数学III / 積分法の計算

減衰振動の絶対値の積分(山の面積が等比数列)

最難関編絶対値の積分周期性等比数列

問題

を自然数とし

とおく。

(1) を求めよ。

(2) を自然数とするとき

が成り立つことを示せ。

(3) を求め、さらに を求めよ。

ヒントを見る

絶対値がついたままでは原始関数が書けない。どこで区切れば絶対値が外れるか。

番目の山を、1つ目の山に重ねてみよ。 からは何が出てくるか。

解答・解説

方針

は周期 ごとに区切れば絶対値が外れる。 番目の山を左端に平行移動すると、 から定数 がくくり出せ、残りは1つ目の山とまったく同じ積分になる。こうして山の面積は公比 の等比数列になり、和は等比数列の和で書ける。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 絶対値のついた は、そのままでは原始関数が書けない。 ごとに符号が変わるからだ。

ならば ごとに区切ればよい。各区間の中では はただの で、山ひとつぶんの積分になる。

そこで平行移動を考える。 番目の山を左端まで引き戻すと、 から という定数がくくり出せる。 のほうは周期 (絶対値をとれば)でまったく同じ形に戻るからだ。

つまり、山の面積は公比 の等比数列になる。積分の問題が、等比数列の和の問題に化けるのだ。

公式部分積分を2回で循環させて
重要 の周期は ( の周期 ではない)。 ごとに区切れば絶対値が外れる

① (1) 1つ目の山の面積。 上の原始関数を使う( は微分すれば確かめられる)。

② (2) 番目の山を左端へ移す。 とおくと で、 に対応する。

ずらすと符号だけが反転するから、絶対値をとれば元に戻る。 では

また で、後ろは定数である。よって

山の面積は、1つ進むごとに 倍になる。

xyO面積 Ae^(-π)Ae^(-2π)Aπ
y=e^(-x)|sin x| の山。面積は1つ進むごとに e^(-π)(約 0.043)倍に縮む。2つ目の山はすでに 1つ目の 4% ほどで、3つ目はこの縮尺では見えない。積分は、この等比数列の和にほかならない

③ (3) 等比数列の和にする。 個の山の面積の和だから

初項 、公比 、項数 の等比数列の和である( なので公比は ではない)。

のとき だから

最後は分母・分子に を掛けて整理した。

まとめ: 周期的な絶対値は「1周期ぶんを計算して、あとは等比数列」。積分・数列・極限が1本の線でつながる典型である。

発展 — 一歩先へ。 各山の面積が公比 の等比数列になる、という事実は「減衰振動が一定の割合でエネルギーを失う」ことの数学的な表現である。

ばねにおもりを付けて水中で揺らすと、振れ幅は指数関数的に小さくなる。1回の振動で振幅が何倍になるか — その比の対数を対数減衰率と呼び、減衰の強さを測る量として使う。本問の がまさにそれだ。無限に振動しても総面積が有限にとどまるのは、公比が より小さいからである。

(1) (2) の平行移動で がくくり出せる (3)

別解

原始関数を1つ用意し、端点だけを追う(機械的なルート)。 平行移動を思いつかなくても、符号を丁寧に処理すれば同じ場所に着く。

区間 では の符号は一定で、 である( なら なら 、と交互になる)。よって

原始関数 を使う。 だから

したがって

( を引くと、符号が同じ向きにそろう。)

これに を掛けると符号が2乗になって消え

最後は とくくった。ここで本解と同じ等比数列に合流する。

発想の飛躍がなくても、原始関数と端点の値を正確に追えば必ずたどり着く。うまい変形が見えないときの、確実な逃げ道である。

ポイント

  • の周期は ごとに区切る。
  • 平行移動すると が定数として外に出る。
  • 山の面積は公比 の等比数列。和は等比数列の和。

よくある間違い

  • 絶対値を外さずに を計算してしまう。それは山と谷が打ち消し合った値であって、 の積分(面積の総和)とは別物である。
  • の周期を と思い込む。 の周期は だが、絶対値をとると周期は になる。区切り方を間違えると絶対値が外れない。
  • も周期的だと錯覚し、各山の面積が等しいと結論する。 進むごとに 倍に縮む。だからこそ等比数列になり、無限に足しても収束する。