数学C / 複素数平面
絶対値の2乗と共役
問題
のとき、 を求めよ。
ヒントを見る
共役との積には、絶対値と結びつく有名な性質がある。直接展開してもすぐ確かめられる。
解答・解説
方針
(絶対値の 乗)。実際に を計算しても同じ。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 — 自分自身と、その共役の積だ。
この つを掛ける。
和と差の積の形をしている。
当てはめる。
を使う。
答えは 。
注目すべきは、 が完全に消えたことだ。
結果は、実数。しかも 。
「共役を掛けると、虚数が消えて、絶対値の 乗になる」
この性質が、複素数の計算のあらゆる場面で使われる。
。
これは に等しい。
まとめ: は複素数の超重要公式。共役をかけると虚部が消えて、絶対値の 乗(実数)になる。分母の実数化(割り算)でも活躍する関係だ。
発展 — 一歩先へ。 (積の絶対値は、絶対値の積)
この式を、成分で書き下すと、思わぬ結果が現れる。
絶対値の 乗を、両辺で計算する。
この つが等しい。
ブラーマグプタ・フィボナッチの恒等式。
この式が意味すること。
「 つの平方数の和」どうしを掛けると、また「 つの平方数の和」になる。
具体例で見よう。
この つを掛ける。
恒等式より、 も つの平方数の和で書けるはずだ。
確かに!
しかも、 と の役割を入れかえると、別の表し方も出る。
は、 通りに「平方数の和」で書ける。
この事実は、整数論の深い問題につながっている。
「どんな整数が、 つの平方数の和で書けるか?」
フェルマーの 平方定理( 年)。
「 で割って 余る素数は、必ず つの平方数の和で書ける。しかも、 通りに。」
すべて、 型の素数だ。
一方、 で割って 余る素数(、、、)は、決して 平方の和にならない。
なぜ、こんな法則があるのか。
その説明に、複素数が使われる。
ガウス整数 (、 は整数)という数の世界を考える。
この世界では、 は素数ではない!
分解できてしまう。
一方、 はガウス整数の世界でも素数のまま(分解できない)。
「 型の素数は、ガウス整数では分解する。 型は分解しない。」
この違いが、 平方の和の法則を生んでいる。
整数の性質が、複素数の世界を経由して初めて説明される。
という、絶対値の計算。
その一般化が、 年来の整数論の謎を解く鍵になっている。
数学は、こうして予想外の場所でつながっている。
別解
この公式の使い道 — 複素数の割り算(分母の実数化)。
が実数になる。 この事実は、何の役に立つのか。
割り算だ。
問題: を、 の形にせよ。
分母に があると、「何なのか」が分からない。
分母を実数にしたい。
そこで、分母の共役を、分母・分子に掛ける。
分母は、まさにこの問題で計算した だ。
きれいな形になった!
検算しよう。 この数に を掛けて、 に戻るか。
確かに、逆数だ。
この操作を「分母の実数化」という。
中学で習った「有理化」と、まったく同じ発想だ。
根号を消すために、共役()を掛けた。
虚数を消すために、共役()を掛ける。
「邪魔なものを、共役との積で消す」
同じ手が、 度使われている。
一般公式として、書いておこう。
「逆数 共役 絶対値の 乗」
この式には、幾何的な意味もある。
なので、。
逆数をとると、絶対値も逆数になる。
偏角は?
の偏角は、 の偏角の符号を変えたもの(実軸で折り返すから)。
「逆数 実軸で折り返して、原点からの距離を逆数にする」
これを反転という。
単位円()の上では、逆数は共役と一致する。
この性質が、単位円上の複素数を扱うときに、絶大な威力を発揮する。
( の 乗根の計算では、この公式が繰り返し使われる。)
という、 行の計算。
それが、複素数の割り算を可能にし、逆数という操作に幾何的な意味を与えている。
ポイント
- (実数)。
- 共役をかけると虚部が消える。
よくある間違い
- の符号を落とし、 としてしまう。
- を と混同する。 で、まったく別の値
- が複素数になると思ってしまう。共役との積は必ず実数()