数学C / 複素数平面

複素数の絶対値

★ 基礎絶対値

問題

複素数 の絶対値 を求めよ。

ヒントを見る

絶対値は原点からの距離 — 実部と虚部でできる直角三角形の斜辺。三平方で出す。

解答・解説

方針

複素数 の絶対値は 。複素数平面での原点からの距離。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 複素数 を、平面上の点 だと思ってみよう。

これが複素数平面の発想だ。

  • 実部 横()座標
  • 虚部 縦()座標

そして、絶対値 とは、原点からその点までの距離である。

三平方の定理そのものだ。

ベクトルの大きさと、まったく同じ計算になる。

複素数は、平面のベクトルと同じ顔をもっている。

では、何が違うのか。

複素数どうしは、掛け算ができる

ベクトルには「掛けて別のベクトルを作る」演算がない(内積は数になってしまう)。

その掛け算が、回転を生む — それが、この単元の主題である。

公式複素数の絶対値 (原点からの距離)

xyO3+4i
複素数 3+4i は点(3,4)。原点からの距離(絶対値)は5

まとめ:複素数 は複素数平面で点 。絶対値はその点と原点の距離 は原点から 。ベクトルの大きさと同じ考え方だ。

発展 — 一歩先へ。 複素数は、なぜ"数"でありながら、"平面"でもあるのか。

歴史をたどってみよう。

世紀、 次方程式の解の公式が発見された。

そこで、奇妙な現象が起きた。

という方程式。 実数解 をもつことは、代入すればすぐ分かる。

ところが、解の公式に当てはめると

— 負の数の平方根が出てきてしまう。

「あり得ない数」を経由しないと、正しい実数解()にたどり着けない。

数学者たちは困惑した。 ボンベリは、この を「詭弁的な量」と呼びながら、計算に使った。

そして、確かに答えが合う。

「存在しないはずの数が、正しい答えを導く」

この不気味な事実が、複素数の出発点だった。

デカルトは、これを"想像上の数"(imaginary)と名づけた。 蔑称である。

オイラーが という記号を導入し( 年)、ガウスが複素数平面を導入した( 年)。

ガウスの功績は、決定的だった。

を、平面の点 と見なせばよい」

この 行で、複素数は「想像上のもの」から「目に見えるもの」になった。

もはや不気味ではない。 ただの平面の点だ。

そして、この見方から、驚くべき事実が導かれる。

代数学の基本定理(ガウス、 年)。

次方程式は、複素数の範囲で、必ず 個の解をもつ。」

実数の範囲では、 は解をもたない。

だが複素数なら、 という 個の解がある。

どんな方程式も、複素数の中では"完結"する。

これ以上、数を拡張する必要がない。

「複素数は、代数的に閉じている」

負の数()を認めたら、 次方程式のためにさらに新しい数が要るのでは? — と心配する必要はない。

複素数で、すべて足りる。

という、素朴な計算。

その背後には、「あり得ない数」を認めた瞬間に、数の世界が完全になったという、数学史上最大の逆説がある。

別解

図を使わず、共役との積()から絶対値を出す。

複素数には、こんな公式がある。

「自分自身と、その共役を掛けると、絶対値の 乗になる。」

確かめよう。

和と差の積の公式 を使う。

ここで だから

という実数になった。

虚数単位が、きれいに消える。

( なので、正のほうを取る。)

本解と同じ答え ✓

この方法の何がすごいのか。

「図形(距離)の問題を、代数(掛け算)で解いた」

三平方の定理を使っていない。 ただ、 という規則に従って計算しただけだ。

そして、 が必ず実数になるという事実は、極めて重要である。

一般に なら

確かに実数、しかも 以上。 そして、これは にほかならない。

この公式が、分数の計算を可能にする。

複素数で割り算をするとき、分母を実数にしたい。

分母・分子に共役を掛けると、分母が実数になる。

「有理化」の複素数版だ。

根号を消すために共役()を掛けたように、虚数を消すために共役()を掛ける。

さらに、この公式から、絶対値の性質も導ける。

「積の絶対値は、絶対値の積」

これは、次に学ぶ「掛け算で長さが掛け算される」という性質の、代数的な証明になっている。

図形的な事実が、 という 行の規則から、すべて導かれるのだ。

ポイント

  • 複素数平面での原点からの距離。

よくある間違い

  • としてしまう。絶対値は原点からの距離で、
  • 虚部の まで 乗して としてしまう。絶対値の公式では、虚部の"係数"()だけを 乗する
  • 絶対値が負になると考える。 で、必ず 以上