数学I / データの分析

共分散と相関係数の計算

★ 基礎共分散相関係数

問題

5人の生徒の数学の小テスト と英語の小テスト の得点(いずれも10点満点)は次の通りであった。

の共分散 と相関係数 を求めよ。

ヒントを見る

2つの量の『連動の強さ』を測る。カギは共分散=『 の偏差と の偏差の積の平均』。なぜ積? 両方が同じ向きにずれれば積は正、逆向きなら負。まず各点の偏差の積を並べてみよう。

解答・解説

方針

2つの変量の『連動の強さ』を数値にする手順だ。核になるのは共分散、『 の偏差と の偏差の積の平均』だ。

なぜ積なのか。 も平均より上(正 × 正)、または両方とも下(負 × 負)なら積は正。逆向きにずれていれば負。つまり積の符号が『同じ向きに動いているか』を教えてくれる。

ただし共分散は単位に左右されて大小の基準が持てないので、標準偏差で割って にそろえたものが相関係数 だ。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 つの量の関係を測りたい。カギは偏差の積である。

各生徒について「数学が平均より上か下か」「英語が平均より上か下か」を見る。

  • 両方とも平均より上(偏差が )→ 積は
  • 両方とも平均より下()→ 積は
  • 片方だけ上()→ 積は

つまり「 科目が同じ方向に動く人が多いほど、積の合計は大きくなる」。この積の平均が共分散だ。

ただし共分散は単位に左右される(点を 倍すれば 倍になる)。そこでそれぞれの標準偏差で割って規格化したのが相関係数 である。手順は「平均 → 偏差 → 積と 乗 → 割り算」。表を作って淡々と進めよう。

公式共分散 偏差の積の平均、相関係数 ()

まず平均値。

偏差を整理する。 偏差の計算は表にして淡々と進めるのがミスを防ぐコツだ。

の偏差:

の偏差:

偏差の積:

積がすべて 以上。どの組も『 が平均より上なら も上』という同じ向きのずれ方をしていることが、この時点で読み取れる。

共分散。

それぞれの標準偏差。

よって だ。

相関係数。

にかなり近い。 の間には強い正の相関がある。散布図を思いうかべると、点がほぼ右上がりの直線に沿って並んでいる状態だ。相関係数は必ず に収まる。もし計算結果がこの範囲を飛び出したら、どこかで計算ミスをしている。

12345246xy
数学 x と英語 y の散布図 — 右上がりの強い正の相関(r = 0.9)

発展 — 一歩先へ。 相関係数が 以上 以下に収まるのは偶然ではない。 の偏差を並べたものを の偏差を並べたものを というベクトルだと思うと

相関係数は、 つの偏差ベクトルのなす角の そのものなのだ。

これで何もかも腑に落ちる。

  • 以上 以下 →
  • ()= 偏差ベクトルが同じ向き = 完全な右上がりの直線
  • ()= 偏差ベクトルが直交 = 無相関
  • ()= 真逆の向き = 完全な右下がりの直線

「無相関」を「直交」と呼びかえられるのが面白いところだ。統計の相関と、ベクトルの内積は同じ構造をしている。(コーシー・シュワルツ)が の正体である。

数学の異なる分野が、同じ形の式で結ばれる — こういう瞬間に出会えるのが、学びを続けるご褒美だろう。

別解

共分散の符号は、散布図を見れば計算前に分かる。 数値の意味を絵でつかんでおこう。

散布図に「平均の十字線」を引く。 縦線を ( の平均)に、横線を ( の平均)に引くと、散布図が つの部屋に分かれる。

  • 右上の部屋( も平均超): 偏差の積は
  • 左下の部屋(どちらも平均未満):
  • 左上・右下の部屋(一方だけ平均超): 積は

人がどの部屋にいるか調べる。偏差の組は

負の部屋(左上・右下)に入る人が 人もいない。 人が右上か左下、 人は十字線の上に乗っている(積は )。だから偏差の積の合計は正 — 計算する前から共分散が正だと分かる

共分散とは、右上・左下に点が集まっている度合いである。右上がりに並ぶほど、正の項ばかりになって値が大きくなる。逆に右下がりなら負の項ばかりで、共分散は負になる。

では、なぜ標準偏差で割るのか。 共分散 という数字は、それだけ見ても大きいのか小さいのか分からない。得点を 倍(たとえば 点満点に換算)すれば共分散は 倍の になる — 単位を変えただけで数字が化けるのでは、物差しにならない。

そこでそれぞれの散らばり()で割る。すると単位が打ち消し合い、 から のあいだの、単位を持たない数になる。これが相関係数だ。

実際、英語の得点を (採点方式を変えた)としても、共分散は 倍、 倍になるので、割り算で が消えて のままである。相関係数は「ものさしの取り替え」に動じない — だから身長と体重、気温と売上のように単位の違う量の関係も測れる。

に近いので「強い正の相関」。 が必ず成り立つ(これは数IIで学ぶコーシー・シュワルツの不等式そのものだ)ので、 を超える値が出たら計算ミスである。よい検算になる。

ポイント

  • 共分散 = 偏差の積の平均、相関係数
  • 偏差の表(x偏差・y偏差・積・2乗)を作ると計算が整理される
  • に近いほど強い正の相関

よくある間違い

  • 共分散の計算で偏差の積ではなく の積をそのまま平均する
  • 分母を (分散の積)にしてしまう
  • の値が出ても気づかない(相関係数は必ず 。超えたら計算ミス)