数学II / 軌跡と領域
円ではさまれた領域
問題
不等式 の表す領域を図示せよ。
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不等式が つ重なった形。内側の円と外側の円、それぞれの条件を『中心からの距離』の言葉で読むと、どんな形の領域か見えてくる。
解答・解説
方針
は半径1の円の外部、 は半径2の円の内部。両方を満たすのは、2つの円にはさまれたドーナツ形。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 — これは つの不等式を、まとめて書いたものだ。
本ずつ読む。
- → 半径 の円の外側
- → 半径 の円の内側
この つの共通部分。
「原点からの距離が より大きく、 より小さい点の集まり」 — つまりドーナツ形(円環)である。
両方とも等号がないので、内側の円周も外側の円周も含まない(どちらも破線)。
距離の言葉に翻訳すれば、答えは一目で見える。
は半径 の円の外部、 は半径 の円の内部。
両方を満たすのは、中心からの距離が と の間、つまり2つの円にはさまれたドーナツ形の部分。
等号がない()ので、2つの境界の円はどちらも含まない(破線)。
発展 — 一歩先へ。 この円環の面積を求めてみよう。
ここで、大事なことに気づいてほしい。境界を含むかどうかは、面積に影響しない。
(境界を含まない)でも、(境界を含む)でも、面積はどちらも である。
なぜか。円周は「面積 」だから。
線には幅がない。 どんなに長い線を集めても、面積は のままだ。だから境界を足しても引いても、面積は変わらない。
これは意外に深い事実である。 「点は大きさ 」「線は面積 」「面は体積 」— つ下の次元のものは、上の次元では"無視できる"。
この考え方が、積分の基礎になっている。 定積分 で、区間の端点を含めても含めなくても値は同じ — 端点は「幅 」だからだ。
しかし、油断は禁物。 「面積 の集合をいくら集めても面積 」は、有限個や可算無限個なら正しいが、非可算無限個になると崩れる(実際、円板は「面積 の線」を非可算無限本集めたものだ)。
この微妙さを厳密に扱うために、 世紀に「測度論」という理論が作られた。 「面積とは何か」「長さとは何か」を、根本から定義し直す理論だ。
「境界を含むか含まないか」という、答案の些細な注記。 その背後に、 年前の数学者たちが格闘した問いが横たわっている。
半径1の円の外側かつ半径2の円の内側(ドーナツ形、境界を含まない)
別解
この領域は、これまでと決定的に違う性質を持っている。 そこに気づくと、図形の理解が一段深まる。
まず、代入判定で確かめる。
点 : 。 ✓ 領域内
点 : 。 ? → 偽 → 領域外(内側の円の中)
点 : 。 ? → 偽 → 領域外(外側の円の外)
点 : 。 ? → 偽 → 領域外(境界上なので含まない)
穴あきの輪(ドーナツ) の形が、 つの点で確認できた。
さて、この領域の"新しさ"は何か。
これまでの領域(円板・くさび形・帯)は、すべて「凸」だった。 領域内の 点を結ぶ線分が、必ず領域内に収まっていた。
しかし、ドーナツは凸ではない。
点 と点 — どちらも領域内だ。しかし、この 点を結ぶ線分は、原点を通る — そして原点は穴の中、つまり領域外である。
これが「凸でない」ということ。
穴が開いている図形は、凸になれない。 ドーナツ、三日月、星形 — どれも「へこみ」や「穴」を持つ。
なぜこの区別が大事なのか。
凸な領域では、 次式の最大最小が「頂点」で決まる(問題12)。しかし凸でない領域では、この便利な性質が失われる。最大値を探すのに、領域全体をくまなく調べなければならない。
「凸か、凸でないか」は、問題の難しさを決定的に左右する。
さらに、この領域には「穴」がある。 数学では、図形の穴の個数を位相的な性質として扱う。
- 円板: 穴 個
- ドーナツ(円環): 穴 個
- の字: 穴 個
穴の個数は、図形をどんなに変形しても(切ったり貼ったりしなければ)変わらない — この「変形しても変わらない性質」を研究するのがトポロジー(位相幾何学)だ。
有名な言い回し。「トポロジー学者は、コーヒーカップとドーナツを区別できない」 — どちらも穴が つで、粘土のように連続的に変形すれば移り合うからだ。
という不等式に色を塗る作業が、 つの深い概念(凸性と位相)に触れている。 単純な図形ほど、豊かな性質を持っている。
ポイント
- 2つの円の連立は、内側・外側の共通部分(円環)。
- 境界を含むかは各不等号の等号の有無で判断。
よくある間違い
- 半径を と としてしまう(右辺は なので半径は と )
- 内側の円の内部まで塗ってしまう(穴が開いたドーナツ形)
- 2つの境界のどちらか一方だけを破線にする(どちらも等号なしなので、両方とも破線)