数学I / データの分析
指定した平均・標準偏差になる1次式変換
問題
変量 のデータの平均値は 、標準偏差は である。
(1) ()で定めた変量 の平均値が 、標準偏差が となるように、定数 の値を定めよ。
(2) このとき、 と の相関係数を求めよ。
ヒントを見る
(1)は変換公式に条件を入れて連立。解く順にコツ — 標準偏差の式には が出てこないので、先に が決まる。(2)は が の1次式=散布図が完全に直線 → 相関係数はいくつになるはず?
解答・解説
方針
『平均 ・標準偏差 のデータを、平均 ・標準偏差 に変換したい』。偏差値の設計と同じ問題だ。
(1)は変換公式 、 に条件を入れて 、 の連立方程式を作る。解く順序にコツがある。標準偏差の式には が現れないので、まず が単独で決まり、それを平均の式に入れて が決まる。
(2)は変換後の と元の の相関係数。 は の1次式なのだから、散布図の点は完全に1直線上。相関係数は になるはずで、それを共分散の計算で裏づける。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 平均 ・標準偏差 のデータを、平均 ・標準偏差 に作り変えたい。
変換公式を逆向きに使い、、 を未知数とする連立を立てる。
解く順番も設計しておく。標準偏差の式 には が出てこないので、先に が決まる。あとは平均の式に を入れれば が決まる。
偏差値の仕組みそのものだ。
(1) 変換 に対して
が成り立つ。条件を代入すると
未知数2つの連立だが、第2式には がいない。散らばりは平行移動 を感じないからだ。そこで第2式から先に解く。 なので 。第1式に代入して
(『まず倍率 で散らばりを合わせ、あとで をずらして平均を合わせる』。式の解き順が、そのまま変換の設計手順になっている。)
(2) なので、 と の共分散は
よって相関係数は
(数値で確認: 、 より 。)
振り返り。 という結果は偶然ではない。 が の1次式()で完全に決まるとき、散布図の点はすべて1つの右上がり直線に乗る。相関係数が になるのは、まさにこの完全な直線関係のときだけだ。逆に言えば、 が に近いとは『点がほぼ直線に乗っている』ことの数値表現だ。なお本問の変換は偏差値の一般化だ。標準化した値を 倍して を足すのが偏差値、、 という本問の条件はそれと同じ設計だ。
発展 — 一歩先へ。 なぜ 、 が過不足なく 組に決まったのか。動かせるつまみ(、)が つ、合わせたい条件(平均・標準偏差)も つ。数がそろっているから、行き先がちょうど一意に定まる。
見方を変えると、 の 次変換で自由にいじれるのは、データの「中心」(平均)と「尺度」(標準偏差)のちょうど つだけだ。それ以外の「形」、つまり値の相対的な散らばり方や分布の非対称性は、 次変換では変えられない。全体を一様に伸縮し平行移動するだけだからだ。
だから平均と標準偏差を狙って決めることはできても、形まで好きにはできない。たとえば右にすそを引いた非対称なデータを、 次変換で左右対称に直すことはできない。指定できるのは中心と尺度の つ、という自由度の勘定が、その裏にある。
(1) 、 (2)
別解
別解 — 標準化変数を経由して一気に組む(得意な人向けの視点)。 連立を立てるかわりに、目標の姿から を直接組み立てる。
まず を標準化する。 は平均 ・標準偏差 。
求める は平均 ・標準偏差 にしたい。標準化した を 倍して を足せば、平均 ・標準偏差 になる。つまり
比べて 、。連立を解かずに一発で出た。
しかも (2) の相関係数もこれで見える。 は、( の正の 次式)の増加する 次式だから、 と は完全に連動する。散布図の点は 本の右上がり直線に乗り、相関係数は 。本解と同じ結果だ。
ポイント
- 指定の平均・標準偏差への変換は、まず標準偏差の式で 、次に平均の式で を決める
- ()なら 、 なら — 完全な直線関係
- この変換は模擬試験の「得点調整」などで実際に使われている
よくある間違い
- 標準偏差の式に まで入れて とし、散らばりに が無関係なことを見落とす。
- (2) を計算せずに「」などと推測し、相関係数が必ず 以上 以下という枠と矛盾する答えを出す。
- でも同じと思い込み、右下がり()になる可能性を検討しないまま進む。