数学II / 式と証明
相加平均・相乗平均と最小値
問題
のとき、 の最小値を求めよ。また、そのときの の値を求めよ。
ヒントを見る
『正の数の和の最小値』で、しかも つの項をかけると文字が消える — この組み合わせのときに効く、和と積を結ぶ不等式を思い出そう。最小値の候補が出たら、等号が本当に成り立つ があるかの確認まで。
解答・解説
方針
『正の2数の和』の最小値は、相加平均・相乗平均の関係 が効く。 と をかけると が消えて定数になる — だから下限がわかる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 — 足すと大きくなる項と、小さくなる項が、綱引きしている。
を大きくすれば第 項が増え、 を小さくすれば第 項が増える。どこかに、ちょうどよい最小値があるはずだ。
つの正の数の和で、積が定数()— この形を見たら相加平均・相乗平均の関係である。
積が定数だから、 の中身が に依存せず定数になる — これが相加相乗の使いどころだ。
使う前に必ず つ確認する。
- 両方とも正か? ( が条件にある ✓)
- 等号は成立するか? ( となる が範囲内にあるか)
なので 。
正の2数 と に、この関係を使う。
( と をかけると が消えて になるので、右辺が定数 になる。これが下限だ。)
等号が成り立つのは 、つまり 、 より のとき。実際 なら 。
よって
(相加相乗を使うときは『等号が本当に成り立つ があるか』を必ず確認する。等号が成り立たないと、その値は最小値とは言えない。)
発展 — 一歩先へ。 相加相乗の関係は、 個以上でも成り立つ。
一般に 個で
等号は、すべてが等しいとき。
この不等式が語っているのは、深い事実である。
"均等が最適" — これは自然界のあちこちに現れる原理だ。
- 周の長さが決まった長方形で、面積が最大なのは正方形(縦 横)
- 表面積が決まった立体で、体積が最大なのは球(すべての方向に均等)
- 同じ体積を、最小の表面積で包むのも球 — シャボン玉が丸くなる理由だ
の最小値が ( 項が等しくなる点)で実現したのも、この原理の現れである。
「偏りは損をする」。 数学の不等式が、世界の形を決めている — 相加相乗は、その最も基本的な言明なのだ。
のとき最小値
別解
相加相乗を使わずに、平方完成だけで最小値を出す。 じつは、これが相加相乗の証明そのものになっている。
発想: を主役にする。
なので が使える。
この つの 乗の和に、 を逆に使う。
つまり
平方完成の形になった。
乗は必ず 以上だから
最小値は ✓。
等号は、 乗が のとき。
のとき最小値 ✓ — 相加相乗と同じ答えだ。
この式変形が、相加相乗の関係そのものの証明になっている。 一般に、 として
の正体は、 だった。 前問の「 乗は 以上」が、ここでも効いている。
別ルート: 微分で確かめる(数IIの範囲)。
増減を調べると、 の前後で の符号が負から正に変わるので、 で最小。
つのルートが、同じ答えに着いた。
なぜ等号成立の確認が必要なのか。 ここを軽く見ると、痛い目に遭う。
たとえば という条件だったらどうか。相加相乗からは が言えるが、等号成立の は範囲外だ。実際、 では は増加していくので、最小値は のときの — にはならない。
「 が成り立つ」ことと「最小値が である」ことは、まったく別の主張である。 最小値と言うには、その値を実際にとる が存在することを示さねばならない。
不等式を出したら、必ず「等号はいつか」「その値は範囲内か」を問う。 相加相乗の答案が減点される理由の、ほぼすべてがここにある。
ポイント
- 正の2数の和の最小値は、相加平均・相乗平均
- 積が定数になる組( と )を作るのがカギ
- 等号成立する値が存在するか、必ず確認する
よくある間違い
- の条件を確認せずに相加相乗を使う
- 等号成立の確認をせず『最小値』と結論する
- 「 が言えた」ことをそのまま「最小値 」としてしまう(等号をとる が範囲内にあって初めて最小値と言える)