数学I / 集合と命題

必要条件・十分条件の判定(反例の発見)

★★★ 応用必要条件・十分条件反例

問題

次の各場合について、 であるための「必要十分条件である」「十分条件であるが必要条件でない」「必要条件であるが十分条件でない」「必要条件でも十分条件でもない」のうち、どれに当てはまるかを答えよ。

(1) は実数とする。 かつ かつ

(2) は整数とする。 の倍数 の倍数

(3) は実数とする。

(4) は実数とする。 は有理数 はともに無理数

ヒントを見る

各矢印を反例で崩せるか試す。『必要十分』と言うには両方向とも反例が作れないことを確認。倍数がらみは などで場合分けして調べると反例が見える。

解答・解説

方針

の2つを、それぞれ反例が作れるか調べる。

(2)は少し難しい。『 が3の倍数 ⇔ が3の倍数』の証明が要る。 が3の倍数でないと と書け、 で3の倍数でないことを示す(対偶)。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 本の矢印を、それぞれ反例で崩せるか試すのが基本だ。

ただし(2)は一筋縄でいかない。「 の倍数 の倍数」という橋が要ると気づけるかが分かれ目になる。

この橋は自明ではない。直接は示しにくいので対偶で架ける。判定問題の中に小さな証明問題が埋まっている、という構図だ。

公式 の真偽を反例で調べて、必要・十分・必要十分を判定

を、反例が作れるかで調べる。

(1) かつ かつ : なら和も積も大きく は成り立つ(真)。: なら は成り立つが、 でない(偽)。よって 必要条件であるが十分条件でない

(2) は3の倍数、 は3の倍数。: なら で3の倍数(真)。: 対偶『 が3の倍数でないなら も3の倍数でない』を示す。 が3の倍数でないと と書けて

なので3の倍数でない。だから も真。両方真で必要十分条件

(3) : なら (真)。: だが (偽)。よって十分条件であるが必要条件でない

(4) は有理数、 はともに無理数。: (有理数)でも は有理数だが でない(偽)。: はともに無理数だが は無理数で でない(偽)。両方偽で必要条件でも十分条件でもない

まとめ:各矢印を反例で確かめるのが基本。(2)のように直接示しにくい矢印は、対偶で証明する。

発展 — 一歩先へ。 (2)で効いた「 は素数だから なら 」は、素数の本質的な性質だ。一般に、素数 が積 を割るなら、 の少なくとも一方を割る(ユークリッドの補題)。

この性質は合成数では崩れる。たとえば だが 以上の整数 について、含意「 ならば または 」が成り立つのは、 が素数のときに限る。

そしてこの補題こそが、素因数分解がただ 通りに定まること(一意性)を支える土台になっている。「素数かどうか」が割り算の世界の分かれ目なのだと分かる。

(1) 必要条件であるが十分条件でない (2) 必要十分条件である (3) 十分条件であるが必要条件でない (4) 必要条件でも十分条件でもない

別解

別解 — 条件を集合に翻訳し、包含で一望する(得意な人向けの視点)。 各条件が表す集合を書き、 の集合と の集合の包含を見る。 の集合が に含まれれば 、逆なら だ。

(1) の点はすべて かつ を満たすから 。逆に には のように に入らない点がある。 は必要のみ。

(2) は素数だから「 なら 」(素数が積を割れば因数のどちらかを割る)。逆も明らかで 。必要十分。

(3) には など に入らない点があり は十分のみ。

(4) 。互いにはみ出すのでどちらでもない。

矢印を 本ずつ反例で崩す本解に対し、集合の包含で つを同じ土俵に並べられる。とくに(2)は素数の性質を一度使えば が即座に見える。判定は本解と一致する。

ポイント

  • 各矢印()を反例で確かめる
  • 直接示しにくい矢印は対偶で示す()
  • が3の倍数 ⇔ が3の倍数』は成り立つ

よくある間違い

  • (2)で対偶(または素数の性質)を使わず を直接示そうとして、手が止まる。
  • 反例が つ見つかれば矢印は偽、を使わず、成り立つ場合を探し続けて時間を失う。
  • (4)で「無理数どうしの積は必ず有理数」と思い込み、 を真と誤る( が反例)。