数学I / データの分析
得点調整と相対的な位置
問題
あるテストの得点 の平均値は 点、標準偏差は 点であった。得点を見やすくするため、1次式による調整
を行う。
(1) 調整後の得点 の平均値と標準偏差を求めよ。
(2) 調整前に 点だった生徒の、調整後の得点を求めよ。
(3) この生徒の得点は、調整の前後で「平均値から標準偏差何個分離れているか」がどう変わったかを調べ、この調整が生徒の相対的な位置を変えないことを説明せよ。
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(3)が核心。得点そのものは変わるが『集団の中の位置』は? それを測るものさしは『平均から標準偏差何個分ずれているか』。調整前と後でこの比を出して比べよう。1次式変換でなぜ保たれるか、理由まで。
解答・解説
方針
試験の得点調整 。(1)(2)は変換公式の適用で淡々と進む。
核心は(3)だ。『調整前の 点と調整後の 点、見かけは変わったが集団の中での位置は変わったのか?』。これを測るものさしが『(得点 − 平均)÷ 標準偏差』、つまり平均から標準偏差何個分離れているか、という比だ。
前後で計算して比べると、1次式変換ではこの比が保たれることが見えてくる。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 (1)(2) は変換公式の当てはめで進む。核心は (3) だ。
得点そのものは から へ変わった。では集団の中での位置は変わったのか。
比べるものさしを、絶対の点数から「平均から標準偏差何個分か」に切り替える。これが標準化した値で測る相対的な位置だ。
次の得点調整は、全員を一斉に動かすだけ。だから標準化した値は変わらないはず。それを変換公式で確かめにいく。
(1) 、 の1次式変換なので
(2) を代入して
(3) 得点そのものは と変わった。では集団内の位置はどうか。『平均値から標準偏差何個分離れているか』を前後で計算する。
調整前:
調整後:
どちらも『平均より標準偏差 個分だけ高い』位置。完全に一致する。
理由。 1次式変換 ()では、偏差が 倍()、標準偏差も同じ 倍()になるので、その比
は変換の前後で変わらない。分子と分母が同じ倍率で伸び縮みするからだ。
振り返り。 『平均から標準偏差何個分か』という比は、まさに標準化で作った量であり、偏差値の中身でもある。この問題が示したのは、1次式の得点調整は見かけの数値を変えるだけで、集団内での相対的な位置は1ミリも動かさない、という事実だ。調整後の 点は、調整前の 点と『同じ偉さ』なのだ。試験の得点調整が公平でありうる理由を、数式が保証してくれている。
発展 — 一歩先へ。 「平均から標準偏差何個分か」を に乗せ替えたのが偏差値だ。この生徒の偏差値は調整の前後どちらも で、位置が変わっていないことがそのまま読める。
ただし 次変換が保つのは相対的な位置だけで、分布の形は変えない。もともと得点が偏っていれば、偏差値にしても偏りは残る。偏差値が素直に「上位何%か」に対応するのは、分布がおよそ左右対称(正規分布に近い)ときだ。
なら上下が反転し、位置の高低が逆になる点も注意したい。理屈のうえでは偏差値が を下回ったり を超えたりもありうる。偏差値は万能の物差しではなく、前提つきの便利な道具だ。
(1) 平均 点、標準偏差 点 (2) 点 (3) 前後とも平均 標準偏差の位置で、相対的な位置は変わらない
別解
別解 — 目印の点を追って標準偏差の目盛りで読む(苦手な人にも実感できるルート)。 公式を思い出すかわりに、目印になる点が変換でどこへ行くかを追う。
まず平均そのもの。 を入れると 。だから新しい平均は 。
次に「平均より標準偏差 個分上」の点。 を入れると 。これは新しい平均 より 上。つまり新しい標準偏差は 。
この生徒の 点は、 だから「平均より標準偏差 個分上」。変換すると で、新しい平均 より 上。これは新しい標準偏差 の 個分だ。
前も後も「平均より標準偏差 個分上」で、位置は ミリも動かない。公式を使う本解と同じ結論だが、目盛りを追うと、標準偏差何個分かが保たれる様子が目に見える。
ポイント
- (平均から標準偏差何個分か)は1次式変換()で不変
- この量が「偏差値」の考え方の土台(偏差値は )
- 偏差と標準偏差が同じ倍率で変わるから比が保存される、という理由まで説明できるように
よくある間違い
- (3) で得点差 点だけを見て「位置が 点上がった」と誤解する(相対位置は変わらない)。
- の場合にも同じ結論だと拡大解釈する( では上下が反転し、高低が逆になる)。
- 標準偏差で割る操作を忘れ、偏差 と の生の差だけを比べて「位置が下がった」と取り違える。