数学I / データの分析

分散と標準偏差(定義から)

★ 基礎分散標準偏差

問題

5個のデータ

について、平均値・分散・標準偏差を求めよ。

ヒントを見る

散らばりを測りたい。各データが平均からどれだけずれているか(偏差)を平均… と思いきや、そのまま足すと必ず になってしまう。なぜ? それを避ける一手が『2乗してから平均』。標準偏差は最後にどう戻す?

解答・解説

方針

散らばりを測りたい。素朴には『各データが平均からどれだけずれているか(偏差)』の平均をとりたくなる。でも偏差は正と負が打ち消し合って、和が必ず になってしまう。

そこで、2乗してから平均する。これが分散の定義『偏差の2乗の平均』だ。

手順は、平均値 → 各データの偏差 → 偏差の2乗 → その平均、と一本道。標準偏差は分散の正の平方根で、2乗した分の『単位のずれ』を元に戻した量だ。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 分散は「平均からどれだけ散らばっているか」を測る量だ。

素朴に「平均からのズレを平均する」とどうなるか。ズレ( 偏差)は で、足すと 必ず になってしまう(プラスとマイナスが打ち消し合うから)。これでは散らばりを測れない。

そこで、 乗して符号を消す 乗してから平均すれば、散らばっているほど大きな値になる。

乗したぶん単位が「点」になって扱いにくいので、最後に平方根をとって元の単位に戻す — それが標準偏差である。平均 → 偏差 → 乗 → 平均 → 平方根、この 段を順に踏むだけだ。

公式分散 偏差の2乗の平均、標準偏差

まず平均値。

偏差とその2乗。 各データの偏差()は順に

ここで和をとってみると 。打ち消し合って散らばりの情報が消えてしまう。これが『そのまま平均』ではだめな理由で、2乗する動機だ。偏差の2乗は

分散と標準偏差。 分散 は偏差の2乗の平均なので

標準偏差 はその正の平方根で

(偏差の和が になることは、どんなデータでも成り立つ。もし偏差の和が にならなかったら、偏差の計算か平均値がまちがっている。優秀な検算装置として毎回使いたい。)

発展 — 一歩先へ。 なぜ「偏差の絶対値の平均」ではなく、わざわざ 乗するのか。符号を消すだけなら絶対値でもよさそうだ。

理由は つある。 つは計算のしやすさ。絶対値は場合分けが必要で、微分もできない。 乗なら展開でき、上で見たように という便利な式が出る。

もう つは、 乗が足し算と相性がいいこと。独立な つの量の和の分散は、分散の和になる(、数Bで学ぶ)。この美しい性質は絶対値では成り立たない。三平方の定理と同じ 乗の加法性が、統計の背骨を通っているのだ。

実際、 個のデータを 次元空間の 点と見ると、標準偏差は「平均を表す点からの距離」()そのもの。分散は 乗の距離、標準偏差は距離 — 幾何のことばで統計を読み直すと、 乗の必然性が見えてくる。

平均値 、分散 、標準偏差

別解

分散にはもう つの計算式がある。偏差を書き出さずに済むので、平均が小数になる問題では圧倒的に速い。

この問題でやってみる。

乗の平均:

平均の :

定義から計算した値とぴったり一致した。標準偏差も で同じである。

なぜ一致するのか。 偏差の 乗を展開してみると分かる。

( の平均が だから、 の平均は になる。) つの式は同じものの言い換えだ。

使い分けの目安。 平均がきれいな整数なら定義どおりが分かりやすい。平均が のように半端なら、偏差が全部小数になって地獄を見る — そのときは 乗の平均で攻める。

さらに高い視点から。 このデータ 公差 の等差数列だ。等差数列のデータの分散には、実は閉じた式がある。項数 、公差 のとき

代入すると 計算せずに答えが出た。等間隔に並んだデータの散らばりは、間隔と個数だけで決まるのだ(サイコロの目 の分散が になるのも同じ公式である)。

ポイント

  • 分散 = 偏差の2乗の平均、標準偏差 =
  • 偏差の和は必ず — 計算の検算に使う
  • 標準偏差はもとのデータと同じ単位をもつ散らばりの指標

よくある間違い

  • 偏差を2乗せずに平均して「分散 」としてしまう
  • 分散と標準偏差を取り違える(標準偏差は平方根を取ったもの)
  • 偏差の合計を「個数−1」で割ってしまう(高校の分散は個数 で割る)