数学I / データの分析
データの合計値から相関係数を求める
問題
20組の2変量データ について、次の合計値が分かっている。
(ここで は20組すべてについての合計を表す。)
の平均値、分散、共分散を求め、相関係数 を求めよ。
ヒントを見る
個々のデータはなく、合計値だけ。それでも全部出せる。分散は『2乗の平均 − 平均の2乗』。共分散にも双子の公式『積の平均 − 平均の積』がある。まず合計値を個数で割って、各平均を作るところから。
解答・解説
方針
個々のデータは1つも与えられず、あるのは合計値(、、、、)だけ。それでも相関係数は完全に計算できる。
分散は 、そして共分散にはその双子の公式 (積の平均 − 平均の積)がある。分散の公式で を に置き換えたものが分散、と見れば、2つの公式が同じ変形から生まれた兄弟だとわかる。
実際の統計処理でも、データを1件ずつ見ながら5つの合計を貯めておけば済む。実用上も大事な計算法だ。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 個々のデータは1つもない。あるのは5つの合計値だけ。それでも相関係数は完全に計算できる。
分散の公式 には、双子の公式がある。共分散の だ。
どちらも「合計値を で割った平均たち」だけでできている。5つの合計値を で割って部品(平均・2乗の平均・積の平均)をそろえ、公式に流し込めばよい。
まず平均値。
分散。 『2乗の平均 − 平均の2乗』で
よって 、 だ。
共分散。 共分散(偏差の積の平均)は、分散の公式を導いたのと同じ展開で
という『積の平均 − 平均の積』の形に変形できる(展開して 、 が定数であることを使えば確かめられる。分散の公式は とした特別な場合だ)。よって
相関係数。
まとめ:(積の平均 )と (平均の積 )は別物だ。この差 がまさに共分散で、2変量が連動している分だけ『積の平均』が『平均の積』からずれる、と読める。 なので、かなり強い正の相関だ。
発展 — 一歩先へ。 合計値だけで統計量が全部出る、という事実には実務的な意味がある。 組の生データを保存しなくても、5つの合計値さえ記録しておけば、あとから平均・分散・相関係数を再現できる。データの「要約統計量」という考え方だ。
別解の「 はコサイン」という見方からは、 が当たり前の事実として見える。数学IIで学ぶコーシー・シュワルツの不等式は、この事実の代数版である。
、、、、、
別解
得意な人向けに、相関係数の「正体」を明かす見方を1つ。
各データの偏差を成分として並べた、 個の成分を持つ2本の矢印(偏差のベクトル)を想像する。 の偏差の列と、 の偏差の列だ。
このとき、共分散 は2本の「内積 ÷ 」、標準偏差はそれぞれの「長さ ÷ 」にあたる。すると
これは、ベクトルのなす角の の式と同じ形だ。つまり相関係数とは「偏差ベクトルどうしのなす角のコサイン」である。
だから必ず 以上 以下。 は2本が同じ向き(完全な正の相関)、 は直交(無相関)、 は正反対。相関係数の性質が、ぜんぶ角度の言葉に翻訳される。数学Cでベクトルの内積を学んだら、ぜひこの見方に戻ってきてほしい。
ポイント
- 合計値( など)だけで平均・分散・共分散・相関係数まで計算できる
- 共分散にも「積の平均 − 平均の積」の公式()がある
- 電卓統計やコンピュータの集計はこの形の合計値を使っている
よくある間違い
- を と混同する
- 分散・共分散の計算で合計値を で割り忘れる
- の分母を分散の積()にしてしまう(標準偏差の積が正しい)