数学C / 平面ベクトル
ベクトルの大きさ(負の成分)
問題
ベクトル の大きさ を求めよ。
ヒントを見る
成分に負の数があっても手順は同じ。 乗の段階で符号が消えることを確認しよう。
解答・解説
方針
大きさは成分の 乗の和の平方根。 乗すると負の符号は消える()。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 成分に負の数が入っている。だが、何も変わらない。
乗すれば、符号は消える。
答えは、 のときと同じ だ。
これは、当然のことである。
大きさとは、矢印の長さだ。
長さに、向きは関係ない。 左を向いていようが、右を向いていようが、 cm の矢印は cm。
大きさが負になることは、絶対にない。
「 乗で符号が消えるから、大きさは成分の正負によらず正」 — 計算する前から、答えが正であることは分かっている。
まとめ:大きさは成分を 乗して足すので、負の符号は消える。 も も大きさは同じ (向きが違うだけ)。(マイナスの 乗は正)に注意。
発展 — 一歩先へ。 平面ベクトルの基本が、これで出そろった。全体を見渡しておこう。
ベクトルには、 つの顔がある。
① 幾何の顔 — 矢印。向きと大きさをもつ量。
② 代数の顔 — 数の組 。成分ごとに計算する。
この つを、自由に行き来できることが、ベクトルを使いこなすということだ。
幾何 → 代数(計算に持ち込む)
- 「垂直」→ 内積
- 「平行」→ 実数倍、たすきがけ
- 「なす角」→
- 「長さ」→
- 「分点・重心」→ 重みつき平均
代数 → 幾何(意味を読む)
- 内積が正 → 鋭角(同じ方向を向いている)
- 内積が負 → 鈍角(逆を向いている)
- 内積が → 垂直
- たすきがけ → 平行四辺形の面積
「図形の問題を、計算に翻訳する。計算の結果を、図形で読む。」
この往復が、ベクトルの真骨頂である。
初等幾何では、補助線をひらめかないと解けない問題があった。
「なぜ、そこに補助線を引くのか?」 — センスの問題だった。
ベクトルなら、機械的に計算するだけで答えが出る。
オイラー線の証明を思い出してほしい。 初等幾何なら何ページもかかる定理が、内積の計算 行で片づいた。
デカルトが座標を発明し( 年)、幾何が代数になった。
「図形を、数式で扱えるようにする」
この発想が、数学を根底から変えた。
そして、ベクトルはその発想の、もっとも洗練された形である。
座標系すら不要になる。 という式は、座標軸をどこにとっても成り立つ。
「座標に依存しない代数」 — これが、物理法則を書くのに最適な言語になった。
次は、空間ベクトル( 次元)へ進む。
驚くことに、公式はほとんど変わらない。 成分が つ増えるだけだ。
平面で身につけた武器が、そのまま空間で通用する。
そして、その先には 次元、 次元、無限次元の世界が待っている。
という、たった 行の計算。
それは、あらゆる次元に通用する、普遍的な"長さ"の測り方なのだ。
別解
「大きさは向きによらない」を、対称性で確かめる。
つのベクトルを並べてみよう。
符号のすべての組み合わせだ。
それぞれの大きさを計算する。
全部 !
つのベクトルは、それぞれ第 、第 、第 、第 象限を向いている。
向きはバラバラ。だが、長さはすべて同じ。
図で見れば、当たり前だ。
つの矢印の先端は、原点を中心とする半径 の円の上に、対称に並んでいる。
「同じ長さのベクトルは、円の上に並ぶ。」
この見方が、大事な性質を教えてくれる。
性質 :
逆向きにしても、長さは変わらない。
性質 :
倍すると、長さは 倍( の絶対値!)。
なら、向きは逆になるが、長さは 倍。
と書いて、 ではないところが要点だ。 長さは負にならないから。
この「大きさは向きによらない」という性質。
言い換えると、「回転しても、大きさは変わらない」ということでもある。
ベクトルを、原点のまわりに 回転させても、 回転させても、長さは のまま。
これを回転不変性という。
そして、この性質こそが、 という測り方の"特別さ"を保証している。
(マンハッタン距離 は、回転すると変わってしまう。 なら だが、 回転させると になる。)
「世界に、特別な方向はない。」
東を向いていても、北を向いていても、物理法則は同じ。
その要請に応えられる長さの測り方が、 — ユークリッドの距離なのだ。
負の成分が出てきても、慌てる必要はない。
乗が、すべての符号を洗い流してくれる。
ポイント
- 乗で符号が消える。。
- 向きが違っても大きさは同じ。
よくある間違い
- を としてしまう。マイナスの 乗はプラス()
- 大きさが負になると考えて、 と答える。大きさ( 長さ)は必ず 以上
- を と計算する。各成分を 乗してから足し、最後に をとる