数学I / 実数と1次不等式
中間の分数と最小の分母
問題
(1) 正の整数 が を満たすとき、次の不等式を示せ。
(2) を満たす分数 ( は正の整数)のうち、分母 が最小のものを求めよ。
ヒントを見る
(1) 2つの分数の大小は差の通分 — 分子に共通して現れる量は何か。(2) 分母が4以下の分数を全部並べても、1/3 と 1/2 の隙間に入るものはあるか。候補が尽きたら、(1)が「必ず間に入る分数」を教えてくれる。
解答・解説
方針
(1)は差をとって通分するだけだが、分子に「ad−bc の符号」が共通部品として現れる設計を見抜く。(2)は q=1,2,3,4 の分数を全数調査して間に入るものがないことを確かめ、q=5 で (1)の中間分数 (1+1)/(3+2)=2/5 が実際に間に入ることを示す。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 (1)の は、分子どうし・分母どうしを足した分数だ。一見でたらめな操作に見える。だがこれが、必ずもとの2数の間に入る。
証明は差の通分でよい。分子に ( の言い換え)が共通部品として現れる。それが種明かしだ。
(2)は「分母最小」を問う数え上げ。分母 の分数は有限個しかない。だから全数調査で「隙間に入らない」ことを確かめる。あとは の実例を出せば最小性が確定する。その実例こそ、(1)の中間分数 である。
① (1) を示す。 と から 。差を通分すると
分子はどちらも同じ だ。よって 。
② (2) 分母4以下の全数調査。 に入るかを、分母ごとに調べる:
- : は と の間に整数なし
- : 候補は ()だが、端なので入らない
- : ⟺ — 整数なし
- : — 整数なし
よって分母4以下の分数は存在しない。
③ の実例。 (1)を に使う。中間分数 が間に入る(検算: ⟺ ✓、 ⟺ ✓)。②とあわせて、分母最小の分数は
まとめ: 分数の大小は差の通分。最小性は「下を全部つぶす+実例」。この2つの証明作法が本問の骨格だ。中間分数は「必ず間に入る分数」を機械的に作れる名品で、しかもその隙間で分母最小になることが知られている。
発展 — 一歩先へ。 と は を満たす「隣どうし」のペアだ。このとき、間に入る分数の分母は必ず 以上になることが一般に証明できる。中間分数が分母最小を与えるのは偶然ではない。既約分数を分母の小さい順に並べた列(フェアリー数列)の理論への入り口である。
(1) 差の通分による(証明) (2)
別解
勝率で見る(直感ルート)。 分数を「勝率」と読んでみよう。チームAは 試合で 勝(勝率 )。チームBは 試合で 勝(勝率 )。2チームの成績を合算すると、 試合で 勝。その勝率が中間分数 だ。
弱いチームと強いチームを合わせた全体の勝率が、両者の間に来るのは自然なこと。式でも確かめられる:
つまり中間分数は、2つの勝率の重みつき平均(重みは試合数 )である。平均は必ず2数の間に入る。これが(1)の正体だ。
「分子どうし・分母どうしを足す」という謎の操作が、「成績の合算」というごく自然な操作だった。そう分かると、この分数はもう忘れられない。
ポイント
- 差の通分で分子に共通の 。
- 分母4以下は全数調査で不存在。
- 中間分数 が答え。
よくある間違い
- 中間分数 を「分数の足し算」と混同する。和 は通分して計算するもので、これは別の操作(2数の間を作る操作)だ。
- (2)で を見つけて満足し、分母4以下に候補がないこと(全数調査)を書かない。「最小」の証明は、下の候補を全部つぶして初めて完成する。
- の や の を範囲内と数えてしまう。不等号は端を含まない(開区間)。