数学I / 集合と命題
「すべて」と「ある」の否定
問題
次の問いに答えよ。
(1) 命題「すべての実数 について 」の否定を述べよ。また、もとの命題とその否定のどちらが真か、理由をつけて答えよ。
(2) 命題「ある自然数 について 」の否定を述べよ。また、もとの命題とその否定のどちらが真か、理由をつけて答えよ。
(3) 実数 に関する条件「 かつ 」の否定を述べよ。
ヒントを見る
『すべて』の否定は『ある』、『ある』の否定は『すべて』。中身も否定する(→ など)。どちらが真かは、簡単な例を1つ試して判断( を入れてみる等)。
解答・解説
方針
『すべて』と『ある』の否定は、入れかわる。
・『すべての で 』の否定 → 『ある で でない』 ・『ある で 』の否定 → 『すべての で でない』
そして『かつ』と『または』も、否定で入れかわる(ド・モルガン)。『 かつ 』の否定 → 『 でない または でない』。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 否定のルールは 組。否定をとると、ペアの相手に入れかわる。
- 「すべての で 」の否定 → 「ある で でない」
- 「ある で 」の否定 → 「すべての で でない」
- 「 かつ 」の否定 → 「 でない または でない」(ド・モルガン)
「すべて ↔ ある」「かつ ↔ または」— どちらも否定で入れかわる。この対応を機械的に適用するのが第一手だ。
(1) 『すべての実数 について 』の否定は、『すべて』を『ある』にして中身を否定する。
否定:『ある実数 について 』
どちらが真か。 のとき で、 は成り立たない。つまり例外があるので、もとの命題は偽。否定のほうが真( が『 を満たす 』の例)。
(2) 『ある自然数 について 』の否定は、『ある』を『すべて』にして中身を否定する。
否定:『すべての自然数 について 』
どちらが真か。 のとき になる。つまり『 となる がある』ので、もとの命題が真。もとの命題のほうが真(否定は偽)。
(3) 『 かつ 』の否定。『かつ』は『または』に変わり、それぞれの中身を否定する。 の否定は 、 の否定は 。
否定:『 または 』
まとめ:『すべて⇔ある』『かつ⇔または』、そして中身の否定(不等号の向きが変わる)。この3つがセットで入れかわる、と覚えよう。
発展 — 一歩先へ。 不等号の否定にも注意が要る。 の否定は ではなく — 「 より大きくない」とは「 以下」だ。等号が反対側に移る。(3)の答え「 または 」で、両方の等号が入っているのはこのためである。
この 組の入れかわり(すべて ↔ ある、かつ ↔ または)は、実は つの原理の現れだ。「すべて」は「かつ」の無限版( でも成り立ち、かつ でも…)、「ある」は「または」の無限版 — ド・モルガンの法則を無限個に拡張したものが、量化子の否定の規則である。集合・命題・論理が、 つの構造でつながっている。
(1) 否定:「ある実数 について 」。 のとき となるから、否定の方が真(もとの命題は偽) (2) 否定:「すべての自然数 について 」。 のとき となるから、もとの命題の方が真(否定は偽) (3) 「 または 」
別解
「すべて」と「ある」の否定が入れかわる理由を、日常の会話で確かめておこう。
「このクラスの生徒は全員眼鏡をかけている」
これを否定するには、どう言えばよいか。「全員かけていない」では行き過ぎだ。眼鏡をかけていない生徒が 人でもいれば、もとの主張は崩れる。
正しい否定は「眼鏡をかけていない生徒が 人はいる」。つまり「すべて」の否定は「ある( つでも存在する)」だ。
逆も同じだ。「 人でも眼鏡の生徒がいる」を否定するなら、「 人もいない」= 「全員が眼鏡でない」— 「ある」の否定は「すべて」になる。
この感覚は反例の考え方と同じだ。「すべての で 」を崩すには反例 つ()で足りる — 反例 つの存在が、「ある で 」という否定命題そのものだった。
否定を作ることと、反例を探すことは同じ行為 — この気づきがあると、(1)で「否定が真(反例 が存在するから)」という判定が自然に出せる。 つの記号(すべて・ある・かつ・または)の関係が、日常語の中にすでに全部あるのだ。
ポイント
- 『すべて』⇔『ある』は、否定で入れかわる
- 『かつ』⇔『または』も、否定で入れかわる(ド・モルガン)
- 中身も否定する( → )
よくある間違い
- 『すべて』の否定を『すべて〜でない』としてしまう(正しくは『ある〜でない』)
- 『かつ』の否定で『または』に変えるのを忘れる
- 不等号の否定を誤る( の否定は 。等号が入る)