数学III / 関数と極限
分数関数のグラフ
問題
分数関数 の漸近線を求めよ。
ヒントを見る
この形の分数関数は、基本の双曲線 を平行移動したもの。どれだけ動かしたかが読めれば、漸近線も一緒に動くだけ。
解答・解説
方針
の形は、基本の双曲線 を右へ 、上へ 平行移動したもの。漸近線も同じだけ動く。(縦)と (横)。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 漸近線とは、グラフが限りなく近づくが、決して触れない直線のことだ。
この関数の形を見る。
基本の双曲線 に、何が起きているか。
- が に化けた → 右へ 平行移動
- がついた → 上へ 平行移動
の漸近線は と ( 軸と 軸)だった。
グラフごと動かしたのだから、漸近線も同じだけ動く。
「複雑な式を、基本形 平行移動に分解する」 — 次関数の頂点を求めたときと、まったく同じ発想だ。
は、基本形 (漸近線 、)を右へ 、上へ 動かしたもの。漸近線も同じだけ動く。
まとめ:分数関数は「基本の双曲線を平行移動したもの」とみる。 は右に 、 は上に 。漸近線は分母が になる と、動かした先の だ。
発展 — 一歩先へ。 「漸近線には触れない」— これは、いつでも正しいだろうか。
実は、正しくない。
次の関数を見てほしい。
のとき、分母が無限に大きくなるので 。 横の漸近線は ( 軸)である。
だが、このグラフは 軸と何度も交わる。
軸を無限回、横切りながら、それでも 軸に近づいていく。
波打ちながら、振幅がどんどん小さくなる。 グラフを描くと、 軸を軸にして波が減衰していく形になる。
「漸近線に触れない」は、双曲線でたまたま成り立っていただけだった。
漸近線の正しい定義は「触れない直線」ではない。
無限の彼方で、差が に近づく直線である。途中で何回交わろうと、構わない。
この誤解は、教科書の例が双曲線ばかりであることから生まれる。
「よく見る例で成り立つ性質」を「定義」と取り違えない。 数学では、これが決定的に大事だ。
もう つ、面白い漸近線がある。
で だから、 は に近づく。
漸近線が、斜めの直線だ(斜め漸近線)。
縦・横だけが漸近線ではない。 「無限の彼方で差が になる直線」なら、傾いていても漸近線である。
定義に立ち返れば、視野が広がる。 覚えた形だけで判断すると、こういう関数の前で立ち止まってしまう。
漸近線は と
別解
「平行移動」で覚えず、極限で確かめる。
漸近線の定義に、正面から戻る別解である。
漸近線とは何か。
- 縦の漸近線: そこに近づくと、 が に飛ぶ直線
- 横の漸近線: を無限に飛ばしたとき、 が近づく値
この定義を、そのまま計算する。
① 縦の漸近線を探す。
が爆発するのは、分母が になるところだ。
本当に飛ぶか、確かめよう。
を入れると
なら
右から に近づけると、 は へ。
左から近づけると? なら
へ。
が縦の漸近線 ✓
② 横の漸近線を探す。
を無限に飛ばす。
の分母が無限に大きくなるので、この項は に消える。 残るのは だけ。
でも同じだ。
が横の漸近線 ✓
この方法の価値。
平行移動で覚えていると、 のような"分解されていない形"で手が止まる。
極限で攻めれば、どんな形でも同じ手順で漸近線が出る。
- 分母 になる → 縦の漸近線の候補
- の極限値 → 横の漸近線
そして、この方法は「漸近線に触れない理由」も教えてくれる。
は に限りなく近づくが、決して にならない。 だから も に近づくだけで、 ちょうどにはならない。
「近づくが、届かない」 — 極限という考え方そのものが、この 本の直線に表れている。
ポイント
- の漸近線は 、。
- 分母 の が縦の漸近線。
よくある間違い
- を見て、漸近線を としてしまう。分母が になるのは
- を横の漸近線でなく縦の漸近線と取り違える。定数項は上下の移動なので、横の漸近線 に効く
- 「漸近線に近づく」を「いつか交わる」と考える。 は決して にならないので、グラフが に触れることはない