギーや仕事が、内積で定義されているのは、この不変性のためだ。

「座標軸をどう取っても、仕事の値は同じ」

この当たり前の要請が、内積という演算を必然にしている。

という、負の符号だらけの計算。

その答えが、座標系によらない絶対的な量であるという事実に、物理学の根幹がある。

ポイント

  • 乗で符号が消える。
  • 向きが違っても大きさは同じ。

よくある間違い

  • を、負のまま()にしてしまう。負の数の 乗は正
  • 大きさが負になると考えて と答える。大きさ( 長さ)は必ず 以上
  • の中身を などと、符号を残したまま足してしまう