数学II / 式と証明

同じ順序の積の和の不等式

最難関編不等式の証明差の分解

問題

実数 および に対して、不等式

が成り立つことを示せ。また、等号が成り立つのはどのようなときか。

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差をとって展開し、うまく組み直せるか。 — 同じ向きの大小差どうしの積は符号が決まっている。その形の和に書けないか。

解答・解説

方針

左辺から右辺を引いた差を計算すると、 のような「同じ向きの大小の積」の和にまとまる。同じ順序に並んだ2つの差の積は0以上 — それだけで不等式が締まる。等号は3つの積がすべて0になる条件を詰める。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 両辺とも の1次ずつの式だ。差をとれば、 型の項の足し引きになる。

ねらいは、差を「同じ向きに並んだ2つの差の積」の和に組み直すこと。 かつ なら 。この符号の決まった部品だけで組み立てられれば、不等式は自動的に成り立つ。

重要(差はペアの積の和に分解できる)

① 差の分解を確かめる。 ペアの積の和を素直に開く:

一方、左辺−右辺も展開すると

同じ式になった。よって callout の分解は恒等式である。

② 各部品の符号。 より 。同様に 。よって差は0以上で、不等式が成り立つ。

③ 等号の条件。 等号 ⟺ 3つの積がすべて0。 がすべては等しくないとすると だから、 より 。これと から 。よって等号が成り立つのは

のとき(このとき実際に等号が成り立つことは、代入で確かめられる)。

まとめ: 「差を符号の決まった部品に分解する」のが不等式証明の王道だ。同じ順序の積和 が平均どうしの積より大きい、という原理(チェビシェフの和の不等式)の心臓部を、分解1本で取り出した形になっている。

発展 — 一歩先へ。 この不等式は 変数でも成り立つ。「同じ向きに並んだ2つの列の、同順序の積和の平均は、それぞれの平均の積以上」。データの言葉で言えば、正の相関をもつように並べた積の平均は、平均の積を下回らない。統計の共分散の非負性と同じ形をしている。

証明(差がペアの積の和に分解される)。等号は または のとき

別解

並べ替えて3つ足す(得意な人向け)。 ペアの分解に気づかなくても、並べ替えの原理から一撃で出せる。

まず2項の基本を確認する。 のとき

つまり、大きいもの同士を組ませた方が積の和は大きい(同順序が最強)。この原理から、 をどう並べ替えて組ませても

が成り立つ(隣どうしの入れ替えを繰り返せば上の2項の基本に帰着する)。

そこで、3つの巡回的な並べ替えについて書く:

自明な と合わせて3本を足すと、右辺の総和はちょうど

よって 。展開計算を1度もせずに、原理だけで届くルートだ。

ポイント

  • 差 =
  • 同順序の差の積はすべて0以上。
  • 等号は または

よくある間違い

  • 分解の恒等式を検証せずに使う。両辺を展開して同じ式になることまで書いて、初めて答案になる。
  • 等号条件を「 かつ 」としてしまう。3つの積が0になればよいので、片方の組がそろえば十分(または)。
  • 逆順(片方が増加、片方が減少)の場合と混同する。そのときは不等号の向きが逆になる。並びの向きの確認が第一歩。