数学I / データの分析

データの追加と平均値・中央値の変化

★ 基礎代表値データの修正

問題

5人の生徒のテストの得点は

で、平均値は 点である。ここに得点が 点の生徒 人が加わった。

(1) 人の得点の平均値を求めよ。

(2) 人の得点の中央値を求めよ。

ヒントを見る

新しい平均を出すのに、5人の個々の点数はいらない。平均の定義を逆に使えば『総和 = 平均 × 人数』で総和が復元できる。そこに追加分を足して新しい人数で割る。中央値は逆算できない — どうする?

解答・解説

方針

『平均 点の 人に 点の1人が加わったら?』。新しい平均を求めるのに、5人の個々の点数は実はいらない。

平均値は『総和 ÷ 人数』なのだから、逆に総和は『平均 × 人数』で復元できる。この逆算が(1)のカギだ。復元した総和に を足し、新しい人数 で割ればいい。

(2)の中央値は逆算では出せない。6人分の得点を実際に並べ直して、偶数個のルール(まん中2つの平均)をあてはめる。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 人加わったら平均はどうなるか」— 合計に戻して考えるのが原則だ。

平均 点で 人なら、合計は 点。ここに 点が加われば、合計は 点で 人。だから平均は

平均どうしを平均してはいけない( は誤り)。人数の重みが違うからだ。 人の 点と 人の 点では、 のほうが 倍重い。

中央値のほうは並べ直して数えるだけ。 人(偶数)なので、まん中 つの平均になる。平均は合計に戻る、中央値は並べる — 反応の仕方が根本的に違う。

公式総和 平均値 個数(平均から総和を復元できる)

(1) もとの 人の得点の総和は、平均の定義を逆向きに使って

と復元できる。 点の生徒が加わると、総和は 点、人数は 人になるので

ありがちな誤りは とする計算だ。これは『5人分の重み』を無視して、平均と1人の点数を対等にあつかってしまっている。平均どうし、平均と個々の値を混ぜるときは、必ず総和に戻ってから計算する。

(2) 人の得点を小さい順に並べると

個(偶数個)なので、中央値は 番目と 番目の平均だ。

(平均値の変化を直感で確かめる。加わった 点はもとの平均 点より高い。だから平均は上がるはずで、実際 と上がっている。『平均より高い値が加わると平均は上がる』。計算前にこの見通しを立てておくと、大きな計算ミスに自分で気づける。)

発展 — 一歩先へ。 「元の平均 はみ出し 新人数」という式は、データが 個ずつ増えていく状況で平均を更新し続けるのに使える。

これは立派な漸化式だ(数Bで学ぶ)。過去の全データを覚えておかなくても、今の平均と個数さえ持っていれば、新しい値が来るたびに平均を更新できる — メモリを食わない賢い計算法である。

センサーの計測値をリアルタイムで平均する装置、動画の視聴数から平均評価を更新するサービス — こうした「流れてくるデータ」の処理では、この逐次更新の式が実際に使われている。 という補正項の形は、機械学習の学習則(誤差に比例して少しずつ修正する)ともそっくりだ。

教科書の小さな計算が、そのまま現代の技術につながっている。

(1) 点 (2)

別解

「平均からどれだけ離れているか」だけで、新しい平均が暗算できる。 大きな合計を出さずに済むやり方だ。

加わる生徒は 点。今の平均 点より 点高い。

この「余分な 点」を、 人で山分けすると考える。

合計 で割った答えと一致した。

なぜこれでよいのか。 一般に、 人の平均が のところへ値 人が加わると

元の平均 (はみ出したぶん)(新しい人数)、という形になる。はみ出しを全員でならす、という直感がそのまま式になっている。

この見方だと、変化の大きさも一目で分かる。 人数 が大きいほど分母が大きくなり、 人が加わっても平均はほとんど動かない。 人の平均に 人加わっても、動くのは — ほぼゼロだ。大きな集団の平均は、なかなか動かない。

中央値のほうは、もっと鈍い。 加わる生徒が 点でも、 点でも、 点でも、極端に 点でも、 人の中央値はすべて である。 点以上ならどれも「上位 人」の一員になるだけで、まん中の 人()は変わらないからだ。

一方、平均は 点が加われば 点へ跳ね上がる。

同じ 人の追加が、平均には効き、中央値には効かない。 「平均点が上がった」というニュースを聞いたら、それが全体の底上げなのか、一部の突出なのかを疑う — 代表値の性格を知っているからこそできる読み方である。

ポイント

  • 総和 = 平均値 × 個数 — 平均値から総和を復元できる
  • データを追加したら並べ直してから中央値を取り直す
  • 平均より大きい値が加わる → 平均は上がる(逆も同様)

よくある間違い

  • (1)で のように平均どうしを単純に平均してしまう
  • (2)で並べ直さずに追加前の並びのまま中央値を取る
  • (2)で6人なのに3番目の値だけを中央値にする(偶数個はまん中2つの平均)