数学I / 図形と計量
測量への応用(2地点からの測角と仰角)
問題
水平な地面の上に塔がまっすぐに立っている。地面上の2地点 は 離れており、塔の真下の地点 に対して
である。また、地点 から塔の先端を見上げた仰角は であった。塔の高さを求めよ。ただし、目の高さは考えないものとする。
ヒントを見る
空間だが、平面2枚に分ければ易しい — 地面の三角形と、鉛直に立つ直角三角形。地面の三角形である線分の長さを出し、それを鉛直面へ持ちこむ。2枚をつなぐ蝶番はどの線分?
解答・解説
方針
空間の測量と聞くと難しく感じるが、実際は『地面の三角形』と『鉛直に立つ直角三角形』という2枚の平面に分ければ、それぞれはただの平面問題だ。
段取り。まず地面の で内角の和から を出し、正弦定理で を求める(2角1辺 → 正弦定理、の型)。次に塔を含む鉛直面に乗りかえ、仰角 と で高さへ。
2枚の平面をつなぐ蝶番が線分 。1枚目の答えが2枚目の入力になる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 空間の測量は 枚の平面に分解する。「地面の三角形」と「鉛直の直角三角形」だ。
各平面に落とせば、ただの既習問題になる。
地面で正弦定理を使って を出す。それを鉛直三角形の底辺として、高さへつなぐ。
枚の平面を「共有する辺 」で接続する。この設計図を最初に描く。
まず地面の三角形で AC を求める。
まずは地面だけを真上から見る。塔のことはいったん忘れていい。 の内角の和より
2つの角と1辺がわかっている(そして求めたい の対角 、既知の辺 の対角 とペアがそろう)ので、正弦定理の出番だ。
次に鉛直の直角三角形で高さを求める。
ここで視点を切りかえる。今度は と塔を含む鉛直な平面を、真横から見る。塔の先端を 、高さを とすると、塔は地面に垂直なので は の直角三角形で、 での仰角が だ。高さと水平距離を結ぶのは だから
( より約 だ。)
振り返り。 実際の測量もこの手順そのものだ。地上で2地点間の距離と角を測り(手順1)、仰角から高さを計算する(手順2)。直接登れない塔の高さが、巻尺と分度器だけで求まる。正弦定理と三角比が『測れないものを測る』道具であることを実感できる問題だ。空間図形はいつでも『どの平面を見るか』の宣言から始めること。
発展 — 一歩先へ。 正弦定理の比 の値は、じつは地面の三角形 の外接円の直径 に等しい。
いまは だから、地面の三角形の外接円の半径は 。 つの辺 はすべて、この同じ外接円を通して角と結びついている。だから一辺と二角が分かれば、残りの辺が芋づる式に出る。
空間の測量は「水平面で位置を、鉛直面で高さを」という二段構えが骨格だ。測る角や距離の組み合わせは何通りもあり、どの組から入っても同じ塔にたどり着く。この柔軟さが、直接は登れない高さを測れる理由になっている。
(約 )
別解
別解 — 垂線を下ろして直角三角形だけで を出すルート(正弦定理を使わない)。 地面の で、 から辺 に垂線を下ろし、足を とする。、 はどちらも鋭角なので、 は と のあいだにある。
直角三角形 で 、。直角三角形 で 。
だから
ここで 、 を入れると、カッコの中はきれいに にまとまる。よって 。
あとは鉛直の直角三角形で 。正弦定理で を出す本解と、同じ答えに届く。
ポイント
- 空間の測量は「水平面の三角形(正弦定理)」+「鉛直面の直角三角形()」に分解する
- 水平面では2角と1辺 → 正弦定理、鉛直面では仰角 → が定番の組み合わせ
- のような根号計算を正確に
よくある間違い
- に対応する対角を でなく ととり、正弦定理の辺と角の対応を崩す。
- 地面の三角形と鉛直の三角形を一枚に描こうとして、どの角が仰角かを見失い手が止まる。
- 仰角の を でなく底辺 に掛けてしまい、高さを誤る。