数学I / データの分析
仮説検定の考え方(効果の判断)
問題
ある部活動で新しい練習方法を試したところ、 人中 人の記録が向上した。「新しい練習方法には効果がある」と判断してよいかを、次の考え方で調べたい。
効果がないならば、各部員の記録は向上するかしないかが同じ確率(それぞれ )で起こると考えられる。そこで、公正なコイン 枚を投げて表の枚数を数える実験を 回行ったところ、表が 枚以上になったのは 回であった。
基準となる確率を として、「新しい練習方法には効果がある」と判断してよいか答えよ。
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『効果がある』と言いたいなら、まず反対の仮説『効果なし(=五分五分)』を立てる。すると『20人中15人以上が向上』は『コイン20枚中15枚以上が表』と同じ現象。その珍しさを実験の割合で見積もり、基準と比べる。
解答・解説
方針
『新しい練習方法に効果がある』と主張したい。仮説検定の構えどおり、反対の仮説『効果がない(向上するかどうかは五分五分)』を立てて、それを追いつめる。
仮説のもとでは、各人の記録が向上する確率は 。つまり『 人中 人以上が向上』は『コイン 枚中 枚以上が表』と同じ現象だ。この起こりにくさをコイン実験の相対度数で見積もり、基準 と比べる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「効果がある」と主張したい。仮説検定の構えは、その反対から始まる。
「効果がない(向上は五分五分)」という仮説をわざと立てて、それを追いつめるのだ。
仮説のもとでは、 人中 人以上の向上は「コイン 枚中 枚以上が表」と同じ現象になる。その起こりにくさを実験の相対度数で見積もり、基準()より小さければ、仮説のほうを疑う。それが棄却だ。
まず仮説を立てる。 主張したいことは『新しい練習方法には効果がある』だ。その反対の仮説
を立てる。『なぜわざわざ反対を仮定するのか』と戸惑うかもしれないが、これは背理法と同じ構えだ。反対の仮定から『ありえないほど珍しいこと』が導かれれば、仮定のほうを疑える。
仮説のもとでの起こりにくさを見積もる。 仮説が正しければ、各人の向上・非向上はコインの表裏と同じ五分五分の現象だ。よって『 人中 人以上が向上する』ことは『コイン 枚中 枚以上が表になる』ことと同じ仕組みで起こる。実験では 回中 回だったので、相対度数は
基準と比べて判断する。
『効果がない』のに 人以上も向上することは、基準 を下回る『めったにない』出来事だ。それが実際に起きた。ならば『効果がない』という仮説のほうが疑わしいと考えて、これを棄却する。
結論。 新しい練習方法には効果があると判断してよい。
(注意: この判断は『絶対に効果がある』ことの証明ではない。めったに起こらないことがたまたま起きた可能性は ではなく、基準 は『その見込みちがいをどこまで許すか』の取り決めだ。統計的な結論には、いつもこの但し書きが付く。断定ではなく、根拠のある判断、というのが仮説検定の立ち位置だ。)
発展 — 一歩先へ。 基準の に絶対の根拠はなく、慣習的な約束だ。そして仮説が正しくても、 回に 回ほどは偶然「珍しいこと」が起きて、正しい仮説を誤って棄却してしまう。検定は「確からしい判断」であって「証明」ではない。
この考え方は、背理法(矛盾したら仮定を捨てる)の確率版と見ることもできる。数学Bの統計的な推測で、正規分布を使った本格的な検定として再登場する。
相対度数 なので「効果がない」という仮説は棄却され、効果があると判断してよい
別解
コイン実験の代わりに、場合の数で理論値を直接計算することもできる(数学Aの組合せを使う)。
コイン 枚の表裏の出方は全部で 通り。表がちょうど 枚になる出方は、 枚から表の位置を選ぶ組合せの数だけある。
表が 枚以上になる出方を数えると
確率は 、およそ 。
実験の相対度数 は、この理論値の近似だったことが分かる。 回の実験は理論計算の「代用品」であり、回数を増やすほど理論値に近づく。実験と理論、2つの道が同じ結論(棄却)に着くことを確かめておくと、検定の仕組みへの信頼が深まる。
ポイント
- 主張の反対(効果がない)を仮説に立てるのが仮説検定の第一歩
- 「仮説のもとでの起こりにくさ」を実験・シミュレーションの相対度数で見積もる
- 基準( など)より小さければ仮説を棄却 — ただし結論は断定ではなく確率的な判断
よくある間違い
- 「効果がある」ほうを仮説として立て、論理が循環する
- 相対度数と基準の大小比較の結論を逆にする
- 「ちょうど15人」の確率だけを見る(「15人以上」というそれ以上極端な場合も含めて数える)