数学II / 軌跡と領域

3つの不等式の領域

★ 基礎領域連立不等式

問題

連立不等式 の表す領域を図示せよ。また、この領域は何という図形か答えよ。

ヒントを見る

つの不等式を つずつ境界線にして、順に領域を狭めていく。最後に残った形の頂点を全部求めれば、何という図形かも答えられる。

解答・解説

方針

軸の右、 軸の上、 は直線 の下側。3つの共通部分は三角形になる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 本の不等式 — 本ずつ読んで、共通部分を取る

  • : 軸の右側(境界を含む)
  • : 軸の上側(境界を含む)

この つで、すでに「第 象限(の周を含む部分)」に絞られた。

  • : 直線 下側(原点側)

この直線は、 を通る( 切片と 切片を打てば、すぐ引ける)。

つの共通部分は、 を頂点とする三角形(周を含む)になる。

本の直線が、領域を三方から囲い込んだ。 制約が増えるほど、領域は狭く、そして閉じていく。

重要連立不等式の領域は共通部分。境界の直線で囲まれた図形になる
  • : 軸より右(軸を含む)
  • : 軸より上(軸を含む)
  • :直線 の下側(直線を含む)

3つを同時に満たすのは、頂点が 三角形の周および内部。

xyO(3,0)(0,3)
3つの境界で囲まれた三角形

発展 — 一歩先へ。 この三角形は、現実の問題では「実行可能領域」と呼ばれる。

具体例で見てみよう。

時間かかる製品 A と、 時間かかる製品 B を作る。作業時間は 時間まで。製品の個数は 個以上。」

  • : 製品 A の個数 →
  • : 製品 B の個数 →
  • 時間の制約 →

まさに、この三角形が「作れる組み合わせ」の全体である。

現実の問題では、制約はもっと多い。

  • 材料の制約:
  • 予算の制約:
  • 需要の上限:

制約が 本あれば、 角形(あるいはもっと複雑な多面体)になる。

変数も 個とは限らない。 製品が 種類あれば、 次元空間の多面体だ — もう図には描けない。

それでも「最適解は頂点にある」という原理は生きている。

問題は、頂点の個数だ。 高次元の多面体は、頂点が天文学的な数になりうる( 変数・ 制約なら、理論上は 個以上)。全部調べるのは不可能。

そこで開発されたのが「単体法(シンプレックス法)」( 年、ダンツィーグ)。すべての頂点を調べるのではなく、「隣の頂点で、値がよくなるほうへ」と渡り歩くアルゴリズムだ。

驚くべきことに、この方法は実用上きわめて速い。 個の頂点があっても、たいてい数十回の移動で最適解に着く。

現代の物流・生産計画・金融は、この方法の上に成り立っている。 世紀で最も重要なアルゴリズムの つ」と呼ばれるゆえんだ。

本の不等式で三角形を描く作業。 その先に、世界を動かす最適化の技術がある。

3点 を頂点とする三角形の周および内部

別解

「頂点」を正しく求めることが、この先(最大最小)への鍵になる。 頂点の出し方を確実にし、領域の性質も確かめておこう。

頂点の求め方: 境界線を 本ずつ連立する。

本の境界線は

本ずつ組み合わせて、交点を求める。

  • :
  • :
  • :

つの頂点が出た。

注意: 交点が必ず頂点になるとは限らない。 求めた交点が、他のすべての不等式を満たすかを確認する必要がある。

たとえば、もし ではなく のような条件が混じっていたら、 を満たさないので頂点にならない(領域外)。

今回は 点とも、すべての不等式を満たす。

  • : ✓、 ✓、
  • : ✓、 ✓、
  • : ✓ ✓ ✓

点とも本物の頂点。 三角形が確定した。

この領域の性質を、 つ確認しておこう。

性質1: 有界である。 領域が無限に広がっていない(有限の範囲に収まっている)。 本目の が"ふた"をしたからだ。もしこれがなければ、第 象限全体という無限の領域になっていた。

性質2: 凸である。 次不等式の共通部分なので、必ず凸(問題6の発展で見た通り)。三角形は確かに凸だ。

性質3: 面積が計算できる。

底辺 、高さ の直角三角形。

「有界かつ凸」— この つが揃うと、最適化がうまくいく。

これが、次の問題(領域と最大最小)の理論的な根拠になる。

なぜ頂点なのか、直感的に説明しよう。 次式 の値は、直線を平行移動させると連続的に変わる。領域内で を大きくしていくと、直線はだんだん領域から出ていく — その最後の瞬間、直線は必ず「角(頂点)」に触れている

辺に沿って触れる場合もある(そのときは辺全体が最大値をとる)が、そのときも端の頂点は最大値をとっている — だから「頂点だけ調べれば十分」なのだ。

この単純な原理が、線形計画法という巨大な応用分野を支えている。 頂点は有限個しかないから、全部調べれば必ず最適解が見つかる。

ポイント

  • かつ で第1象限に限定。
  • さらに斜めの直線で切ると三角形になる。

よくある間違い

  • を見落として、直線 の下側全体を塗ってしまう
  • の境界線を、 を通る直線だと気づかず、正確に引けない
  • 求めた交点が他の不等式を満たすか確認せず、領域外の点を頂点にしてしまう