数学I / データの分析
相関係数の計算と変換後の不変性
問題
5日間の最高気温 ()とある飲料の売上数 (本)のデータは次の通りであった。
(1) と の相関係数 を求めよ。
(2) 気温を華氏に近い形 に、売上を に変換したとき、 と の相関係数を求めよ。
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(1)は偏差の表で淡々と。急所は(2) — 変換後の相関を『再計算せず』性質で答える。 で偏差は何倍? 共分散と標準偏差の積が同じ倍率で動けば、割り算の結果は変わらない。なぜかを言葉に。
解答・解説
方針
(1)は偏差の表を作って共分散・標準偏差 → 相関係数、という標準の計算だ。ヤマは(2)。、 と変換した後の相関係数を、再計算せずに性質から答える。
偏差で考えれば、 の偏差は の偏差の 倍、 の偏差は の偏差のまま。すると共分散は 倍、標準偏差の積も 倍。割り算で打ち消されて は変わらない。
『計算し直せば求まる』で終わらせず、なぜ変わらないかを一般論として言えるかが試されている。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 (1) は偏差の表を作れば淡々と進む。急所は (2) だ。
変換したあとの相関係数を、再計算せずに性質で答えたい。
は、偏差を 倍するだけの変換だ。すると分子の共分散にも、分母の標準偏差の積にも、同じ が現れる。約分されて相関係数は変わらない。
「相関係数は正の 次変換で不変」。この結論を偏差の追跡で自分の手で導けるかが主題だ。
(1) 平均値は
偏差を表の形で整理する(それぞれ和が になることを確認しながら)。
- の偏差: → 2乗和
- の偏差: → 2乗和
- 偏差の積: → 和
よって
(2) 再計算はいらない。偏差がどう変わるかだけ追えばいい。 では の偏差が の偏差の 倍( は平均ごと動くので偏差に残らない)、 では の偏差は の偏差と同じだ。よって
分子と分母の が約分され、相関係数は変わらない。
振り返り。 相関係数が割り算(共分散 ÷ 標準偏差の積)で定義されている理由が、この問題で腑に落ちる。共分散単体は単位に振り回される( 倍すれば 倍になる)が、同じ倍率が分母にも現れるように作られているから、 は単位の取り方によらない純粋な『関係の強さ』になる。気温を摂氏で測っても華氏で測っても『気温と売上の関係の強さ』は同じ。数式の性質と日常の直感が一致する好例だ。
発展 — 一歩先へ。 相関係数には、きれいな図形的な意味がある。 の偏差を並べたもの と、 の偏差を並べたもの を、それぞれ 本の「ベクトル」とみなす。すると相関係数は、この 本のベクトルのなす角 の余弦 にちょうど等しい。
この見方だと、性質がひと目で読める。余弦は必ず から の間だから、相関係数も に収まる。 は 本のベクトルの向きがそろう(または真逆になる)ときで、これは点が完全に 直線に並ぶ関係にあたる。
単位を取り替えても相関が変わらないことも、角度で見ると当たり前だ。ベクトルの長さを何倍に伸び縮みさせても、向き(なす角)は変わらない。共分散はベクトルの長さに引きずられるが、 は向きだけで決まるので、尺度の取り方によらない。
(1) (2) (変わらない)
別解
別解 — 偏差の表を作らず合計だけで出す(得意な人向けの時短ルート)。 偏差を つずつ書かなくても、 つの合計から相関係数は出せる。
必要なのは 、、、、 の つ。
これらから、平均を引いた「補正済みの和」を作る()。
よって
偏差の表を作る本解と同じ だが、生の値の合計だけで済むので、データが多いときや電卓計算のときに速い。この形なら (2) の不変性も、各合計が変換で規則的に動くことから同じように追える。
ポイント
- 偏差の表で をまとめて計算する
- 正の1次変換では相関係数は不変 — 分子・分母が同じ倍率になるため
- 相関係数の不変性は「単位に依存しない関係の強さの指標」であることの表れ
よくある間違い
- (2) を最初から計算し直し、性質を使えば不要な手間に時間を費やす。
- 「 倍したから相関が強まる」と考え、 を から動かしてしまう。
- 共分散の分母を標準偏差の積でなく分散の積 にして、 の値を誤る。