数学I / データの分析
相異なる整数データの分散の最小値
問題
とし、 はどの2つも異なる整数であるとする。このデータの分散を とする。
(1) 分散は次のようにも書けることを示せ。
(2) を示し、等号が成り立つのはどんなときか答えよ。
ヒントを見る
平均が邪魔だ。平均を経由せずに散らばりを測る式は作れないか。2点の差に注目せよ。
(2) 相異なる整数を小さい順に並べると、 番目と 番目の差は最低でもいくつか。
解答・解説
方針
分散の定義には平均が現れるが、整数の情報と相性が悪い。そこで「すべての2点の差の2乗の平均」という表し方に書き換える。この形なら平均を経由せず、相異なる整数の差が 以上であることを直接流し込める。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 整数で、しかもどの2つも異なる。だから隣どうしは最低でも は離れる。散らばりには「これ以上詰められない」下限があるはずだ。
ところが分散の定義には平均が顔を出す。平均は整数とは限らないし、整数の条件と結びつけにくい。
そこで平均を消す。分散は「すべての2点の差の2乗の平均」としても書けるのだ。それが(1)である。この形なら、平均を経由せずに「2点の差」だけで評価できる。
相異なる整数を小さい順に並べれば、 番目と 番目の差は少なくとも 。この不等式を二重和に流し込めば、 という「最も詰まった配置」の分散が、そのまま下限として現れる。
① (1) 二重和を展開する。 各項を偏差で書き直す。 だから
第1項は について足すと 倍になるから 。第3項も同じく 。
第2項は
偏差の和は だからだ。よって
となり、(1)の式を得る。平均が消えたことに注目したい。
② (2) 差の下限を入れる。 小さい順に並べ替えて とする(並べ替えても分散は変わらない)。
相異なる整数だから隣どうしは 以上離れる。 を 回足せば、 のとき
両辺とも正だから2乗しても向きは変わらない。 なら両辺 、 でも入れ替えれば同じ。したがってすべての組で
(1)の式に入れると
③ 右辺を計算する。 右辺は、(1)の式を「データ 」に当てはめたものだから、 から までの分散に等しい。
よって
等号は、すべての で となるとき、すなわち が連続する整数 のときである(平行移動しても分散は変わらないので、 は何でもよい)。
まとめ: 平均が扱いにくいときは、平均の出てこない表し方を探す。「すべての2点の差の2乗の平均」は、分散のもう1つの顔である。
発展 — 一歩先へ。 から までの分散 は、よく知られた値だ。サイコロの目( から )なら である。
本問は「相異なる整数のデータは、どんなに詰めてもサイコロ型より散らばれない」と言っている。区間 に連続的に一様分布する点の分散は で、こちらとほとんど同じ値になる。 のずれは、整数が格子点であることから来る補正だ。離散と連続が という同じ定数で結ばれているのは、偶然ではない。
(1) と書いて展開する(平均が消える) (2) 並べ替えて を代入すると、 の分散 が下限として出る。等号は連続する整数のとき
別解
定義のまま、詰まった並びを直接評価する(手を動かすルート)。 二重和を使わない道もある。
で考えてみよう。相異なる整数だから隣どうしは最低 離れる。いちばん詰まった並びは で、平均は真ん中の 。偏差は となり、分散は
確かに公式と合う。
一般の でも、間隔をすべて にした並びを考えれば、偏差は という等差数列になる。その2乗和は
で割って 。同じ値である。
ただし、この道で厳密に「最小」を言うには「間隔を1か所でも広げると2乗和が必ず増える」ことを示さねばならない。それを一般の配置について直接示すのは意外に面倒だ。本解の二重和は、その面倒をまとめて片づける道具なのである。具体例で答えの見当をつけ、証明は二重和で — という二段構えが実戦的だ。
ポイント
- — 平均が消える表し方。
- 相異なる整数なら 。
- 下限は の分散 。等号は連続整数。
よくある間違い
- 平均が整数だと決めつける。 が偶数なら、連続整数の平均は の端数を持つ。二重和の表現を使えば、平均を扱わずに済む。
- (2)で を示さずに使う。根拠は「隣どうしが 以上」を 回足すことである。一言でよいので書く。
- 等号を「 から までのとき」だけに限ってしまう。平行移動しても分散は変わらないから、連続する整数ならどこから始めても等号である。