数学C / 複素数平面
極形式の積
問題
、 のとき、積 を極形式で求めよ。
ヒントを見る
極形式どうしの積では、絶対値と偏角のそれぞれに美しい規則が働く。掛け算がどこで足し算に変わるか、を思い出そう。
解答・解説
方針
極形式の積は「絶対値どうしをかけ、偏角どうしを足す」。 と 。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 極形式の掛け算には、驚くほど簡単な規則がある。
この 行を覚えれば、極形式の積は暗算できる。
絶対値:
偏角:
そして、、 だから
なぜ、こんな規則が成り立つのか。
加法定理のおかげだ。
展開して、 を使い、加法定理でまとめると、この式が出る。
「複素数の掛け算 拡大 回転」
この幾何的な意味こそが、複素数を"数"として特別なものにしている。
① 絶対値をかける。 。
② 偏角を足す。 。
まとめ:複素数の積は「絶対値をかけ、偏角を足す」。これが極形式の最大の利点。、 なので 。掛け算が「拡大 + 回転」になる、という複素数平面の本質だ。
発展 — 一歩先へ。 「掛け算 拡大 回転」
この事実が、複素数を「平面の幾何を扱う言語」に変える。
回転を、掛け算で表せる。
点 を、原点のまわりに だけ回転させたい。
掛けるだけ。
行列を使うと、こうなる。
行列の計算だ。
複素数なら、 回の掛け算で終わる。 圧倒的に楽である。
さらに、「点 を中心とする回転」も書ける。
「 を原点に移す()→ 回す(掛ける)→ 戻す()」
ステップが、 行の式になる。
この式が、複素数平面の問題を解く、最強の武器だ。
「正三角形の 頂点」「正方形の頂点」「相似変換」 — すべて、この式で処理できる。
例: 、、 が正三角形をなす条件。
を のまわりに 回転させると、 になる。
この 行が、正三角形の条件式である。
初等幾何なら、何行もかかる議論だ。
そして、この「掛け算による回転」は、コンピュータグラフィックスで実用化されている。
D の回転は、複素数で。
D の回転は?
四元数(クォータニオン)という、複素数を拡張した数を使う。
(、、 という つの虚数単位がある。)
ハミルトンが 年に発見した、この奇妙な数体系。
年後、 D ゲームやロボット工学、宇宙船の姿勢制御で、なくてはならない道具になった。
回転行列(、 個の数)より、四元数( 個の数)のほうが、計算が速く、誤差も蓄積しにくい。
「複素数の掛け算が回転である」という発見。
それが 次元に拡張され、いま宇宙船の向きを制御している。
、
この、小学生でもできる計算の中に、回転という幾何が宿っているのだ。
別解
極形式を使わず、直交形式()に直して、力ずくで掛ける。
「本当に になるのか」を、自分の手で確かめる別解である。
まず、 を の形にする。
次に、。
この つを、普通に掛け算する。
分配法則で展開する。
を使う。
実部を整理する。
実部が、きれいに消えた!
虚部を整理する。
! 本解と完全に一致した ✓
極形式で 秒だった計算が、直交形式では 分かかった。
しかも、 が飛び交う面倒な展開だ。
この対比が、極形式の威力を教えてくれる。
「掛け算をするなら、極形式」
逆に、「足し算をするなら、直交形式」だ。
成分ごとに足すだけ。簡単だ。
極形式では、足し算はできない(絶対値も偏角も、単純には足せない)。
つの形式は、それぞれ得意分野が違う。
| 足し算 | 掛け算 | |
|---|---|---|
| 直交形式 | 得意 | 面倒 |
| 極形式 | 苦手 | 得意 |
問題に応じて、 つの形式を行き来する。
「掛け算・累乗が出てきたら、極形式に直す」
この判断ができるようになれば、複素数の計算は劇的に楽になる。
ポイント
- 積:絶対値は積、偏角は和。
- 掛け算 = 拡大 + 回転。
よくある間違い
- 絶対値も足してしまい、 とする。絶対値は掛ける()
- 偏角を掛けてしまい、 とする。偏角は足す()
- で止めてしまう。、 なので、 まで簡単にする