数学C / 複素数平面
共役複素数
問題
複素数 の共役複素数 を求めよ。
ヒントを見る
共役は虚部の符号だけ反転した相棒。複素数平面では、実軸で折り返した位置にあたる。
解答・解説
方針
共役複素数は虚部の符号を変えたもの。。複素数平面では実軸に関して対称な点。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 共役複素数とは、虚部の符号だけを変えたものだ。
実部()はそのまま。虚部の符号だけ、 から へ。
この操作を、複素数平面で見ると?
点 が、点 に移る。
座標はそのまま、 座標だけ符号が反転する。
これは、実軸( 軸)に関する鏡映だ。
共役をとる 実軸で折り返す。
この幾何的な意味を掴んでおくと、共役の性質がすべて見えてくる。
- — 鏡に映しても、原点からの距離は同じ
- — 回折り返せば、元に戻る
- が実数 — 実軸上の点は、折り返しても動かない
すべて、鏡映の性質そのものである。
まとめ:共役複素数は虚部の符号を反転したもの。複素数平面では実軸(横軸)に関して対称な点にうつる。 の点 に対し、 は点 。 という大事な性質もある。
発展 — 一歩先へ。 「虚数解は、必ず共役なペアで現れる」
この事実を、証明してみよう。
実数係数の方程式
が、 を解にもつとする。
両辺の共役をとる。
共役は、和と積を素通りする。
係数 は実数だから、。
これは、「 も方程式の解である」ということだ!
証明終わり。 行だ。
この定理の帰結。
「実数係数の 次方程式は、必ず実数解をもつ。」
なぜか。 解は 個ある(代数学の基本定理)。虚数解は共役なペアで現れる( 個 組)。
は奇数だから、 で割り切れない。 必ず つは、ペアを作れない解 — つまり実数解が残る。
次関数のグラフが、必ず 軸と交わることの、代数的な説明だ。
そして、この「共役対称性」は、物理学でも決定的な役割を果たす。
量子力学では、波動関数 は複素数の値をとる。
だが、観測できる量(確率密度)は、実数でなければならない。
どうするか。
共役との積をとる。 これは必ず実数になる(そして 以上)。
「複素数で計算し、共役との積で実数に戻す」
この手続きが、量子力学の観測理論の根幹をなしている。
電気工学でも同じだ。
交流回路の計算は、複素数(インピーダンス)で行う。 計算が圧倒的に楽になるからだ。
そして、最後に実部を取り出す — あるいは、共役との積で電力(実数)を求める。
「複素数で計算し、実数で答える」
共役は、複素数の世界と、実数の世界を行き来する"扉"なのである。
— 符号を つ変えるだけの操作。
それが、実数への帰還を保証している。
別解
共役は「実部と虚部を取り出す道具」である。
と を、足したり引いたりしてみよう。
足す。
虚部が消えて、実数になった!
しかも、 — 実部の 倍だ。
引く。
実部が消えて、純虚数になった。
— 虚部の 倍だ。
掛ける。
これは だ。
つの演算が、 つの重要な量を取り出す。
「共役は、複素数を分解する道具」なのだ。
この道具の使い道は、条件の言い換えにある。
「 が実数」という条件を、式で書きたい。
「 が純虚数」なら?
この つの言い換えが、複素数の問題で繰り返し使われる。
なぜ、わざわざ言い換えるのか。
と成分で書くと、未知数が つ( と )になる。
だが と で書けば、 という つの文字で処理できる。
計算量が、劇的に減るのだ。
そして、共役には"分配法則"がある。
「共役をとる」という操作は、四則演算を素通りする。
確かめよう。 、。
一致した。
この性質から、有名な事実が導かれる。
「実数係数の方程式が虚数解 をもつなら、 も解である。」
虚数解は、必ず共役なペアで現れる。
の解は — 確かに共役なペアだ。
共役という、符号を変えるだけの単純な操作。
それが、複素数の世界の"対称性"を体現している。
ポイント
- 。
- 実軸に関して対称な点。
よくある間違い
- 実部の符号まで変えて としてしまう。変えるのは虚部の符号だけ
- 共役を「逆数」と混同する。共役は で、逆数()とは別物
- の絶対値が と違うと考える。鏡に映しただけなので、