数学I / データの分析
データの追加による分散の変化と最小化
問題
9個のデータの平均値は 、分散は である。ここに1個のデータ を追加して10個のデータにする。
(1) のとき、追加後の平均値と分散を求めよ。
(2) 追加後の分散が最小となる の値と、そのときの分散を求めよ。
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『どんな を足すと分散が最小?』— 正体は2次関数の最小問題。追加後の分散を の式で書けば、あとは平方完成。答えの は、実は元のあの値と一致する — 直感的にも納得できるはず。
解答・解説
方針
『どんな値 を追加すると分散が最小になるか』。分散の問題でありながら、正体は2次関数の最小値問題だ。
準備として、追加前の『総和』()と『2乗の総和』()を復元しておく。(1)は での素直な計算。(2)は追加後の分散を の式で書くと2次関数になるので、平方完成に持ちこむ。
答えは『平均と同じ値を追加したとき最小』。直感的にもきれいな結論が待っている。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 追加する値 を動かして、分散を最小にしたい。
分散を の式で書いてみる。すると正体は の 次関数の最小値問題だと分かる。
準備として、元データを総和と 乗の総和に還元しておく。個々の値は知らなくても、この つがあれば追加後の平均も分散も書ける。
「統計量を の関数とみる」。この視点の切り替えが発想の核だ。
追加前のデータについて、総和は 、また より2乗の総和は だ。個々のデータは知らなくても、この2つの合計さえあれば追加後の平均も分散も書ける。これがこの問題の土台だ。
(1) を追加すると、総和は 、人数は なので
(平均と同じ値を加えたので、平均は変わらない。)2乗の総和は なので
分散は から に減った。散らばりゼロの値(平均ちょうど)が1つ加わって、全体の散らばりが薄まったのだ。
(2) データ を追加したときの分散を とすると、(1)と同じ枠組みで
これは の2次関数だ。ここからはデータの分析ではなく2次関数の土俵で戦う。通分して整理すると
分子を平方完成すると
よって
なので、 は のとき最小値 をとる。
結論。 (もとの平均値と同じ値)のとき、分散は最小値 になる。
振り返り。 最小値を与える が、もとの平均値そのものであることに注目してほしい。平均と同じ値の追加は散らばりに何も足さないから、分散は に薄まるだけ。そして平均から離れるほど に比例して分散がふくらむ。統計量を変数の関数と見て最適化する、という発想は数学Bの統計でも再登場する。分散・2次関数・平方完成が一本につながる、単元横断の良問だ。
発展 — 一歩先へ。 この の開き具合(放物線のとがり)は、データの個数と結びついている。 個に 個を足すとき、 の の係数は になる。今回は なので だ。
この係数は が大きいほど に近づく。だから追加する 点を平均から同じだけ動かしても、大きなデータほど分散は動きにくい。 個の値がもつてこの力は、およそ の速さで薄まっていく。
平均への効き方も同じで、 個の追加は平均を しかずらさない。「たくさん集めるほど、 個の追加や小さな誤りが統計量をほとんど動かさなくなる」という、大きな標本が安定する仕組みが、この放物線のとがりに表れている。
(1) 平均値 、分散 (2) のとき最小値
別解
別解 — 平均からのずれ で見て平方完成を避ける(得意な人向けの視点)。 追加する値を とおく。 は「元の平均からのずれ」だ。
分散は「ある基準からの 乗和 ÷ 個数」で計算できる。基準を元の平均 にとると、 乗和が楽に書ける。
元の 個は、 を基準にした 乗和が「分散 × 個数」。追加した の分は 。合わせて、基準 まわりの 乗和は 。
分散は本当は「新しい平均」まわりで測る。新しい平均は で、基準 から ずれている。基準をずらすと 乗和は(個数)×(ずれ) だけ小さくなるから
これを個数 で割って
より 、すなわち で最小値 。展開して平方完成する本解と同じ答えだが、平均からのずれ で見ると「平均を足すと散らばりは増えない」が計算に直接現れる。
ポイント
- 「平均・分散が与えられたデータへの追加」は、総和と2乗の総和を復元してから扱う
- 追加後の分散は追加する値 の2次関数になる — 平方完成で最小化できる
- 平均と同じ値を追加すると分散は 倍に縮む(散らばり自体は増えないため)
よくある間違い
- (1) で分散が のまま変わらないと考える(分母が に増える効果を見落とす)。
- (2) の展開で の中央の項 を落とし、頂点の を取り違える。
- を最小化しようと の値を手当たりしだいに代入し、 次関数と気づかず遠回りする。