数学II / 軌跡と領域
領域と最大・最小
問題
点 が連立不等式 、、 の表す領域を動くとき、 の最大値を求めよ。
ヒントを見る
領域をかいてから、 の値が同じ点の集まり(直線)を平行移動させるイメージを持とう。値が最大になるのは、直線が領域のどこに引っかかる瞬間か。頂点で調べれば確実。
解答・解説
方針
とおくと傾き一定の直線。 を大きくすると直線が動く。領域と直線が接する『頂点』で最大になる。頂点の値を全部調べる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「領域内を動く点で、 の最大値」— 線形計画法の問題だ。
発想の核心: とおいて、直線と見る。
傾き の直線で、 が変わると"平行移動"する。 が大きいほど、直線は上へ動く( 切片が だから)。
求めたいのは、「この直線が領域と共有点を持つ範囲で、 を最大にする」こと。
直線を、領域の中で上へ上へと動かしていく。 領域から離れる直前 — その瞬間の が最大値だ。
そして、離れる瞬間に直線が触れているのは、必ず「頂点」である。
領域の頂点は 、、 の つ。 ここを全部調べればよい。
は傾き の直線。 を大きくすると直線は上へ動き、領域からはみ出す直前(=領域の頂点)で最大。
領域は頂点 、、 の三角形。各頂点で を計算する。
一番大きいのは での 。よって最大値は 。
発展 — 一歩先へ。 この解法(直線を平行移動させて、領域との接点を探す)は、目的関数が 次式でなくても使える。
例: 同じ領域で、 の最大値・最小値は?
円を大きくしたり小さくしたりして、領域と接する瞬間を探す。
- 最小: 円を小さくしていくと、原点 で領域に触れる →
- 最大: 円を大きくしていくと、いちばん遠い頂点で領域から離れる → か で
「 定数」の図形を描いて、領域と接する瞬間を探す — これが一般的な戦略だ。
目的関数が変わると、動かす図形も変わる。
| 目的関数 | 「」が表す図形 | 動かし方 |
|---|---|---|
| 直線 | 平行移動 | |
| 円 | 拡大・縮小 | |
| 原点を通る直線 | 回転 | |
| 双曲線 | 拡大・縮小 |
「 の最大」なら、原点から領域内の点へ引いた直線の"傾き"の最大 — 図で考えれば一瞬で分かる。
この「等高線を動かす」という発想は、大学の最適化理論でも中心的な道具である。目的関数の等高線(値が等しい点の集まり)を描き、制約領域と接する点を探す — その接点で、等高線と制約の境界が接するという条件(ラグランジュの未定乗数法)が、最適性の判定条件になる。
高校でやっている「直線を動かす」作業は、その最も簡単な場合なのだ。
図形的な直感が、最適化の理論に直結する。 数式を眺めるだけでなく、「この式が のとき、どんな図形か」と問う習慣を持ちたい。
最大値 (点 のとき)
別解
「頂点を全部調べる」ルートを実行し、そのうえで「なぜ頂点でよいのか」を、直線を動かす絵で確かめよう。
頂点の値を、すべて計算する。
領域は 点 、、 を頂点とする三角形。 の値は
| 頂点 | の値 |
|---|---|
| ← 最大 |
最大値は 、点 でとる ✓
ついでに最小値も分かる。 で だ。
「頂点を全部調べるだけ」 — 微分も、複雑な計算も要らない。 個の値を比べるだけ。
なぜこれで正しいのか。直線を動かして確かめる。
という直線を、 を変えながら動かしてみよう。
- : 直線 は原点を通る。領域と接している(原点で)
- : 直線は少し上へ。頂点 を通り、領域を横切っている
- : 直線は頂点 を通る。領域とギリギリ接している
- : 直線はさらに上へ。もう領域と交わらない
が限界。 これ以上大きくすると、直線は領域から離れてしまう。
そして、その限界の瞬間、直線は頂点 に触れていた。
これが「最適解は頂点にある」ことの、視覚的な証明である。
なぜ頂点なのか。 直線を平行移動させると、領域との共有部分は「面 → 線分 → 点 → 消滅」と減っていく。最後に残る点が、頂点なのだ(領域が多角形なら、角が最後まで残る)。
特別な場合: 辺全体が最大値をとることもある。
もし目的関数が だったら?(傾き )
境界の辺 と平行になる。すると、この辺の上のすべての点で となり、最大値をとる点が無数にある。
それでも「頂点を調べれば見つかる」 — 辺の端の頂点 と も、ちゃんと という最大値をとっている。だから頂点だけ調べれば、最大値そのものは必ず見つかる。
この保証が、線形計画法を実用的にしている。 無限個ある領域内の点を、有限個の頂点に絞り込める — これが決定的なのだ。
答案の書き方。
「直線を動かす」という言葉を、必ず書く。 頂点の値を計算しただけでは、「なぜ最大と言えるのか」の説明になっていない — 論理の筋道を示すのが、答案である。
ポイント
- 領域での1次式の最大最小は頂点でとる。
- を動かして、領域に触れる最後の頂点をさがす。
よくある間違い
- 頂点を全部調べず、目についた1つだけで答えてしまう
- とおいたとき、 が大きいほど直線が上に動くことを意識せず、逆の頂点を選ぶ
- 領域の頂点を求め間違える( なので、頂点は と )