数学I / データの分析
相関の正負の読み取り
問題
次の(1)〜(3)の2つの量の間には、一般に「正の相関」「負の相関」「相関がない(ほとんどない)」のどれがあると考えられるか。理由とともに答えよ。
(1) 夏の各日の最高気温と、その日のアイスクリームの売上金額
(2) 標高と気温(同じ時刻に、いろいろな標高の地点で測る)
(3) 生徒の身長と、その生徒の数学のテストの得点
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頭の中に散布図をかいてみよう。一方が増えると他方も増える? 減る? 関係ない? 点のならびが右上がり・右下がり・バラバラ、のどれになるかで判断する。
解答・解説
方針
相関の正負は、散布図を頭の中にかいて判断する。
『一方が増えると他方も増える傾向』なら点は右上がりに並ぶ。正の相関だ。『一方が増えると他方が減る傾向』なら右下がり。負の相関だ。増減に関係が見られなければ、点は雲のように散らばる。相関なしだ。
ここで大事なのは『傾向』という言葉。全部の点がきれいに並ぶ必要はなく、例外があってもおおまかな向きがあれば相関と呼ぶ。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 相関の正負は、散布図に点を打ったらどう並ぶかを頭の中で想像すれば決まる。
- 右上がりに並ぶ(一方が増えると他方も増える)→ 正の相関
- 右下がりに並ぶ(一方が増えると他方は減る)→ 負の相関
- 雲のようにばらける(関係がない)→ 相関がない
つずつ、極端な場合を想像するのがコツだ。「めちゃくちゃ暑い日」のアイスの売上は? 「富士山頂」の気温は? 「背が高い生徒」の数学の点は?
最後のものだけ、答えが出てこないはずである。背が高くても低くても、数学ができる人もできない人もいる — それが「相関がない」ということだ。
(1) 正の相関
気温が高い日ほどアイスクリームはよく売れる傾向がある。散布図をかくと点が右上がりに分布すると考えられるので、正の相関がある。
(2) 負の相関
標高が 上がるごとに気温はおよそ 下がることが知られている。標高が高いほど気温は低くなる傾向があるので、散布図は右下がりになり、負の相関がある。
(3) 相関がない(ほとんどない)
身長が高いからといって数学の得点が高い(低い)という傾向は考えにくい。散布図をかいても点は全体に散らばり、右上がり・右下がりのどちらの傾向も見られないと考えられるので、相関はほとんどない。
まとめ:注意を2つ。第一に、相関は『傾向』の話であり、例外があっても相関を否定しない。気温が高いのに売れない日が1日あってもよい。第二に、相関は因果ではない。2つの量が連動して見えても、一方が他方の原因とは限らない(たとえば『アイスの売上』と『水難事故の件数』には正の相関があるが、アイスが事故を起こすわけではなく、背後に『夏』という共通の要因がある)。データ分析で最も誤用されやすいポイントなので、早いうちに身につけておきたい。
発展 — 一歩先へ。 相関係数の値と「相関の強さ」の対応には、おおよその目安がある。
- が 以上 — 強い相関
- 前後 — 中くらいの相関
- 以下 — ほとんど相関なし
ただしこれは分野によって基準が違う。物理の実験なら でも「合っていない」と言われるし、人間の行動を扱う心理学や経済学では でも「強い発見」になる。数値の意味は文脈で決まる。
もう つ、こわい落とし穴を紹介しておく。データを切り取る範囲を変えると、相関の符号が逆転することがある(シンプソンのパラドックスという)。全体では正の相関に見えるのに、グループごとに分けると全部が負の相関 — そんな例が現実に起こる(大学の合格率の男女差の有名な例がある)。
データは、集め方・切り取り方しだいで、いくらでも違う顔を見せる。 統計の力は強いが、その力は使い手の誠実さに支えられている — 高校のデータの分析が最後に伝えたいのは、たぶんこのことだ。
(1) 正の相関 (2) 負の相関 (3) 相関がない(ほとんどない)
別解
相関を読むときに、誰もが引っかかる罠が つある。この つを知っているかどうかで、データとの付き合い方が変わる。
罠1: 相関があっても、原因とは限らない。
(1)の「気温とアイスの売上」は、気温が上がるからアイスが売れる — 素直な因果関係だ。しかし世の中には、こんな例がある。
- アイスの売上と水難事故の件数には、強い正の相関がある
アイスを食べると溺れるのか。もちろん違う。どちらも「気温が高い」という第 の原因から生じているだけだ(暑い → アイスが売れる、暑い → 水辺に行く人が増える)。こういう見かけの相関を疑似相関という。
「相関がある」は「一緒に動く」という事実の記述にすぎない。 「だから一方が他方の原因だ」と言うには、まったく別の根拠がいる。ニュースやグラフを見るとき、「第 の原因はないか」と一度立ち止まる — これが統計リテラシーの第一歩だ。
罠2: 相関係数が でも、無関係とは限らない。
相関係数が測るのは「直線的な関係」だけである。たとえば が 、(つまり )というデータを考えよう。 は で完全に決まる — これ以上ないほど関係が深い。
ところが相関係数を計算すると、ぴったり になる。左半分は右下がり、右半分は右上がりで、 つが打ち消し合うからだ。
が意味するのは「直線的な関係がない」ことだけ。 U字型・放物線型の関係は、相関係数の目には映らない。だから必ず散布図を描いて、目で形を確かめる — 数値だけを見て「無関係」と結論してはいけない。
まとめると。 相関係数は便利だが、 つのことを言えない。「どちらが原因か」も、「直線以外の関係」も、この つの数からは読み取れない。数字を出したら、必ず絵に戻る。
ポイント
- 正の相関 = 右上がりの散布図、負の相関 = 右下がりの散布図
- 相関は全体の傾向。個々の例外があってもよい
- 相関があっても因果関係(原因と結果)があるとは限らない
よくある間違い
- 「関係が強い=正の相関」と思い込む(強い負の相関もある)
- 相関と因果を混同する
- 相関係数が なら無関係だと結論する(U字型など、直線でない関係は に映らない)