数学I / データの分析
変量の変換と相関係数
問題
2つの変量 の相関係数は である。次の各場合について、新しい2つの変量の相関係数を求めよ。
(1) の各値に を加え()、 はそのままとする。
(2) はそのまま、 の各値を 倍する()。
(3) の各値を 倍し()、 はそのままとする。
ヒントを見る
単位を変えたら相関係数はどうなる? 偏差の変化だけ追えばいい。定数を足すと偏差は? 正の数を掛けると偏差は? 共分散と標準偏差が同じ倍率で動くなら、割り算の結果は…。負の倍率のときだけ何かが起きる。
解答・解説
方針
単位を変えたら(点→パーセント、cm→mなど)相関係数はどうなるか、という問題だ。
カギは偏差の変化を追うこと。 と変換すると偏差は 、つまり は偏差に影響せず、 倍だけが効く。すると共分散(偏差の積の平均)は 倍、標準偏差は 倍。相関係数は分子と分母で がほぼ約分され、残るのは符号だけだ。
結論を先に言うと、平行移動と正の倍率では は不変、負の倍率では符号だけ反転する。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 単位を変えたら(点→パーセント、cm→m など)相関係数はどうなるか、という問題だ。
カギは偏差の変化を追うこと。 と変換すると、偏差は 倍になる( は偏差に影響しない)。
すると共分散は 倍、標準偏差は 倍。相関係数は分子と分母で大きさが約分され、残るのは の符号だけ。「相関係数は単位に依らない。符号だけが変わり得る」が結論の形だ。
一般に ()と変換すると、偏差は になる。平均も一緒に動くので、 は偏差から消えてしまう。これをもとに各場合を考える。
(1) ()では偏差がまったく変わらないので、共分散も標準偏差もすべて元のまま。よって
全員に 点足しても『連動の強さ』が変わらないのは直感どおりだろう。
(2) とすると、 の偏差が 倍になるので
相関係数は
分子の と分母の が約分されて消える。相関係数が割り算で定義されているおかげで、倍率の影響が自動的に打ち消されるのだ。
(3) とすると、 の偏差が 倍になるので
共分散は符号ごと反転するが、標準偏差は必ず正なので絶対値がついて変わらない。この非対称のせいで、約分しきれない符号が1つ残る。
(意味を考えれば当然で、 の符号を反転すれば『 が増えると も増える』関係は『 が増えると は減る』関係に裏返る。)
まとめ。 相関係数は、平行移動や正の倍率の変換では変わらず、負の倍率を掛けると符号だけが反転する。つまり は単位の取り方によらない量だ。点数で測ろうがパーセントで測ろうが同じ値になる。だからこそ、異なるデータの間で『連動の強さ』を比べる共通のものさしとして使える。
発展 — 一歩先へ。 「単位に依らない」からこそ、相関係数は違う現象どうしの比較に使える。気温とアイスの売上(C と円)、身長と体重(cm と kg)。単位の混ざった世界を、 から の1本の物差しに乗せるのが の役目だ。
この不変性は、実際の計算の時短にも使える(データから定数を引き、キリのいい数で割ってから を計算してよい)。相関係数の計算問題で威力を発揮する。
(1) (2) (3)
別解
散布図の絵で考えると、計算なしで結論が見える。相関係数は「点の並びが直線にどれだけ近いか」を測る量だからだ。
(1) に を足すのは、散布図全体を右へ平行移動すること。点の並びの形はまったく変わらない。だから のまま。
(2) を 倍するのは、縦方向に引き伸ばすこと。帯は縦長になるが、「直線への乗り具合」は変わらない。 のまま。
(3) を 倍するのは、左右の反転。右上がりの並びが右下がりに裏返る。強さは同じで向きだけ逆、。
「平行移動と拡大縮小では形の崩れ方が変わらない。反転だけが向きを裏返す」。この絵を持っておくと、公式を忘れても符号を間違えない。
ポイント
- のとき (同符号なら不変、異符号なら符号反転)
- 共分散は 倍、標準偏差の積は 倍 — 分子は符号を持ち、分母は持たない
- 相関係数は単位(cm でも m でも)によらない、無単位の量である
よくある間違い
- (2)で「 倍したから相関も強くなり 」とする( は を超えない)
- (3)で標準偏差まで 倍して符号が打ち消される、と考える(標準偏差は常に正で 倍)
- (足し算の部分)が相関に影響すると思い込み、余計な計算を始める