数学II / 複素数と方程式
解と係数と対称式
問題
2次方程式 の2つの解を 、 とするとき、 の値を求めよ。
ヒントを見る
、 を個別に求めるのは遠回り(虚数になる)。 を、和 と積 だけで表す変形を思い出そう。和と積は係数から読める。
解答・解説
方針
解と係数の関係で 、 を出し、 の対称式で組み立てる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 、 を実際に求めると — これを 乗して足すのは、かなり面倒だ。
しかし、 は対称式である。 と を入れかえても、式の形が変わらない。
対称式は、必ず「和」と「積」だけで表せる。 これが決定的な事実だ。
( を展開すると — 余分な を引けばよい。
解と係数の関係から 、。
解を求めずに答えが出た。 無理数の 乗を計算する必要は、まったくない。
より 、。
は、和と積で表せる対称式だ。
(解を求めずに、和と積だけで対称式の値が出る。数と式で学んだ対称式がここでも生きる。)
発展 — 一歩先へ。 対称式のべき乗和()には、漸化式という強力な計算法がある。
と置く。、 は の解だから
両辺に 、 を掛けて足すと
項間漸化式が出た。 、 から始めて
でさえ、足し算と掛け算だけで出せる。 展開公式を覚える必要はない。
しかも、驚くべきことに気づく。 、 は無理数()なのに、 はすべて整数()だ。
漸化式が整数係数だから、整数から始めれば整数のままである。無理数の 乗の和が整数になる — 個々の項の が、必ず打ち消し合っているのだ。
ちなみに、 は黄金比 の 乗()である。だから の列 は、フィボナッチ数列と兄弟関係にある(リュカ数列の偶数番目)。
次方程式の解の対称式 → 漸化式 → フィボナッチ — 単元の壁を越えて、数学はつながっている。
別解
本当に解いて、力ずくで計算してみる。 手間を体感すれば、対称式の技のありがたみが身にしみる。そして、この技がどこまで伸びるかを見よう。
力ずくルート: 実際に解く。
乗する。
足す。
同じ答え。しかし手間は 倍だ。 の項が最後にきれいに消えるのを見て、「最初から消えると分かっていたのに」と思わないだろうか。
対称式の技は、この"消えることが分かっている計算"を、丸ごと省略する。
そして、この技はどこまでも伸びる。
乗の和も出せる。
逆数の和も出せる。
差の 乗も出せる。
(これは判別式そのものだ! ✓ — 判別式は「 解の差の 乗」だった。だから なら 、つまり重解になる。)
すべて、和 と積 だけから出ている。 解の値()は 度も使っていない。
これが「対称式の基本定理」の力である。
個々の解がどんなに汚くても(無理数でも虚数でも)、対称式なら必ずきれいな値になる。 なぜなら、和と積は係数から読めて、係数は最初からきれいな数だからだ。
この単元でやっていることの核心は、こういうことだ。
「 つ つの解を追いかけるより、解の"全体"が持つ性質を見るほうが、はるかに簡単なことがある。」
と を個別に見れば という厄介者だが、 つセットで見れば「和 、積 」という美しい素顔を見せる — 見方を変えると、難しさが消える。
ポイント
- 解と係数で和・積を出してから対称式へ
- 解そのものを求める必要はない
よくある間違い
- の を引き忘れる
- 解を無理に求めて計算が複雑になる
- としてしまう(展開すると が余分に出る)