数学I / データの分析
平均から離れた値の割合の上限(チェビシェフ)
問題
個のデータの平均を 、標準偏差を とする。平均から 以上離れた値、すなわち ()となるデータの個数を とするとき、 が成り立つことを示せ。
ヒントを見る
の和を、 の項だけに減らしても和は小さくなるだけ。その各項は 以上。
解答・解説
方針
分散の定義の和を、条件を満たす項だけに絞って下から評価する。各項は 以上なので、 個分で 以上。これを と比べる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 「離れた値は多くない」を示したい。手がかりは、分散の定義の和が全項 以上であること — 和は、一部の項だけ残しても小さくならない。
条件 を満たす項だけに絞ると、各項は 以上。 個あるから
。
整理すれば 。「大きい項だけで総和を下から押さえる」— 評価の基本動作1つで届く。
① 分散の和を絞る。 すべての項は非負なので、条件 を満たす 個の項だけ残すと ② 各項を下から評価。 残した各項は 。 個あるので ③ 結論。 以上より 。 で割って
まとめ 分散の和を条件を満たす項だけに絞り、各項を で下から押さえると 。ばらつき(分散)が外れ値の割合を縛る。分散と不等式の融合。
発展 — 一歩先へ。 チェビシェフの不等式は分布の形を一切仮定しない普遍の上界で、その分だけ荒い( で 以下)。分布が正規分布と分かっていれば「 の外は約 」とずっと鋭く言える(数Bの正規分布)— 「仮定が強いほど結論は鋭く、仮定が弱いほど適用は広い」という統計の基本トレードオフを、この2つの数字の対比が教えてくれる。
。よって 、。
別解
等号が成り立つ例を作る(不等式の鋭さの確認)。 この上界 は、これ以上改良できない。等号が成り立つデータを実際に作ってみよう。
個のうち、 に 個、 に 個、残り 個を に置く。平均は 、分散は 。
ここで となるように選ぶと 、つまり — 「平均から 以上離れた値」がちょうど の 個で
「証明できた不等式は、等号例を作って鋭さを確かめる」— この往復で、不等式は「上から押さえた」だけでなく「ぴったりの壁」だと分かる。分布の形を一切仮定しないチェビシェフの普遍性と、その代償(荒さ)の両方が、この例に凝縮されている。
ポイント
- 分散の和のうち条件を満たす項だけ残す(和は減るだけ)。
- 各項は 以上、 個で 以上。
- から 。
よくある間違い
- 和を絞るとき、残した項を 「以下」と評価する(条件 の項は 以上)。
- の仮定なしに で割る。
- 結論を「 以上離れた値は存在しない」と読み違える(存在してよい。割合が 以下、という主張)。