数学C / 空間ベクトル
空間ベクトルの大きさ(負の成分)
問題
の大きさ を求めよ。
ヒントを見る
負の成分も 乗すれば正 — 手順は同じ。
解答・解説
方針
成分の 乗の和の平方根。 乗すると負の符号は消える。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 負の成分が つある。それでも、何も変わらない。
乗すれば、符号は消える。
答えは 。
のときと、同じ大きさだ。
当然である。大きさとは、矢印の長さだから。
向きがどちらを向いていようと、長さは変わらない。
大きさは、絶対に負にならない。
計算する前から、答えが正であることは決まっている。
「 乗が、すべての符号を洗い流す」 — これが、大きさの公式の性質だ。
まとめ:大きさは成分を 乗して足すので、負の符号は消える。 も も大きさは同じ (向きが違うだけ)。、 に注意。
発展 — 一歩先へ。 空間ベクトルの基本が、これで出そろった。平面との違いを、整理しておこう。
変わらないもの(平面と同じ)。
「平面でできたことは、すべて空間でもできる。」
新しく現れたもの(空間だけ)。
① 外積 — ベクトルに垂直なベクトル。 次元にしか存在しない。
② 平面という図形 — 空間には、直線だけでなく「平面」がある。法線ベクトルで記述する。
③ 体積 — スカラー三重積で計算できる。
④ ねじれの位置 — 平面では、 直線は「交わる」か「平行」の 択だった。空間では、交わらないが平行でもないという第 の関係がある。
この ④ が、空間の豊かさを象徴している。
平面に閉じ込められていたときには、想像もできなかった関係だ。
そして、次元を上げると、こういう"新しい現象"が必ず現れる。
次元では?
枚の平面が、 点だけで交わることがある。
(我々の 次元では、 平面は必ず直線で交わるか、平行になる。)
想像もできない。だが、計算はできる。
そこに、数学の力がある。
「見えなくても、計算できる」
空間ベクトルを学ぶ本当の意味は、 次元を扱えるようになることではない。
「図に描けない世界を、計算で扱う」という方法論を、身につけることだ。
そして、その方法論は、 次元でも、 次元でも、無限次元でも通用する。
現代の科学は、そういう空間の中で行われている。
- 統計学: データの次元 変数の数(数百、数千)
- 機械学習: パラメータ空間の次元 数十億
- 物理学: 状態空間、位相空間、ヒルベルト空間
- 経済学: 商品の種類だけの次元をもつ空間
誰も図に描けない。だが、内積は計算できる。距離は測れる。角度も定義できる。
この計算を、 個の成分でやれば、それが現代のデータ解析なのだ。
次は複素数平面へ進む。 そこでは、 次元の平面が、まったく新しい顔を見せる — 数として、掛け算ができる平面である。
別解
符号の 通りを、すべて確かめる。
成分 の符号を、自由に変えてみよう。
成分それぞれに があるので、 通りある。
すべての大きさを計算する。
どれも、 乗すると 、、 になる。
通り、すべて大きさ !
この問題の も、その つにすぎない。
つのベクトルの終点は、空間のどこにあるか。
すべて、原点を中心とする半径 の球面の上だ。
つの象限(空間は つの領域に分かれる)に、 つずつ、対称に散らばっている。
「符号を変えても、長さは変わらない」
これは、鏡映対称性という。
座標の符号を変えるのは、 平面で鏡に映すこと。
鏡に映しても、長さは変わらない。 当たり前だ。
そして、この性質から、 つの重要な公式が出る。
公式 :
すべての成分の符号を変えても、大きさは同じ。
(向きは正反対になるが、長さは変わらない。)
公式 :
倍すると、長さは 倍( の絶対値!)。
確かめよう。 で
倍になっている。 ( ではなく、 倍。)
長さは負にならないから、絶対値がつく。
さて、この「向きによらない」という性質を、もう一段深く考えよう。
大きさは、座標軸の取り方にもよらない。
座標軸を、原点のまわりにぐるぐる回転させても、ベクトルの成分は変わるが、大きさは変わらない。
これを回転不変性という。
なぜ、これが重要か。
物理法則は、座標軸の取り方によらないはずだ。
「東を 軸にするか、北を 軸にするか」で、物理法則が変わってしまったら、おかしい。
だから、物理量は「回転で不変な量」で書かれなければならない。
- 大きさ — 不変 ✓
- 内積 — 不変 ✓
- 成分 — 不変ではない(座標軸を変えると変わる)
エネルギーや仕事が、内積で定義されているのは、この不変性のためだ。
「座標軸をどう取っても、仕事の値は同じ」
この当たり前の要請が、内積という演算を必然にしている。
という、負の符号だらけの計算。
その答えが、座標系によらない絶対的な量であるという事実に、物理学の根幹がある。
ポイント
- 乗で符号が消える。
- 向きが違っても大きさは同じ。
よくある間違い
- や を、負のまま(、)にしてしまう。負の数の 乗は正
- 大きさが負になると考えて と答える。大きさ( 長さ)は必ず 以上
- の中身を などと、符号を残したまま足してしまう