数学I / 集合と命題
必要条件・十分条件の判定(反例の発見)
問題
次の各場合について、 は であるための「必要十分条件である」「十分条件であるが必要条件でない」「必要条件であるが十分条件でない」「必要条件でも十分条件でもない」のうち、どれに当てはまるかを答えよ。
(1) は実数とする。 かつ かつ
(2) は整数とする。 は の倍数 は の倍数
(3) は実数とする。
(4) は実数とする。 は有理数 はともに無理数
ヒントを見る
各矢印を反例で崩せるか試す。『必要十分』と言うには両方向とも反例が作れないことを確認。倍数がらみは などで場合分けして調べると反例が見える。
解答・解説
方針
、 の2つを、それぞれ反例が作れるか調べる。
(2)は少し難しい。『 が3の倍数 ⇔ が3の倍数』の証明が要る。 が3の倍数でないと と書け、 で3の倍数でないことを示す(対偶)。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 と の 本の矢印を、それぞれ反例で崩せるか試すのが基本だ。
ただし(2)は一筋縄でいかない。「 が の倍数 が の倍数」という橋が要ると気づけるかが分かれ目になる。
この橋は自明ではない。直接は示しにくいので対偶で架ける。判定問題の中に小さな証明問題が埋まっている、という構図だ。
、 を、反例が作れるかで調べる。
(1) かつ 、 かつ 。: なら和も積も大きく は成り立つ(真)。: なら 、 で は成り立つが、 でない(偽)。よって は必要条件であるが十分条件でない。
(2) は3の倍数、 は3の倍数。: なら で3の倍数(真)。: 対偶『 が3の倍数でないなら も3の倍数でない』を示す。 が3の倍数でないと と書けて
なので3の倍数でない。だから も真。両方真で必要十分条件。
(3) 、。 は 。: なら (真)。: は だが (偽)。よって十分条件であるが必要条件でない。
(4) は有理数、 はともに無理数。: (有理数)でも は有理数だが でない(偽)。: はともに無理数だが は無理数で でない(偽)。両方偽で必要条件でも十分条件でもない。
まとめ:各矢印を反例で確かめるのが基本。(2)のように直接示しにくい矢印は、対偶で証明する。
発展 — 一歩先へ。 (2)で効いた「 は素数だから なら 」は、素数の本質的な性質だ。一般に、素数 が積 を割るなら、 は か の少なくとも一方を割る(ユークリッドの補題)。
この性質は合成数では崩れる。たとえば だが 。 以上の整数 について、含意「 ならば または 」が成り立つのは、 が素数のときに限る。
そしてこの補題こそが、素因数分解がただ 通りに定まること(一意性)を支える土台になっている。「素数かどうか」が割り算の世界の分かれ目なのだと分かる。
(1) 必要条件であるが十分条件でない (2) 必要十分条件である (3) 十分条件であるが必要条件でない (4) 必要条件でも十分条件でもない
別解
別解 — 条件を集合に翻訳し、包含で一望する(得意な人向けの視点)。 各条件が表す集合を書き、 の集合と の集合の包含を見る。 の集合が に含まれれば 、逆なら だ。
(1) の点はすべて かつ を満たすから 。逆に には のように に入らない点がある。 で は必要のみ。
(2) 、。 は素数だから「 なら 」(素数が積を割れば因数のどちらかを割る)。逆も明らかで 。必要十分。
(3) 。 には など に入らない点があり 。 は十分のみ。
(4) 、。、。互いにはみ出すのでどちらでもない。
矢印を 本ずつ反例で崩す本解に対し、集合の包含で つを同じ土俵に並べられる。とくに(2)は素数の性質を一度使えば が即座に見える。判定は本解と一致する。
ポイント
- 各矢印(、)を反例で確かめる
- 直接示しにくい矢印は対偶で示す()
- 『 が3の倍数 ⇔ が3の倍数』は成り立つ
よくある間違い
- (2)で対偶(または素数の性質)を使わず を直接示そうとして、手が止まる。
- 反例が つ見つかれば矢印は偽、を使わず、成り立つ場合を探し続けて時間を失う。
- (4)で「無理数どうしの積は必ず有理数」と思い込み、 を真と誤る( が反例)。