数学C / 複素数平面
iを掛ける(90°回転)
問題
複素数 に を掛けた を求めよ。また、これが をどう動かしたかを述べよ。
ヒントを見る
まず素直に掛け算( に注意)。次に、元の点と結果の点を複素数平面に打ってみよう — 原点まわりにどう動いたかが見える。
解答・解説
方針
を掛ける計算をする()。 なので、 を掛けることは原点のまわりに 回転すること。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 まず、素直に計算しよう。
答えは 。
では、これは幾何的に何をしたことになるのか。
もとの点: → 座標
新しい点: → 座標
この 点を、複素数平面に打ってみよう。
から へ。
原点からの距離は?
同じ! 長さは変わっていない。
では、向きは?
の極形式は 。 絶対値 、偏角 だ。
「絶対値 を掛ける → 長さは変わらない」 「偏角 を足す → 回転する」
① 計算する。 。
② 意味を述べる。 (絶対値 、偏角 )。よって は を原点のまわりに 回転したもの。点 が点 にうつる。
まとめ: を掛ける = 回転。絶対値 の複素数を掛けると、大きさを変えずに回転だけする。 は確かに 回った位置だ。複素数と回転の深い結びつきを表す。
発展 — 一歩先へ。 「 を掛ける 回転」
この事実を、行列と比べてみよう。
平面上の点 を 回転させる行列は
実際に計算する。
— この問題の答え と、完全に一致する ✓
複素数の掛け算と、行列の掛け算が、同じ結果を出す。
さらに、この行列を 乗してみよう。
(単位行列のマイナス)。
と、同じ形だ!
この行列 は、複素数 と"同じ振る舞い"をする。
もっと一般に、複素数 は、こんな行列と対応する。
この対応のもとで、複素数の足し算・掛け算が、行列の足し算・掛け算に、完全に一致する。
「複素数は、特別な形の 行列である」
同じ構造が、 つの姿で現れている。 これを同型という。
どちらで計算しても、答えは同じ。 ただ、複素数のほうが、書くのが圧倒的に楽だ。
さて、この「回転」という視点で、複素数の応用を見渡してみよう。
① 交流回路。
電圧と電流は、 波で振動する。 その位相差(ズレ)が、回路の性質を決める。
複素数で書けば、位相差は「偏角の差」になる。 微分方程式を解かずに、掛け算だけで回路が解析できる。
② 信号処理。
フーリエ変換は、信号を「回転する複素数」の重ね合わせとして分解する。
「単位円の上を、角速度 で回る点」 — それが、周波数 の波の正体だ。
③ 量子力学。
波動関数は、複素数の値をとる。 その位相(偏角)が、干渉という現象を生む。
つの経路を通った電子が、位相が揃えば強め合い、 ずれていれば打ち消し合う。
「量子の重ね合わせ」の数学的な正体は、複素数の足し算なのだ。
この、 秒で終わる計算。
その意味は「 回す」ということであり、そして回転こそが、波を、電気を、量子を記述する言語なのである。
。原点のまわりに 回転したもの
別解
「 を掛ける 回転」から、 の意味が見えてくる。
を 回掛けたら、どうなるか。
回転を 回。 つまり、 回転だ。
回転とは、点を原点に関して反対側へ移すこと。
つまり
「」の幾何的な意味が、これだ。
回転を 回すると、向きが逆になる。
この問題で確かめよう。
✓
確かに、もとの の符号を変えたものになった。
回掛けたら?
周して、元に戻る。
確かめる。 ✓
の累乗が 周期で循環する理由が、これだ。
回転の ずつが、 回で 周する。
「」は、天下り式の"約束"ではない。
「 回転を 回すれば、反転する」という、幾何的な必然だったのだ。
さて、この見方から、「負の数の平方根」という謎も解ける。
とは何か。
「 乗すると になる数」 — 実数には存在しない。
だが、「 回やると 回転になる操作」なら、存在する。
それが 回転だ。
回転。
負の数の平方根が「存在しない」のではない。
数直線( 次元)の上には存在しないだけ。
平面( 次元)に出れば、ちゃんと存在する。
とは、「数直線の外へ出た数」なのである。
そして、この 歩の踏み出しが、数学の風景を一変させた。
行き詰まったら、次元を上げる。
この発想は、数学のあらゆる場面で繰り返し現れる、強力な戦略なのだ。
ポイント
- を掛ける = 回転。
- 絶対値 の複素数を掛ける = 回転。
よくある間違い
- の を使い忘れ、 のまま残してしまう
- と、 どうしの積()を にしてしまう
- 「 回転」の向きを、時計回りだと思ってしまう。 を掛けると反時計回り(正の向き)に 回る