数学C / 平面ベクトル

ベクトルの大きさ(負の成分)

★ 基礎ベクトルの大きさ

問題

ベクトル の大きさ を求めよ。

ヒントを見る

成分に負の数があっても手順は同じ。 乗の段階で符号が消えることを確認しよう。

解答・解説

方針

大きさは成分の 乗の和の平方根。 乗すると負の符号は消える()。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 成分に負の数が入っている。だが、何も変わらない。

乗すれば、符号は消える。

答えは、 のときと同じ だ。

これは、当然のことである。

大きさとは、矢印の長さだ。

長さに、向きは関係ない。 左を向いていようが、右を向いていようが、 cm の矢印は cm。

大きさが負になることは、絶対にない。

乗で符号が消えるから、大きさは成分の正負によらず正」 — 計算する前から、答えが正であることは分かっている。

公式( 乗するので符号は消える)

xyOa345
|a|=√((−3)²+4²)=5(三平方の定理)

まとめ:大きさは成分を 乗して足すので、負の符号は消える。 も大きさは同じ (向きが違うだけ)。(マイナスの 乗は正)に注意。

発展 — 一歩先へ。 平面ベクトルの基本が、これで出そろった。全体を見渡しておこう。

ベクトルには、 つの顔がある。

① 幾何の顔 — 矢印。向きと大きさをもつ量。

② 代数の顔 — 数の組 。成分ごとに計算する。

この つを、自由に行き来できることが、ベクトルを使いこなすということだ。

幾何 → 代数(計算に持ち込む)

  • 「垂直」→ 内積
  • 「平行」→ 実数倍、たすきがけ
  • 「なす角」→
  • 「長さ」→
  • 「分点・重心」→ 重みつき平均

代数 → 幾何(意味を読む)

  • 内積が正 → 鋭角(同じ方向を向いている)
  • 内積が負 → 鈍角(逆を向いている)
  • 内積が 垂直
  • たすきがけ → 平行四辺形の面積

「図形の問題を、計算に翻訳する。計算の結果を、図形で読む。」

この往復が、ベクトルの真骨頂である。

初等幾何では、補助線をひらめかないと解けない問題があった。

「なぜ、そこに補助線を引くのか?」 — センスの問題だった。

ベクトルなら、機械的に計算するだけで答えが出る。

オイラー線の証明を思い出してほしい。 初等幾何なら何ページもかかる定理が、内積の計算 行で片づいた。

デカルトが座標を発明し( 年)、幾何が代数になった。

「図形を、数式で扱えるようにする」

この発想が、数学を根底から変えた。

そして、ベクトルはその発想の、もっとも洗練された形である。

座標系すら不要になる。 という式は、座標軸をどこにとっても成り立つ。

「座標に依存しない代数」 — これが、物理法則を書くのに最適な言語になった。

次は、空間ベクトル( 次元)へ進む。

驚くことに、公式はほとんど変わらない。 成分が つ増えるだけだ。

平面で身につけた武器が、そのまま空間で通用する。

そして、その先には 次元、 次元、無限次元の世界が待っている。

という、たった 行の計算。

それは、あらゆる次元に通用する、普遍的な"長さ"の測り方なのだ。

別解

「大きさは向きによらない」を、対称性で確かめる。

つのベクトルを並べてみよう。

符号のすべての組み合わせだ。

それぞれの大きさを計算する。

全部 !

つのベクトルは、それぞれ第 、第 、第 、第 象限を向いている。

向きはバラバラ。だが、長さはすべて同じ。

図で見れば、当たり前だ。

つの矢印の先端は、原点を中心とする半径 の円の上に、対称に並んでいる。

「同じ長さのベクトルは、円の上に並ぶ。」

この見方が、大事な性質を教えてくれる。

性質 :

逆向きにしても、長さは変わらない。

性質 :

倍すると、長さは ( の絶対値!)。

なら、向きは逆になるが、長さは 倍。

と書いて、 ではないところが要点だ。 長さは負にならないから。

この「大きさは向きによらない」という性質。

言い換えると、「回転しても、大きさは変わらない」ということでもある。

ベクトルを、原点のまわりに 回転させても、 回転させても、長さは のまま。

これを回転不変性という。

そして、この性質こそが、 という測り方の"特別さ"を保証している。

(マンハッタン距離 は、回転すると変わってしまう。 なら だが、 回転させると になる。)

「世界に、特別な方向はない。」

東を向いていても、北を向いていても、物理法則は同じ。

その要請に応えられる長さの測り方が、 — ユークリッドの距離なのだ。

負の成分が出てきても、慌てる必要はない。

乗が、すべての符号を洗い流してくれる。

ポイント

  • 乗で符号が消える。
  • 向きが違っても大きさは同じ。

よくある間違い

  • としてしまう。マイナスの 乗はプラス()
  • 大きさが負になると考えて、 と答える。大きさ( 長さ)は必ず 以上
  • と計算する。各成分を 乗してから足し、最後に をとる