数学II / 複素数と方程式

複素数の四則(和・積)

★ 基礎複素数の計算

問題

次の計算をせよ。

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ヒントを見る

もふつうの文字のつもりで展開してよい。ただし が現れた瞬間だけ実数に置きかわる — そこだけ特別扱い。最後は実数の部分と の部分に整理する。

解答・解説

方針

をふつうの文字のように扱って計算し、 が出たら に置きかえる。最後に『実部 虚部 』の形にまとめる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 複素数の計算は、 を普通の文字だと思って計算し、最後に を使う — これだけだ。

新しい計算法則を覚える必要はない。中学でやった文字式の計算そのものである。

(1) 足し算: 実部どうし、虚部どうしを足す( を足すのと同じ)。

(2) 掛け算: 分配法則で展開する。ここで が出てくる

のせいで、符号が反転する — ここが唯一の関門だ。 としてしまうと、答えがずれる。

(3) も同じ。

を見たら に置きかえる — 呪文のように唱えながら計算する。

公式

(1) 実部どうし・虚部どうしを足す。

(2) 展開して を使う。

(3) の展開。

発展 — 一歩先へ。 なぜ人類は、こんな「ありえない数」を作ったのか。

きっかけは 次方程式ではなく、 次方程式だった。 世紀のイタリアで、 次方程式の解の公式が発見されたとき、奇妙なことが起きた。

この方程式は という実数解を持つ(代入すれば ✓)。ところが解の公式に当てはめると、途中で が現れる

「実数の答えを出すために、途中で"存在しない数"を通らねばならない。」

数学者たちは困惑した。しかし計算を続けると、虚数の部分がきれいに打ち消し合い、最後には という正しい答えが出てくるのだ。

「存在しない数」を経由すると、正しい答えにたどり着く。 この不気味な経験が、複素数を受け入れる決定的なきっかけになった。

名前が示す偏見。 「虚数(imaginary)」という名は、当時の「こんなものは想像上の産物だ」という不信感の名残である。「実数(real)」と対にされ、 級市民の扱いを受けていた。

しかし今日、複素数は物理学の基礎言語だ。量子力学の波動関数は複素数値で、電気回路の交流計算も複素数なしには成り立たない。現実を記述するのに、虚数が要る。

「役に立つから正しい」のではなく、「使ってみたら世界が説明できてしまった」 — 数学と現実の、不思議な共鳴である。

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別解

複素数の計算には、強力な検算法がある。 「絶対値」を使う方法だ。これを知っていると、掛け算のミスがその場で見つかる。

複素数の絶対値とは。 に対して

複素数を座標平面の点 と見たときの、原点からの距離である(数Cの複素数平面で詳しく学ぶ)。

そして、驚くべき性質がある。

「積の絶対値は、絶対値の積」。 掛け算をすると、距離も掛け算される。

(2)の検算に使う。

積の絶対値は、この つを掛けたものでなければならない。

答え の絶対値を計算してみる。

ぴったり一致した。 もし計算を間違えて などとしていたら、絶対値が合わなくなる — 一発でミスが露見する。

なぜこの性質が成り立つのか。 として、実際に計算してみると

という恒等式に行き着く。これはブラーマグプタ・フィボナッチの恒等式と呼ばれ、「 つの平方和の積は、また平方和になる」という整数論の有名な事実だ。

の積が、 になった — 複素数の掛け算が、そのまま整数の等式を生んでいる。

複素数は「計算のための便宜的な記号」ではない。 次元の量( の組)を、 つの数として掛け算できるようにした発明なのだ。だから絶対値(距離)や、この後で学ぶ回転と、深く結びついている。

検算としての使い方をまとめる。 複素数の掛け算をしたら、両辺の絶対値の 乗()を比べる

秒で、掛け算全体の正しさが確認できる。

ポイント

  • は文字のように計算し、
  • 答えは『実部 虚部 』の形にまとめる
  • のように符号に注意

よくある間違い

  • としてしまう( が正しい)
  • 実部と虚部を混ぜてまとめられない
  • の符号反転を見落とす(マイナス×マイナスで正に戻る)