数学C / 空間ベクトル

空間の単位ベクトル

★ 基礎単位ベクトル

問題

と同じ向きの単位ベクトルを求めよ。

ヒントを見る

単位ベクトルは長さで割って作る。まず大きさを計算しよう。

解答・解説

方針

単位ベクトルは で各成分を割る。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 単位ベクトルの作り方は、平面と同じだ。

自分の大きさで割る。

まず、大きさを計算する。

次に、各成分を で割る。

確かめる。

大きさが になった。

「向きはそのまま、長さだけを に」

空間でも、まったく同じ操作である。

そして、この つの成分には、実は幾何的な名前がついている。

方向余弦 — それは別解で見よう。

公式単位ベクトル

① 大きさを求める。

② 大きさで割る。

xyzaa/|a|
|a|=3。単位ベクトル a/|a|=(1/3,2/3,2/3) は向きそのままで長さ1

まとめ:空間でも単位ベクトルは「大きさで割る」。 の大きさは 。平面と同じ作り方だ。

発展 — 一歩先へ。 単位ベクトルは、「向きだけの情報」を担う。では、向きの全体は、どんな形をしているか。

大きさ のベクトルの終点を、全部集める。

平面( 次元)なら、単位円。

空間( 次元)なら、単位球面。

「向きの集合 球面」

この事実が、地球儀を思い起こさせる。

地球上の位置(緯度・経度)は、まさに「原点(地球の中心)から見た方向」だ。

単位ベクトルは、 つの成分をもつが、自由度は しかない( という制約があるから)。

その つの自由度が、緯度と経度である。

( が緯度、 が経度。)

球面上の点を、 つの角度で指定する。 これが極座標だ。

そして、ここに深い問題が潜んでいる。

「球面を、平面の地図に写す」という問題である。

地図投影法。

球面を、どうやっても平らな紙に、歪みなく写すことはできない。

これは、ガウスが証明した数学的な事実だ(驚異の定理)。

球面は、平面と本質的に違う曲がり方(曲率)をもっている。

だから、どの地図にも、必ず歪みがある。

  • メルカトル図法: 角度は正しいが、面積が歪む(グリーンランドが巨大に見える)
  • モルワイデ図法: 面積は正しいが、形が歪む
  • 正距方位図法: 中心からの距離は正しいが、それ以外は歪む

「すべてを正しく写す地図は、存在しない。」

この不可能性は、球面の幾何が、平面の幾何と本質的に異なることの現れだ。

そして、球面の幾何では、常識が通用しない。

  • 三角形の内角の和が、 を超える(球面三角形)
  • 平行線が存在しない(すべての大円は交わる)
  • 最短経路は、直線ではなく大円(飛行機が北極回りで飛ぶ理由)

ユークリッド幾何とは違う、非ユークリッド幾何の世界だ。

そして、アインシュタインの一般相対性理論では、

「宇宙そのものが、曲がった空間である」

質量が、空間を歪ませる。 光は、その歪んだ空間の"最短経路"を進む。

だから、重い星の近くでは、光が曲がって見える(重力レンズ)。

単位ベクトル — 大きさ の、ただの方向。

その集合が球面をなし、球面の幾何が、宇宙の形を語る言語になっている。

別解

単位ベクトルの成分は、「各軸となす角の 」である。

が、 軸となす角を としよう。

を、内積で計算する。

軸となす角

軸となす角

つ並べると

単位ベクトルと、完全に一致した!

「単位ベクトルの成分 各軸との角の

この つを、方向余弦という。

そして、方向余弦には、美しい関係がある。

確かめよう。

なぜ、 になるのか。

単位ベクトルの大きさが だからだ。

当たり前のことを言っているにすぎない。

だが、この式には意味がある。

平面( 次元)なら、 に対応する。

( 軸との角が なら、 軸との角は で、。)

空間版の「三角関数の基本公式」なのである。

実際の角度を、計算してみよう。

は、 軸から 軸と 軸からは 傾いている。

( の成分が等しいので、対称なのは当然だ。)

方向余弦は、結晶学や測量で日常的に使われる。

「この方向は、 つの軸に対して、それぞれどれくらい傾いているか」

その情報を、 つの数で完全に記述できる( 乗の和が という制約があるので、実質的には つの自由度)。

空間の"方向"を数値化する、標準的な方法なのだ。

単位ベクトルとは、「方向そのもの」を表す数の組。

その正体は、 つの角度の だった。

ポイント

  • 単位ベクトル
  • 成分を大きさで割る。

よくある間違い

  • を計算せずに、成分の和()で割ってしまう。割るのは大きさ
  • 片方(または つ)の成分だけを割る。 成分すべてを、同じ で割る
  • 分数を約分しすぎて つ目・ つ目を にしてしまう。成分ごとに、もとの値を で割る