数学II / 複素数と方程式
複素数の除法(分母の実数化)
問題
を (、 は実数)の形にせよ。
ヒントを見る
分母に が残っているのが問題。分母を実数に変えるために、分母・分子に同じものをかける定番の一手がある。何をかければ分母から が消えるだろう。
解答・解説
方針
分母の共役複素数を、分母・分子にかける。すると分母が実数になり、 の形にできる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 分母に が残っていると「計算した」ことにならない。分母を実数にするのが目標だ。
手は つ。分母の共役複素数を、分子と分母の両方に掛ける。
なぜ共役を掛けるのか。 分母がこうなるからだ。
が消えて、実数 になった。 和と差の積 の形で、 が効いている。
としてはいけない。 は なので、引くと足し算になる。
分子は普通に展開して 。
分母 の共役 を、分母・分子にかける。
発展 — 一歩先へ。 「割り算ができる」ということは、実は当たり前ではない。
複素数の世界では、 以外のどんな数でも割ることができる。 なら
と、必ず逆数が作れるからだ( は正の実数なので、割れる)。
この性質を持つ数の世界を「体(たい)」という。 有理数、実数、複素数は、どれも体だ。
では、 次元の数(空間ベクトルのようなもの)で、掛け算と割り算ができる世界は作れるか?
答えは 「ノー」。 次元では、うまい掛け算が定義できない。しかし 次元なら可能で、それを四元数という( 年、ハミルトンが発見した)。ただし、掛け算の順序を入れかえると答えが変わる()という代償を払う。
次元にも「八元数」があるが、今度は結合法則()まで壊れる。そして 次元以上では、もう何も作れないことが証明されている。
掛け算と割り算ができる数の世界は、、、、 次元しかない。
次元(複素数)は、性質を何も失わずに済む、最後の楽園なのだ。だからこそ複素数は、これほど美しく、これほど広く使われる。
という単純な割り算ができること — それ自体が、数学の奇跡の一部である。
別解
この計算は、中学で習った「分母の有理化」とまったく同じ構造をしている。そう気づくと、共役を掛ける理由が腑に落ちる。そして掛け戻しの検算を習慣にしたい。
有理化との対応を見る。
| 分母の有理化 | 分母の実数化 | |
|---|---|---|
| 例 | ||
| 掛けるもの | (符号を反転) | (符号を反転) |
| 使う公式 | ||
| 効果 | が消える | が消える |
| 消える理由 | (有理数) | (実数) |
まったく同じである。「 乗すると、目障りなものが消える」— これが共役を掛ける理由だ。
を消したいなら を使う。 を消したいなら を使う。どちらも「和と差の積」で 乗を作り出している。
唯一の違いは符号。 に対し、。 が負なので、引くと増える — この一点だけ気をつければよい。
そして検算。答えに分母を掛け戻す。
元の分子 に戻った。 割り算をしたら掛け戻す — 分数の計算の鉄則である。
絶対値でも検算できる。 割り算では絶対値も割り算される。
答えの絶対値は ✓
一致した。
もっと高い視点から。 数Cで複素数平面を学ぶと、複素数の割り算は「絶対値を割り、偏角を引く」操作だと分かる。
掛け算は回転と拡大、割り算は逆回転と縮小。 共役を掛けて分母を実数化する計算は、この幾何的な意味の「代数的な影」なのだ。
つの見方 — 代数(共役を掛ける)と幾何(回転と拡大) — を持つと、複素数がぐっと身近になる。
ポイント
- 分母の共役をかけると分母が実数になる
- 最後に の形に分ける
よくある間違い
- 分子だけ、分母だけに共役をかける(両方に)
- を などと誤る
- 共役の符号を間違える( の共役は 。実部はそのまま、虚部の符号だけ反転)