数学I / データの分析

最大値の修正が各統計量に与える影響

★★★ 応用四分位数代表値データの修正

問題

11人の生徒の得点は次の通りであった。

(1) このデータの平均値、中央値、第1四分位数 、第3四分位数 、範囲を求めよ。

(2) 採点ミスにより、最高点の 点は正しくは 点であったことが分かった。修正後、(1)の5つの統計量のうち値が変わるものをすべて挙げ、修正後の値を求めよ。

ヒントを見る

でも並び順は変わらない — ここがすべての出発点。統計量を『順位だけで決まる派』と『値の大きさで決まる派』に仕分けると、どれが動きどれが動かないか一目でわかる。どっちがどっち?

解答・解説

方針

最大値 が実は だった。この修正で、平均値・中央値・四分位数・範囲のどれが動き、どれが動かないか。

カギは『 に変えても、データの並び順(順位)は変わらない』という観察だ。順位だけで決まる統計量(中央値・四分位数)は無傷、値の合計や端の値に依存する統計量(平均値・範囲)だけが動く。この線引きを、(1)で作った具体的な数値の上で確かめていく。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 最大値 に直すと、何が動くか。

値の計算より先に、 つ観察を置く。 も依然として最大値だから、データの並び順は変わらない。

すると見通しが立つ。順位だけで決まる統計量(中央値・四分位数)は動かない。値そのものを使う統計量(平均・範囲)だけが動く。

統計量を「順位派」と「値派」に分ける。この視点が発想の核だ。

公式中央値・四分位数は順位で決まる(端の値に頑健)、平均値・範囲は値の大きさに依存

(1) データは 個で、もう小さい順に並んでいる。

  • 平均値: 総和は なので
  • 中央値: 番目の値なので
  • : 下組 の中央値で
  • : 上組 の中央値で
  • 範囲:

(2) と修正しても、 は依然として最大値であり、データの並び順は変わらない。ここがすべての出発点だ。

変わらないもの: 中央値( 番目の値 )、()、(上組は になるが、その中央値は のまま)。これらは『何番目の値か』だけで決まる統計量なので、端の値がいくつに変わろうと、順位が保たれるかぎり動かない。

変わるもの:

  • 平均値: 総和が になるので 点( 点上がる)。全データを足し込む統計量は、1個の変化を必ず拾う
  • 範囲: 点( 点広がる)。範囲は最大値そのものを使うので、修正がそのまま反映される
304055708091(点)修正前修正後
修正前(80)と修正後(91)の箱ひげ図 — 箱(四分位数)は変わらず、ひげだけ伸びる

振り返り。 統計量は『順位で決まる派』(中央値・四分位数)と『値の大きさで決まる派』(平均値・範囲・分散)に二分できる。前者は端の値の変化に動じない。この性質を頑健(ロバスト)という。外れ値や入力ミスを含みうる実データの要約に中央値・四分位範囲が好まれるのは、まさにこの頑健さのためだ。外れ値と平均の関係で見た現象と同じ構図を、今回は『どの統計量が・なぜ』まで解像度を上げて確認した。

発展 — 一歩先へ。 中央値や四分位数が「順位だけ」で決まることには、もう一歩先の利点がある。値そのものが正確に分からなくても、順位さえ分かれば計算できるのだ。

たとえば最高点が採点の上限で頭打ちになり、「 点以上」としか記録されていなくても、中央値・ はそのまま求まる。順位が動かないからだ。一方、平均や範囲は実際の値がなければ計算できない。アンケートの 段階評価のように、そもそも間隔に意味のない順序だけのデータでも、中央値は意味をもつが平均は意味をもたない。

「その統計量が何の情報を使っているか」を意識すると、どんなデータにどの代表値が使えるかが見えてくる。順位で足りるのか、値の大きさまで要るのか。この線引きが、実際のデータを要約するときの指針になる。

(1) 平均値 、中央値 、範囲 (2) 変わるのは平均値()と範囲()。中央値・ は不変

別解

別解 — 等差数列の対称性で (1) を見抜く(得意な人向けの視点)。 データ は公差 の等差数列だ。この構造に気づくと、(1) は合計を出さずに読める。

等差数列は中央の項を軸に左右対称。だから平均と中央値は一致し、ともに中央の 番目の項 は下半分の中央の項 は上半分の中央の項 。範囲は 個を足す必要がない。

(2) の修正は、この対称性を上端だけで崩す。ここで役立つ見方がある。 つの値を 変えると、平均は だけ動くから 。範囲は最大値がそのまま 。順位が保たれるので、中央値・ は動かない。合計を組み直さずに、増分だけで修正後が出る。本解と同じ結果だ。

ポイント

  • 順位で決まる統計量(中央値・四分位数)は、端の値が多少変わっても不変
  • 平均値は総和に、範囲は最大・最小に直接依存するので、1個の変化で動く
  • この対比が「外れ値に頑健な統計量」という考え方につながる

よくある間違い

  • (2) で も変わると考える(上組の中央値は のままで、順位が保たれるかぎり動かない)。
  • 修正後の平均を、増分 を人数 で割らずに などとしてしまう。
  • 「最大値が変わったのだから中央値もずれる」と思い込み、値派と順位派の区別がつかず全統計量を計算し直して混乱する。