数学II / 三角関数

グラフの平行移動

★ 基礎三角関数のグラフ平行移動

問題

関数 のグラフは、 のグラフをどのように平行移動したものか答えよ。

ヒントを見る

中身が『 正の数 』の形。中身から引くとき、グラフは左右どちらに動くのだったか — 具体的な点(たとえば山の頂上がどこへ行くか)で確かめると間違えない。

解答・解説

方針

に変わると、グラフは 軸方向に 平行移動する(右へ動く)。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 だけ引かれている

引くと、グラフは右へ動く。

「マイナスなのに、右へ?」 — ここが直感に反する。しかし理由は単純だ。

元のグラフ は、 から始まる。

新しいグラフは、いつ から始まるか? カッコの中身が になるときだ。

元の「 での出来事」が、新しいグラフでは「」で起こる — つまり だけ遅れている(右にずれている)。

公式 は、 軸方向に 平行移動したグラフ

中身が なので、。よって 軸方向(横方向)に 、つまり右へ 平行移動したもの。

xyO
y=sinθ(青破線)を右へ π/3 動かした y=sin(θ−π/3)(赤)

発展 — 一歩先へ。 この「横のずれ」を、物理では位相という。そして、位相のずれが世界を変える場面がある。

ノイズキャンセリング・イヤホン。

外の騒音(波)をマイクで拾い、まったく逆の位相の波( だけずらした波)を作って重ねる。

波が打ち消し合って、静寂が生まれる。 「音で音を消す」— 位相の数学が、物理的に音を消しているのだ。

逆に、位相が揃うと波は強め合う。

この「強め合い・弱め合い」を干渉という。

光の干渉が、シャボン玉の虹色を作り、CD の裏面が虹色に光る理由になっている。電波の干渉が、スマホの電波が届いたり届かなかったりする原因になる。

そして、位相はもう つ、決定的な役割を果たす。

は、 ずらしただけ。 つまり は同じ波であり、位相が 違うだけなのだ。

この のずれが、回転を生む。 単位円上の点 が円を描くのは、 方向と 方向の振動が、 ずれているからである( つの振動が同位相なら、点は斜めの直線上を往復するだけだ)。

つの波を、位相をずらして組み合わせると、回転が生まれる。 これが交流モーターが回る原理( 相交流)であり、円運動と単振動が表裏一体である理由だ。

右にずらす」という小さな操作。 その先に、音を消し、光を虹色に染め、モーターを回す物理が広がっている。

軸方向に だけ平行移動

別解

「マイナスなのに右へ動く」という違和感を、完全に解消しておこう。 ここを納得しておかないと、この先ずっと迷い続けることになる。

具体的な点を、 つ追いかける。

元のグラフ の特徴点:

(上昇中) () (下降中)

新しいグラフ で、同じ出来事はいつ起こるか?

「山()」になるのは、カッコの中身が のとき。

元は で山だったのが、新しくは で山。

ちょうど だけ、右にずれた

表にすると、一目瞭然だ。

出来事 元のグラフ 新しいグラフ ずれ
ゼロから上昇
ゼロへ下降

すべての出来事が、 ずつ遅れて起こる。 グラフ全体が右へずれた ✓

直感的な言い方をすると。

」は、「 だけ遅れた時計」を見ているようなものだ。あなたの時計が 遅れていたら、あなたが「 時だ」と思う瞬間は、実際には 時である — 出来事が遅れて起こる 右へずれる。

この規則は、三角関数に限らない。すべての関数で成り立つ。

方向は「逆」、 方向は「そのまま」 — この非対称性が、混乱のもとだ。

なぜ非対称なのか。 実は、 方向も"逆"なのだ。 は、書き直すと

から を引いている と同じく「引いたら正の方向へ動く」。

この形で書けば、 も同じルール( から引いた分だけ右、 から引いた分だけ上)。円の方程式 が中心 を表すのと、まったく同じ理屈だ。

の形にすれば、 だけ動く」 — この統一的な理解を持てば、もう迷わない。

ポイント

  • は右へ は左へ
  • 中身の符号に注意(引き算は右)。

よくある間違い

  • なので左へ移動、と逆に答えてしまう
  • 軸方向の移動と混同する( の中身が変われば横方向)
  • を同じだと思ってしまう(後者は下へ 平行移動)