数学C / 空間ベクトル
空間ベクトルの平行条件
問題
、 が平行であるとき、定数 を求めよ。
ヒントを見る
平行なら一方は他方の実数倍。分かっている成分から倍率を先に確定し、残りの成分に適用する。
解答・解説
方針
平行 ⟺ 一方が他方の実数倍。 とおく。 成分から を求め、 成分で を決める。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 平行とは、一方が他方の実数倍ということだ。
成分を見る。
倍率は だ。
成分でも確認する。
確かに 倍になっている。
なら、 成分も 倍のはず。
答えは 。
「すべての成分が、同じ倍率になる」 — これが平行の条件だ。
つの成分だけ倍率が違えば、それは平行ではない。
空間では、平面のような「たすきがけ」の 本の式では書けない。
代わりに、外積を使えば 本の条件式になる。 それは別解で見よう。
① 実数倍とおく。 。
② を決める。 成分: より 。 成分も で整合。
③ を決める。 成分:。
まとめ:空間の平行は「実数倍 」。まず確実に決まる成分()から を出し、残りの成分で未知数を決める。 成分すべてが同じ比になる。
発展 — 一歩先へ。 外積は、なぜ 次元にしか存在しないのか。
「 つのベクトルに垂直な方向」を考えてみよう。
次元(平面)では?
と が張る空間は、平面全体。 「両方に垂直な方向」は、平面の外にある。
平面の中には、存在しない。
次元では?
と が張るのは、 枚の平面。 それに垂直な方向は、ちょうど 本の直線( の 方向)。
向きを右ねじの法則で決めれば、ただ つに定まる。
次元では?
と が張るのは、 次元の平面。 それに垂直な空間は、 次元分ある()。
「両方に垂直なベクトル」が、無数にある。 つに決まらない。
( 次元にも、八元数という数の体系を使うと、外積が定義できる。数学の不思議な事実だ。)
「我々の空間が 次元である」ということが、外積の存在を許している。
そして、外積が存在するからこそ、 次元には"回転"という豊かな構造が生まれる。
角運動量、トルク、磁場のローレンツ力 — すべて外積で書かれる。
「なぜ、磁場の中で動く電荷は、横向きに曲げられるのか?」
答え: 外積が、 つのベクトルに垂直な方向を指すからだ。
この一見奇妙な物理法則は、 次元空間の幾何学的な構造そのものに由来している。
さらに、外積は"体積"にもつながる。
つのベクトルが作る平行六面体の体積は
スカラー三重積という。
外積で「底面の面積(と法線方向)」を出し、それと の内積で「高さ」を掛ける。
小学校で習った公式が、ベクトルの演算として復活する。
そして、この値が なら、 つのベクトルは同一平面上にある(平行六面体がつぶれる)。
点が同一平面上にあるかどうかの判定に、この式が使える。
平行、垂直、面積、体積、同一平面 — 空間図形のあらゆる判定が、内積と外積という つの演算に集約される。
を求めるだけの、素朴な平行条件。
その裏に、 次元空間の特別さが宿っている。
別解
外積を使って、平行を 本の式で判定する。
平面では、平行の条件が「たすきがけ 」という 本の式で書けた。
空間では、この"たすきがけ"が 成分に増える。
これを外積(ベクトル積)という。
平行の条件は、こうなる。
この問題で確かめよう。 、。
になるには、すべての成分が でなければならない。
どちらの式からも、 ✓
つの条件が、同じ答えを与える。 これは、 と が本当に平行になれる、ということの確認でもある。
(もし つの式から違う が出たら、どんな でも平行にはならない、ということだ。)
外積の意味。
外積 は、次の つの性質をもつ。
① にも にも垂直( つが張る平面の法線方向)
② 大きさは、 と が作る平行四辺形の面積
平行( または )なら、。
平行四辺形が、ぺしゃんこにつぶれる。 面積 。
「平行 平行四辺形の面積が 」
平面のときと、まったく同じ意味だった。 ただ、 次元では、面積を"ベクトル"として表す(法線方向を向いた、大きさが面積のベクトル)。
内積と外積の対比を、もう一度。
と 。 きれいに対をなしている。
そして、この つを組み合わせると
三角関数の基本公式()が、ベクトルの世界に現れる。
ラグランジュの恒等式と呼ばれる、美しい関係だ。
ポイント
- 平行 。
- 決まる成分から を出す。
よくある間違い
- 成分と 成分だけ確認して、 成分の倍率を確かめない。すべての成分が同じ倍率になる必要がある
- 平行の条件を「内積 」としてしまう。内積 は垂直の条件
- 倍率 と、求める成分 を混同する。この問題の は 成分であって、倍率()ではない