数学II / 軌跡と領域
直線の表す領域
問題
不等式 の表す領域を図示せよ。
ヒントを見る
境界の直線をまず引く。不等号がどちら側を指すかは、試しに 点(原点など)を入れて確かめるのが確実。境界を含むかどうかも答えの一部。
解答・解説
方針
まず境界の直線 をかく。 なら直線より上側、 なら下側。等号がないので境界は含まず、破線でかく。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 不等式の領域は、まず境界線を引くところから始まる。
境界は、不等号を等号に変えた式。
この直線が、平面を上下 つに分ける。 あとは「どちら側か」を決めるだけだ。
は「 が、直線の高さより大きい」 — つまり直線より上側。
について解けている不等式は、そのまま読める。
- → 上側
- → 下側
境界を含むかどうかは、不等号で決まる。
- 、(等号なし)→ 境界は含まない(破線で描く)
- 、(等号あり)→ 境界を含む(実線で描く)
破線か実線か — 答案では必ず描き分ける。
境界は直線 。不等号が なので、直線より上側が領域。
等号がついていない()ので、境界の直線は領域に含まない(図では破線)。
発展 — 一歩先へ。 「不等式が領域を表す」という考え方は、最適化という巨大な応用分野の入り口である。
現実の問題は、たいてい「制約」と「目的」でできている。
- 制約(不等式): 予算は 万円以内、労働時間は 時間以内、材料は kg まで
- 目的(最大化・最小化): 利益を最大にしたい、コストを最小にしたい
制約を満たす点の集まりが「領域」(実行可能領域)、目的を表す式が「目的関数」。
この形の問題を「線形計画問題」といい、第二次世界大戦中に軍需物資の輸送計画を立てるために本格的に研究された。 現在では
- 工場の生産計画(どの製品を何個作るか)
- 航空会社の乗務員スケジュール
- 物流の配送ルート
- 食事の栄養バランス(最小コストで必要な栄養を満たす献立)
あらゆる場面で、毎日、コンピュータが解いている。
変数が 個なら、平面に領域を描いて目で見られる(この単元でやっていること)。しかし現実の問題では変数が数千・数万個あり、領域は超高次元の多面体になる。もう図は描けない。
それでも解ける。 「最適解は必ず頂点にある」という原理(問題12で学ぶ)を使い、頂点を効率よく渡り歩くアルゴリズム(単体法)が開発されたからだ。
という単純な不等式に色を塗る作業。 その延長線上に、世界の物流とスケジュールを最適化する技術が立っている。
直線 の上側(境界を含まない)
別解
「上か下か」を、 秒で確実に判定する方法がある。 テスト点を つ代入するだけだ。この技は、 について解けない複雑な不等式でも通用する。
代入判定法。
手順1: 境界線 上にない点を、 つ選ぶ。
いちばん楽なのは原点 。(境界が原点を通らないなら、これが最速。)
手順2: 不等式に代入して、成り立つか調べる。
正しい。
手順3: 結論。
「原点を含む側」が、求める領域である。 原点は直線 ( 切片 )の上側にあるので、答えは直線の上側 ✓。
なぜこれでよいのか。 境界線は平面を つの領域に分ける。同じ領域内の点は、すべて同じ判定結果になる(不等式の符号が変わるには、必ず境界を横切らねばならない)。だから代表 点で全体が決まる。
この方法の強みは、 について解けなくても使えることだ。
例: の表す領域は?
について解くのは面倒(平方完成が要る)。しかし原点を代入すれば一瞬。
原点は領域に含まれない。 この式は円 を表すので(中心 、半径 )、原点は円の内部にある。原点が含まれない → 領域は円の外部である。
行で決着した。
注意点が つ。
つ目: 境界線上の点をテスト点にしてはいけない。 等号が成り立ってしまい、どちらの側か判定できない。
つ目: 境界が原点を通るときは、別の点を選ぶ。 なら、原点は境界上なので使えない — 代わりに を使えばよい( ✓ → その側)。
「代入 回で領域が決まる」 — この手軽さは、連立不等式(次の問題)で真価を発揮する。 本、 本の不等式があっても、テスト点を つ決めて全部に代入すれば、その点を含む領域かどうかが一発で分かる。
ポイント
- は上側、 は下側。
- / は境界を含まない(破線)、/ は含む(実線)。
よくある間違い
- 上側と下側を取り違える( なら上側)
- 境界を含むかどうか(実線か破線か)を描き分けない
- の係数が負の不等式(例: )で、 について解くとき不等号の向きを変え忘れる