数学I / データの分析
外れ値の判定
問題
7個のデータ
について、第1四分位数 と第3四分位数 を求めよ。また、「 未満、または より大きい値」を外れ値とするとき、このデータに外れ値があれば求めよ。
ヒントを見る
『なんとなく大きい』では答案にならない。外れ値には客観的な基準がある — 箱(〜)の両端から『四分位範囲の 倍』だけ外に線を引く。その線の外にある値が外れ値。まず四分位数から。
解答・解説
方針
。眺めれば が浮いているのは一目でわかる。でも『なんとなく大きいから外れ値』では答案にならない。外れ値には客観的な判定基準がある。
それが『 未満、または より大きい値』という基準だ。
手順は、四分位数 → 四分位範囲 → 基準の計算 → 外に出ている値を探す、の順だ。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 データを見た瞬間、 だけが浮いていると分かる。しかし「なんとなく大きいから外れ値」では主観だ。
そこで機械的な基準を決める。問題文が与えているルールがそれである。
やることは 段階だ。四分位数を出す → 四分位範囲を出す → 上下の境界線を計算して、外に出ている値を探す。
個(奇数個)なので、中央値の 個は下組にも上組にも入れない。ここは前に習ったとおりである。
まず四分位数。 データは 個で、中央値は 番目の だ。
奇数個なので中央値自身は組に入れない。下組は の 個で、その中央値は 。上組は の 個で、その中央値は だ。
判定の境界を計算する。 四分位範囲は なので、境界は箱の両端から『四分位範囲の 倍』だけ外側に引く。
つまり、 未満または より大きい値が外れ値だ。
判定する。 データの中で より大きいのは だけだ( 未満の値はない)。よって外れ値は
基準が四分位数ベースなのには理由がある。、 は端の値に影響されにくいので、外れ値候補の 自身が判定基準を歪めることがない(平均や範囲を基準にすると、外れ値が基準そのものを引きずってしまう)。なお、外れ値は入力ミスのこともあれば、意味のある値のこともある。機械的に捨てるのではなく、まず原因を考えるのが分析の作法だ。
発展 — 一歩先へ。 「なぜ 倍なのか」という疑問はもっともだ。 倍でも 倍でもよさそうに見える。
答えは、きれいな釣鐘型(正規分布)のデータなら、この基準に引っかかる値がおよそ しか出ないように調整されているから。 人に 人ほど。「めったにない」と言うのにちょうどいい厳しさ、という経験則の産物である( 倍だともっと多くの値が引っかかり、 倍だと本物の異常値も見逃す)。
つまり という数に深遠な理由はなく、使いやすさで選ばれた慣習である。統計にはこういう約束事がしばしば登場する(仮説検定の もそう)。数学的必然と、実務上の取り決めを区別して理解する — これは統計を学ぶうえで大切な態度である。
なお、箱ひげ図で外れ値を で別に打ち、ひげは外れ値を除いた最大・最小まで引く描き方もある(外れ値つき箱ひげ図)。こうすると、ひげの長さが外れ値に引き伸ばされず、分布の本体が見やすくなる。
、、外れ値は
別解
外れ値がどれほどの破壊力を持つか、数字で見ておこう。 そして「なぜ外れ値の判定に四分位数を使うのか」に答える。
まず、 を除いた 個 と、 込みの 個で、代表値を比べる。
| を除く | 込み | |
|---|---|---|
| 平均 | ||
| 中央値 | ||
| 標準偏差 | 約 | 約 |
平均は 点以上ずれ、標準偏差にいたっては 倍以上に膨らむ。 たった 個の値が、集団の姿を作り変えてしまった。「このクラスの平均は 点」と言われても、 人は 点以下なのだから、実態を表していない。
一方、中央値は から へ動いただけ。 順位でしか物を言わない指標は、外れ値にびくともしない。
だから外れ値の判定に ・ を使う。 もし「平均 標準偏差の外」を基準にしたらどうなるか。標準偏差そのものが に膨らまされているので、外れ値が自分自身を隠してしまう。犯人が捜査資料を書き換えるようなものだ。四分位数なら に汚染されないから、公平な物差しになる。
なので は外れ値。他の 個は と のあいだに収まっている。
最後に大事なこと。外れ値 捨てる値、ではない。 入力ミスなら直すべきだし、本物の記録(たとえば飛び抜けて読書する生徒)ならそれこそが一番おもしろい情報かもしれない。外れ値の判定は「ここを調べよ」という警告灯であって、削除ボタンではない。
ポイント
- 外れ値の基準: 未満、または より大きい値
- 四分位数 → 四分位範囲 → 境界 → 判定、の順に機械的に計算できる
- 外れ値があると平均値や範囲は大きく影響を受けるが、中央値や四分位範囲は影響を受けにくい
よくある間違い
- 倍するのを忘れて などで判定する
- 境界の値そのもの(この場合 や )を外れ値に含めてしまう
- 外れ値を見つけたら必ず除外すべきだと思い込む(判定は「調べよ」の合図。除外の可否は理由次第)