数学I / データの分析
回帰直線と相関係数の正体
問題
個のデータ について、 の平均を 、分散を ()、 の平均を 、分散を ()、共分散を 、相関係数を とする。直線 に対して
とおく( は各点から直線までの縦のずれの2乗和である)。
(1) を最小にする を求めよ。
(2) の最小値は であることを示せ。
(3) (2)から を導き、 となるのはどんなときか答えよ。
ヒントを見る
2変数の最小化は、片方を固定して1つずつ。まず について平方完成せよ。
(3) は何の和か。だから符号はどうなるか。
解答・解説
方針
は の2変数関数だが、1つずつ平方完成すればよい。まず について。すると「直線は を通る」が自動的に出る。次に について平方完成すると最小値が出て、その形 がそのまま を語る。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「データに最もよく合う直線」をどう決めるか。縦のずれの2乗和 を最小にする、というのがその答えだ。
は と の2変数関数だが、怖がることはない。 を先に、 を後に、と1つずつ平方完成すればよい。
について平方完成すると が出る。これは「直線は必ず点 を通る」ことを意味する。データの重心を通るのだ。
その を代入すると、 は だけの2次関数になる。もう一度平方完成すれば が決まり、最小値も出る。そして最小値の形 が、 の理由をそのまま語っている。 は2乗の和だから 以上 — それだけのことなのだ。
① について最小化する。 とおくと で、 である。公式より のとき最小で、そのときの値は
「直線は を通る」ことが、計算から自動的に出てきた。
② について最小化する。 展開すると
の2次関数で、 の係数 は正だから下に凸。平方完成して
よって のとき最小である。
③ (2) 最小値を整理する。
最後は より を使った。
④ (3) 符号を見る。 は2乗の和だから、その最小値も 以上である。
、 だから 、すなわち 。
等号 は のとき、つまり残差がすべて のときである。これはすべての点が1本の直線 の上に乗ることを意味する( の符号は の符号と一致する)。
まとめ: 2変数の最小化も「1つずつ平方完成」で片づく。そして最小値の式 が、相関係数の性質(、 は直線上)を一気に説明してくれる。
発展 — 一歩先へ。 (2)を書き直すと
となる。 は「 の散らばりの総量」、 は「直線で説明しきれなかった残り」である。したがって は「 の散らばりのうち、 で説明できる割合」を表している。
統計学ではこれを決定係数と呼ぶ。 なら で「 説明できた」と読む。相関係数を「 もあるから強い」と眺めるのではなく、2乗して「説明できた割合」として読む — この習慣を持つと、()がそれほど強くないことも見えてくる。
(1) 、(直線は点 を通る) (2) 平方完成2回 (3) より 。 は全点が1直線上にあるとき
別解
先に標準化してしまう(高い視点)。 と を標準化しておくと、話がずっと透明になる。
とおくと、 も も平均 、分散 である。そして
相関係数とは「標準化した2つの積の平均」だったのだ。
ここで「 を で近似したときの残差の2乗の平均」を考える。
左辺は2乗の平均だから 以上である。したがって、どんな実数 に対しても
とすれば 、すなわち が即座に出る。
さらに、この式は最良の傾きが であること(標準化した世界では傾きがそのまま相関係数になる)、そのときの残差の2乗の平均が であることまで一度に語っている。 のときだけ残差が 、つまり全点が直線上だ。
標準化すると や が式から消える。これが「相関係数は単位のとり方によらない」ことの正体でもある。センチメートルで測ろうがインチで測ろうが、 は動かない。
ポイント
- の平方完成で、直線が を通ることが出る。
- の平方完成で 、最小値 。
- だから 。等号は全点が直線上。
よくある間違い
- を と の2変数のまま扱おうとして詰まる。片方を固定して1つずつ平方完成すればよい。まず 、次に の順が楽である。
- 「残差」を点から直線までの垂直距離(最短距離)だと思う。ここで最小化しているのは縦方向のずれ の2乗和である。垂直距離で測ると、別の直線が最適になる。
- (3)で の条件を落とす。 がすべて同じ値だと で、そもそも相関係数が定義できない。分母が になる場合を除くのは、相関を扱うときの大前提である。