数学II / 複素数と方程式
共役複素数
問題
とする。次の値を求めよ。
(1)
(2)
ヒントを見る
共役とは の符号だけを変えた相棒。まず を書き、和と積をそれぞれ計算してみよう。どちらも が消えて実数になるのが、このペアの持ち味。
解答・解説
方針
共役 は虚部の符号を変えたもの。、 はどちらも実数になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 共役複素数 とは、虚部の符号だけを反転させたもの。
実部はそのまま、虚部だけひっくり返す。
(1) 足すと、虚部が打ち消し合う。
が消えて実数になった。 これは偶然ではなく、 — いつでも実数だ。
(2) 掛けても、実数になる。
和と差の積の形()で計算するのが速い。 に注意。
と は別物だ。 で、複素数のまま。共役を掛けるから、実数になる。
の共役は 。
(1) 。
(2) 。
(共役どうしの和・積は、いつも実数になる。 は でもある。)
発展 — 一歩先へ。 共役をとる操作()は、四則演算と完全に交換するという、驚くべき性質を持つ。
「先に計算してから共役をとる」と「先に共役をとってから計算する」が、同じ結果になる。
この性質のおかげで、方程式の解の共役も、また解になることが証明できる。実数係数の方程式 で、 の係数が実数なら
(係数は実数なので、共役をとっても変わらない。)だから
が解なら、 も解。 前問で見た「虚数解はペアで現れる」が、 行で証明された。
共役は、複素数平面の"鏡映"である。 実軸を鏡にして、上下をひっくり返す操作だ。
「鏡に映しても、方程式は同じ形をしている」 — 係数が実数であるということの、幾何的な意味である。実数だけで書かれた世界は、上下対称なのだ。
対称性が、解の構造を決める。 この視点は、大学で学ぶガロア理論(方程式が解けるかどうかを、解の対称性で判定する理論)へまっすぐ続いている。 次以上の方程式に解の公式がないという有名な定理も、この道の先にある。
(1) (2)
別解
文字で一般化すると、この つの値の"正体"が見えてくる。 そして、それがこの後の学習(解と係数の関係、 次方程式の虚数解)に直結する。
(、 は実数)として計算する。
和。
積。
積は、絶対値の 乗になる。 なら ✓ — 三平方の定理の形だ。
この つは、必ず実数になる。 だから「複素数を実数に変える装置」として使える。分母の実数化で共役を掛けたのは、まさにこの性質を利用していた。
そして、ここからが本題だ。この 数には、隠れた意味がある。
和 、積 — この つを見て、何か思い出さないだろうか。
解と係数の関係だ。 と を 解とする 次方程式は
係数がすべて実数になっている!
確かめる。 この方程式を解くと
元の と が出てきた。
ここに重要な原理がある。
虚数解は、必ずペアで現れる。 片方だけ、ということはありえない。理由はこの計算が示している — 共役どうしの和と積は実数だから、係数が実数になれるのだ。
この事実は、 次以上でも成り立つ。 実数係数の方程式が を解に持てば、 も必ず解である。だから
- 次方程式(実数係数)は、必ず実数解を つ以上持つ(虚数解は 個ずつペアで現れるので、 個全部が虚数にはなれない)
共役という単純な操作が、方程式の解の構造を支配している。 と を計算するこの問題は、その入り口に立っているのだ。
ポイント
- 共役 は虚部の符号を反転
- 、 はともに実数
- (絶対値の2乗)
よくある間違い
- を と計算する(共役をかける)
- の符号処理を誤る
- 共役をとるとき実部の符号まで変えてしまう(変えるのは虚部だけ)